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第六話 帰還 ギルドへ報告

 俺を先頭にダンジョンを出た。


 警戒はしていた。だけど、外には誰の気配もなかった。


「……」


 俺はホッと息を吐き、柄にかけた手を離す。


 思わず自分に問いかける。……俺は安堵しているのか? まさか。


「……」


――ああ、そうだ。クハルナーたちには悪いけど、俺にとってはルトヴィヒたちがいない方がありがたかった。


 今度顔を合わしてしまえば、ただではすまない。きっと凄惨なやり取りが待っている。あんな仕打ちを受けた直後とはいえ、俺はあいつらを殺したくはなかった。でも、あいつらはそうじゃないだろう。今度こそ、直接刃を向けてくるはず。口封じのために――。


 俺もただでやられるつもりはなかった。それにクハルナーたちのことも守らなくては。彼女たちが生きていると知れば、当然よくは思わない――。


「なんだ……いない、のか?」


 遅れてクハルナーら四人も洞窟の外に出てくる。


 近くに倒れる二人にもすぐに気づいた。彼女たちのパーティーのサポート要員。クハルナーたち四人は遺体のそばに屈み、顔を伏せた。


「……これも、あいつらがやったの? あいつらの仕業?」


「……その、俺にはわからない。ルトヴィヒたちはモンスターの仕業だろうと言ってたけど、もちろん信用できるかどうかは――」


「……これは剣による傷。モンスターの爪じゃない」


 狩人職である少女が遺体を見て言った。


「なにより、この場に残る足跡。二人を襲ったのは、人間。一人……足跡から察するに、とても大きいひと」


「……痕跡を消そうともしなかったっていうの?」と、イーザシャ。


「最初からみんな始末するつもりだった。きっと、そう」


「……」


 俺は黙って聞いていた。


 そうだ、ルトヴィヒと新入りの会話――あれを聞いたときから、よくない予感がしていたんだ。

……でも、だからってどうすればよかった? まさか、ここまでの事態になるなんて。あいつらがあそこまでの外道だったなんて、俺は知らなかった……。


「ユッテたちは? まだダンジョンの中なの?」


「ああ、まだ中に……」


「なら、連れてきてあげなきゃ……」


「俺が行くよ」


 俺は立候補し、ふたたびダンジョンの入口の方へ向かう。


「ヨハンくん! いや、そこまでお願いするわけには……」


「なら、一人手伝ってくれると助かる。二人で行けば二回の往復で済むからな」


「……ラウレオが行く」


 狩人の少女が手を上げてくれた。


「ありがとう。助かるよ。――ええと?」


「名前。ラウレオ」


「ありがとう、ラウレオ。――クハルナーは彼女たちを見ててくれ。二人はまだ魔法を使えないからな」


「ヨハンくん。ありがとう……」


「……」


 俺は黙って手を振り、ラウレオと中へ戻った。





 約一時間かけて俺たちは四人の遺体を運び出した。


「町へはどうやって運ぶ? ここで埋葬する案もあるけれど、できればちゃんとした墓地に……」


「そうだな。馬も殺されてしまったし……」


「ヨハンさんの馬は?」


「もちろん残ってないだろうな」


「悪霊よけの結界を張っておくよ。あとで馬車で引き返してくれば?」


 僧侶のダクマリーが提案した。


「できるのか?」


「うん。少しは魔力も戻ってきたから」


「そういえばダンジョンの宝は? ヨハンさんがボスを倒してくれたわけだけど」


「それもあとでいいだろう」


「……それもそうね」


 イーザシャがうなずく。ほかのみんなも同じ気持ちだったようだ。欲しくないわけじゃないけれど、いまはそういう気分じゃない、と。


 太陽が山間に沈もうとする頃、俺たちは近くの町に戻ってきた。


 クハルナーたちの顔を見て驚いた一人の男が駆け寄ってくる。


「クハルナー! 生きていたのか、おまえ!」


「ギル! ……どういうことだ? 生きてたのかって」


「あ、いや……そういう話を冒険者ギルドで聞いたんだ。本当なのか確かめたかったけど、詳しい話はまだ教えてもらえなくて……。だから、とにかく心配してたんだよ!」


「わるかった。でも、ボクたちなら、ほら――大丈夫」


「でも、ユッテたちはどうした?」


「……」


「そうか……わりぃ。話の半分は本当だったのか……」


「……」


「どうする? もう日が暮れるぞ」


 ちょっと気が引けたけど、俺は二人のあいだに割って入った。


 クハルナーは黙ってうなずく。


「ユッテたちを連れてくるのは明日にしよ? 結界は充分持つから」と、ダクマリー。


「そうだな。まずは……」


「ああ」


「冒険者ギルドへ行こう」





「驚いたな……。どういうことだ? きみたちのパーティーは全滅したと報告を受けたが……」


 目を大きく見開いたギルド職員の男が俺たちを迎えた。


 その場に居合わせた冒険者たちも同じような顔だった。テーブルについているときはひとときもジョッキを手放さないような連中の手が、いまこのときだけは止まっていた。


「その報告は誰から?」


「『宵闇の牙』のパーティーのルトヴィヒからだ。……ああ、ヨハン。きみは彼の仲間じゃないか。きみは話を聞いていないのか? それと、きみがなぜクハルナーたちと?」


「ちょっと……事情があってね」


「……?」


「ルトヴィヒはなにを以てボクたちの全滅を?」


「……これを持ってきた。ユッテとヨゼフィー、あとコジマとユリアンネ。四人分の冒険者タグを」


「……」


「きみたちは落盤に潰されて、きみたちの分は残念ながら回収できなかったと……」


「落盤、ね……」


 クハルナーは唇を噛みしめる。


「一体なにがあったんだ? きみたちの口からも報告を――」


「すまないけど、明日にしてくれないか? あと、ルトヴィヒたちはどこに?」


「宿に戻ったんじゃないか? 今夜は酒場にも寄らないと言っていたぞ。パーティーメンバーじゃないが、同業者を目の前で失ったから……今夜は喪に服すと」


「……」


 クハルナーたちと顔を見合わせる。


 俺はみんなにうなずいてみせた――。


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