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冒険活劇崖海賊団


541!いいか!旅をするには準備がいる。まずは金が必要だ。しかし残念な事に俺もお前も僅かな金しか持っていない誠に残念な事だ。しかしこれを元手に大金を生み出す事が出来る。


はぁ。


それはギャンブルだ!いいかお前と俺の金を出して勝負する事にする。パチンコなら最高で20万位に跳ね上がる!こんなちっぽけでしけた金をどうこうするよりパチンコで勝負だ!

酒の抜けた崖さんはなんだか生き生きしていて楽しかった。少し呆れていたが鼻息荒い崖さんはどこか嫌いになれず着いていこうと思った。


相も変わらずくしゃくしゃの紙幣しか持っていない崖さんと俺は意気揚々とパチンコ店へと入っていた。


2時間も経たずに俺と崖さんはさっきまでいた海辺にいた。俺たちの手元に紙のお金が無くなってしまった。


崖さんはぼーっとしながら話しかけてきた。

肉まんはさー、なんで空って青く見えるんだろうね。別にどんな色に見えててもいいと思うのに地球だって海だって空だってみーんな青い。不思議なもんだよねー。

変に哲学的な事を語り出す崖さんに対してどう答えていいか分からずに黙っていようと思った。

海風がとても気持ち良く雲一つもない晴天だったが強い陽射しという訳でもなかったので俺も崖さんも瞼が重くなっていった。

どれ程眠ってしまったのだろうか。

さっきまでの青空は消え曇天へと変わってしまっていた。俺の横で崖さんは寝息をたてて今だに寝ている。

起きていたって何もやる事も無いし金も無い。

崖さんの寝息の横でただ流れる雲を何かの動物や建物に例えたら何に見えるかなと無の感情で考えていた。


ねー!崖じゃない?ねー!ねーってば!


どうやらまた寝てしまっていたらしい。

誰かの崖さんを呼ぶ声で目が覚めた。

隣の崖さんも何度も呼び掛けられていたので目を覚ましていた。


私よ!私!覚えてない?久しぶりじゃない?ねー忘れちゃったの?


崖さんは暫く頭を悩ませた後、あー!お前高校の時のわらちゃか!


そそ!!久しぶりに帰ってきたのよ!そしたら偶然、崖がいたから私嬉しくなっちゃって声かけたの!

折角だからうちでお茶でもする?なんか雨降ってきそうじゃない?


崖さんは仕方ねぇなぁとか言ってはいたが内心ホッとしていたと思う。持ち金は小銭と埃だけしか持っていなかったので渡りに舟だった。

白の帽子に黄色のワンピースを着ている彼女は細身でハキハキした女性だった。

明るい彼女の話に耳を傾けてるだけで元気を貰えていた。


崖さんはわらちゃさんに対して俺はお前に興味無いからとか言っていたけど満更でもなさそうで照れ隠ししているように見えた。

当たり前のように俺達はわらちゃさんの家に遊びに行く事にした。

女性1人が住むにはとても大きな家だった。

立派な門構えから始まり、茶の間には学校の校長室の様に歴代のご先祖様と天皇御一家の写真が飾ってあり仏間の仏壇も立派に鎮座しており、沈香の香りが漂っていた。


私、昨日東京から帰ってきてやっと掃除がひと段落した所なんだ。両親が亡くなって暫く経つんだけど漸く心の整理もついてやっと綺麗に出来たのよ。

こうやって断捨離出来るまで何年かかったことやら。

わらちゃさんは遠くを見つめながらも俺たちに向かって微笑んでいた。


その後、わらちゃさんのお父さんの軽トラにわらちゃさんの運転で崖さんは助手席で俺は荷台に揺られながらスーパーへと向かった。

わらちゃさんのお父さんはさだまさしが好きだったようでデッキに入れっぱなしのカセットテープから償いが流れ急に涙ぐむ崖さんを心配したわらちゃさんが声を掛けると


俺、さだまさし大好きで歌詞も好きだから曲聞くと心打たれるんだよねと言いまた黙って涙を拭いていた。


スーパーに着いたと同時に俺は大変な事に気づいた。というか忘れていた。


俺達金が無かった。


呑気に乗せてきて貰ったわいいが海辺の昼寝のせいでいっさいがっさい忘れてしまっていた。車を降りすぐさま俺は詫びを入れた。

わらちゃさんごめんなさい。実は俺達無一文でお金持っていなくて・・・。


そんなの誘う前から知ってたよ。だってね、崖はいっつも学校サボった日や放課後にはあの海岸に居たからね。大人になってもあそこであの格好でいるなんてお察し下さいなんて言ってるもんじゃん。

わらちゃさんの弾けるような笑顔が心が救われた。


その夜わらちゃさんが奮発してスーパーで買ったお惣菜が茶の間のコタツに所狭しと置かれお祝いとばかりにちらし寿司に煮付け唐揚げにたこ焼きにアメリカンドックまである。

小学生の頃に親戚まで来た運動会のようだ。

なんだか大家族時代の癖でいっぱい買っちゃったけど遠慮しないで食べてね。


わらちゃさんの有難い言葉に俺と崖さんはたらふく腹がはち切れそうになる迄飯を食らわせて貰った。

今日一日でビールも飲んで知人が増えて、おまけに腹いっぱいの食事まで出来た。

こんな幸福な日が来ると思っていなかったので身体の隅から震えが止まらず嬉しくて泣いた。

人の繋がりがとても温かく感じた夜だった。


翌朝窓から差し込む陽の光で目が覚め、あたりを見渡すと自分の布団だけで2人は既に起きているようだった。


おはようございますとわらちゃさんに挨拶すると、おはよう!よく眠れた?折角だからご先祖様にも挨拶していってと言われ線香2本渡された。俺はそれに火をつけ、おりんを鳴らしてご先祖様に昨日の感謝とお邪魔してますと心の中で呟いた。


茶の間へ行くと焼魚と香の物、納豆に日本茶をバランス良く啄みながら崖さんが勢いよく食事していた。崖さんは俺の姿を見るなり日本茶を勢いよく飲み口の中の物を一気に飲み込み、軽く咳払いをし気持ちを整えたのかと思ったら、えっと昨日色々ありまして崖とわらちゃは付き合う事になりました。


俺の頭の中はパニックになった。

え?どういう事?昨日会ったのにもう?え?え?え?


その後の話によるとどうやら2人は高校生の頃それぞれ別々に付き合っていた方は居たらしいのだが、お互いに気が合うことがなんとなく有ると感じていたがそのまま卒業する運びとなってしまったようだ。なんかよく分からないけど楽しいからいっか。


わらちゃさんだけが東京でキャリアを積みリターン族で蓄えを持っており、俺と崖さんは昨日の件があったのだ引き続き無一文継続中だ。

わらちゃさんのご厚意で俺も職が見つかるまでは一緒に暮らしていいと言われこれから頑張ろうと思ったのだった。

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