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エピローグ~刻む時計~

  エピローグ


「それで、一体全体どうしてこうなっちゃってるかなぁ?」


 狭い都心に無遠慮に広がるエリスの家、美味しそうに山盛りのチョコバーを頬張るエリスの横、後ろからベルゼットに撫でまわされているクラリーチェが不満げに呟く。


「そこはベルゼットさんも不思議ではあるのでございますが、どうにもくーちゃんを撫でくり可愛がりたくて堪らないのでございますよ」


 言うと、ベルゼットは後ろからクラリーチェを捕まえて、更に思う存分にクラリーチェの頭を撫でる。


「んもう、再構築される時に変なもの混ざっちゃったの?」

「そ、そ、そ、そんなことはないでございますよ!? 正真正銘ベルゼットさんはベルゼットさんでございますから! ちゃんと皆に記憶の一致も確認してあるでございます!」


 動揺したベルゼットはクラリーチェを捕まえる腕に一層の力を入れていう。

 しかし、撫でるその手は緩めない。


「ベルゼット力を緩めてやれ、流石にそれは苦しそうだ」


 クラリーチェの大ぶりな胸を後ろからぎゅむと押し上げるベルゼットを、胸から僅かに視線を逸らして彼方が制止する。


「おっと失礼でございます。……そういえば不思議なことが一つあるんでございますよ。ベルゼットが元々悪かった体の箇所でございますが、全部移植のように再構築されているらしいのでございます」

「君の体はあくまで君の体だからね。ファントムのようなウィッチでも、君の体をアレンジして再構築とはいかなかったんじゃないかな」

「それが余計に不思議なのでございます。その場合、ベルゼットが治してもらった箇所はファントムの体を複製移植したもの。だとしたらファントムはベルゼットと深い縁のある人物になるのでございます」


 ベルゼットは小首を傾げながら彼方の表情を窺うと、


「七荻彼方。あの自信満々っぷりからすると、お前はファントムの正体がロウフェラーの者だったと知っていたのではないでございますか?」


 確かめる様にそう言葉を続けた。


「さて、ファントムはどう言っていたかな」


 彼方ははぐらかすようにそう言うと、万能端末でニュースサイトを開く。トップ記事では遥とソフィアががっちりと握手をしていた。

 今回の件は魔女議会と魔法騎士団の協力により解決、引き起こしたウィッチの少女は魔女議会の保護下に置かれ、魔女議会と魔法騎士団は互いに密な連携を約束した。そんな筋書きで事件は幕引きとされている。

 そんな風に事を収められたのも彼女達が一線を越える前に食い止めることができたからだろう。


「安くて雑なはぐらかしにも限度があるでございましょう!? お前の記憶力がアメーバ並みでないことぐらい、ベルゼットさんは知っているでございますからねっ!」

「ベルゼット。ファントムが何も言わなかったと言うことは、そこはきっとそっとしておくべき場所なのだと思うわ」


 山盛りのチョコバーを食べ続けているエリスが言う。

 ソフィアお気に入りのチョコバーをあれだけ貰っている様子から察するに、彼女とソフィアの関係もそれなりに修復されたのだろう。


「エリス様……。でも、ベルゼットはファントムにお礼の一言も言えていないのでございます。それは助けて貰っておいて実に不義理でございましょう? それが並行世界のロウフェラーなら尚更でございますよ」


 拗ねるように言うベルゼット、この辺りの義理堅さはクラリーチェと似ているんだなと彼方は思う。


「なら、それを別の誰かに渡してあげたらどうかな。ファントムも……きっとそれでいいと考えていると思うよ」

「くーちゃん……」


 ベルゼットはクラリーチェの顔をまじまじと見つめた後、捕まえていたクラリーチェを解放して懐中時計を見つめた。


「そうでございますね。今度こそ、この懐中時計に相応しい振る舞いをしないといけないでございますから」


 と、現在時刻を確認してベルゼットの動きが止まる。


「ま、ま、ま、マズいでございます! ゆっくりし過ぎたでございますよ! ベルゼットにはこの後重要な用事があるのでございますがっ!?」

「会議でもあるの?」

「ボランティアをするのでございますよ。皆に迷惑を掛けてしまったでございますから、その罪滅ぼしでございますね」

「あはは、それは確かにねぇ」

「それに……ベルゼットさんは諦めていた"もしも"から手を差し伸べて貰ったのでございます。その分、何処かの誰かに手を差し伸べてあげたいのでございますよ」


 言って、ベルゼットが笑う。


「だから……あれやこれやはまた今度、でございますよっ!」


 ベルゼットは再び表情を落ち着きのないものに戻すと、一目散に駆け去って行く。


「全く、忙しない性格だねぇ。せっかく明日に続く時間ができたんだから、それをゆっくりと味わうのも贅沢思うんだけど。ねえ、ベルゼット」


 クラリーチェは優しげに微笑んでそう言うと、自らの懐中時計を取り出してテーブルの上に置く。

 穏やかな午後の日差しがゆったりと差し込む中、時計の針は静かに時を刻んでいた。


これで信仰時計完結となります。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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