後日談
弘恵未亡人が自殺してから二日後、雪が止んで私達は無事に下山する事ができた。
ちなみに、粉雪城は「こんな所、残すべきじゃないわぁ」という円佳の意見によって燃やされ、跡形もなく消えた。
その後、警察によって事件についての長い長い事情聴取がなされたが、私達は誰一人として口を割らなかった。
本当に、萌や佐和子、輝実が残っていなくて良かった。もし彼女らならペラペラ喋ってしまっていただろうと思うと、ゾッとする。
築城弘恵については、私、菜歩、みずき、円佳、千博の全員の総意によって、殺人鬼への恐怖により気が狂った故の自殺という話で片付け、警察は誰も疑う事はなかった。
そうして事件は結局表向きは未解決とされ、そのうち忘れ去られる事となる。
――私達以外には。
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――三年後。
十八歳となった私こと堀礼沙は、現在高校三年生。有名大学進学へ向けて頑張っている。
将来の夢は警察官になる事だ。
廣田菜歩も同じく成長し、今は探偵を目指して勉強中らしい。
私も彼女も、あの事件がきっかけで大きく変わったと言って良いだろう。
私達はそれぞれ、あんな事件を二度と起こしたくないという思いから、今の進路に決めた。
あの日々はそれ程に、私達二人の心に深く残っているのだ。
築城円佳はよりスキーに励むようになり、なんと今では十八歳にして立派なスキーのスポーツ選手として活躍、これまでに三つのメダルを手にしている。
築城千博は円佳の母親代わりとなり、あの事件の悲しみを胸に秘めながらも、娘と幸せに暮らしているという。
そして磯道みずきは下女を続け、今も築城家で働いているとの事だ。
――十二月三十日、とある墓場にて。
私達は久し振りにみんなで集まり、墓参りをしていた。
あれから毎年、築城親娘とみずきは墓参りをしていたらしいが、私と菜歩は何かと忙しく来る事ができていなかったのだ。
「まぁ。礼沙ぁ、菜歩ぉ、久し振りねぇ」
美人に成長した円佳が、華麗に微笑んで手を振って来た。
「うん、ほんと久し振りだよねー」
「円佳、元気だったみたいで本当に良かったわ」
「あたくしめも忘れないでくださいよー。せっかくの再会なのに寂しいじゃないですかぁ」
「みずきさんは相変わらず馬鹿なのね」
そんな風にひとしきり再会を喜び合うと、私達はそれぞれ、横並びにされた事件の犠牲者達の墓と向き合う。
私は萌の墓に。菜歩は輝実の墓に。円佳は佐和子の墓に。千博は姉の弘恵の墓に。
私は萌の墓を見つめながら、あの事件を思い返す。
「本当に、色々な事があったわ……」
なんだか不意に涙が目に溜まり、情けないなと思いながら、私は静かにそれを拭った。
――これは悲し涙ではない。懐かしさから来るものだ。
被害者達に同情はしない。同情はしないが、彼女らの犠牲を糧にして、私はこの先を生きて行くのだ。
そう心に誓いながら、私は墓石に水を掛けた。
「墓参りが終わった事だし、どっか食べに行こうよ! 菜歩、話したい事色々あるんだ」
「良いですねー。あたくしめ、腹ぺこですよぅ」
「そうだ、ピザでも食べに行こうかね」
「賛成だわぁ。礼沙ぁ、行きましょぉ?」
みんなが呼んでる。行かなくちゃ。
私は墓から離れ、彼女達の元へ歩き出す。
最後にチラと墓を振り返り、微笑んだのは、周囲はおろか、私すら気付かない事であった。
(完)
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