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第十話 調査員負傷 刺客の襲撃

「……あっちだ!」


 クハルナーたちはすぐさま矢の飛んできた方へ駆け出そうとする。


「待て! うかつに動くな!」


 それを俺は大声で止めた。


「彼女の治療が先だ! ダクマリー、回復魔法を頼む!」


「う、うん、わかった!」


 落馬した彼女をザールが抱き起こしていた。そこへダクマリーも近寄り、魔法を発動させる。


 ジョジョゼは体のほぼ半分が吹っ飛んでいた。普通ならまず助からない。


「おい! 彼女は――ジョジョゼは助かるのか!?」


 さすがのザールもさきほどとは違い、声に焦りが混じっていた。


 それにダクマリーは力強くうなずいてみせる。


「もちろん。絶対に死なせない……」


 そうだ――僧侶の使う回復魔法なら、ここからでも助けることが可能だ。


「でも、時間がかかる……だから、そのあいだ……」


「ああ……」


 ダクマリーの言いたいことはわかった。


 怪我人は動かせない。だから、僧侶がつきっきりで魔法をかけ続けなくてはいけない。


 その時間をきっと襲撃者は見逃してはくれないだろう。


「……ジョジョゼ――彼女は荷物の中に爆薬を?」


「そんなわけないだろう。中身をすり替えられたんだ」


 ザールが忌々しげに応える。


「やっぱりそうか。……襲撃者に心当たりは?」


「ない。……そっちこそ、どうなんだ?」


「……」


「調査中に襲撃に遭うのは初めてじゃない。これまでにも何度か経験はしている。……ここまで本気で殺りにきたのは初めてだけどな。……どれも理由ははっきりしている。そのときの調査が原因だ。だから、今回は……」


「……ルトヴィヒの差し金か」


「戻って奴の顔面に一発食らわせたいところだが、さて……無事に戻れるかどうか」


「……そうだな」


 俺は周りを警戒した。


 続けて仕掛けてくるような気配はなかった。


……力づくでこないということは、相手は少数か? こちらを誘って、戦力の分断を狙っている?


「――で、どうするんだ?」クハルナーが背を低くして近づいてきた。「いまは静かだけど、当然これで終わりじゃないだろう? だからといって、矢を撃ってきた奴も無視はできない……」


 クハルナーの言うとおりだ。誰かが追う必要はあった。


「追跡は、ラウレオしか、できない。ラウレオが行く。一人で、大丈夫」


 と、狩人のラウレオが志願した。


……声は小さいが、力のこもった眼差しで。


「一人でなんか行かせるか! ボクも行く!」


「いいや、待て――」俺は熱くなる二人に割って入った。「ここでの勝利条件はジョジョゼを無事に連れて帰ることだ。そのためには、向こうの射手を素早く片付ける必要がある――速攻で、秒殺でだ」


「……」


「俺が行こう。ラウレオは案内を頼む」


「……!」


「……おまえが一人で? 自信はあるのか?」


 ザールが眉をひそめた。


……まあ、仕方ない。はたから見て俺を強そうな奴だなんて感想は出ないだろう。俺だって鏡を見てそう思う。


「ほかのみんなは待っててくれ。すぐに戻ってくる」


「ああ、わかった。気をつけて」


「警戒を怠るなよ。またこっちにも攻めてこないとも限らない」


「……」


 クハルナーは黙ってうなずいた。


 俺とラウレオは仲間から離れ、二人で森の奥へ進む。


 先導はラウレオに任せた。彼女は迷いのない足取りで進んでいく。


――いつ見ても狩人というものは凄まじい。彼らは驚異的な観察力で、地面に残った痕跡を決して見逃さない。


「……とまって」


「……!」


 途中、ラウレオが俺を手で制した。


「……どうした?」


「……この先に罠が張ってある……地形的にも、待ち伏せにぴったり」


「……相手はそこで待ってるということか」


「……行くの?」


「行かなきゃ終わらないだろ? きみはここで待っていろ」


「ラウレオも……」


「――ッ!」


 言いかけたラウレオへ矢が飛んでくる。


 俺はそれを素手で掴んだ。


「……」


 遅れて彼女が目を丸くする。


「あ、ありが、とう……」


「気にするな」俺は矢をへし折り、放り捨てた。「それより、俺たちはすでに罠の中に飛び込んでしまったらしいな」


「ハハハハッ!」


 どこからか男の高笑いが響いてきた。


「よく反応したな! まったく予想外の場所、予想外のタイミングだったのにもかかわらず!」


「……」


 俺は耳を澄ませた。


――声が木々に反響して位置を把握しにくい。それに、最初矢を射った場所からはすぐに移動したはずだ。


「昨日の深夜からせっせと罠を仕掛けた甲斐があったな! 偽装に何時間費やしたことか! さすがの同業者にも見抜けったようだな! そうだ――ここはすでに俺の巣の中というわけだ!」


「……」


 自信満々に語る男の声。


 ラウレオも俺も周囲に目を凝らす。だけど、まだ男の姿は見えない。


「本当はもう一人くらい釣りたかったところだが、まあ仕方ない。おまえたち二人をさっさと片付けて、向こうに取り掛かるとしよう――」


「……ッ!」


 どこかで縄の切れる音。


 それから、


「ハゥ、ハゥ、ハゥ……」


 犬の息遣いが聞こえた。それも複数――。


 茂みの中から犬が飛び出してくる。……三匹!


 鍛え抜かれた四肢と、獰猛な面構え――猟犬だった。


 身構えるラウレオをよそに、俺は逆に飛び出した。


「……!」


 俺は三匹に向かって剣を振る。


「――」


 猟犬たちの動きがピタリと止まった。


 三匹は音もなく崩れ落ちる。


 振り返ると、またしてもラウレオが目を丸くして俺を見ていた。


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