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【完結】贄の聖女  作者: 黄昏睡(たそがれ すい)
8/11

聖女の儀、当日 side 村人

聖女様。

たまに俺たちの村にも来てくれた聖女様。

皆に優しく声をかけ病人を慰め年寄りを労わっていた、美しく清らかな女性。



その人が、今日堕ちた。




今日は二十年に一度の聖女の日。街の中心にある広場に、多くの人が集まっていた。

普段の祭りと違い、今日は特別な日だ。

今日はすべての人が仕事を休む。そして可能な限り、この広場に来る。

聖女の儀式を見る為に。


人々が見守る中、一人の女が儀式の壇上に上がった。みすぼらしく汚らしい女が。

最初、それが誰だか本当に分からなかった。あまりにも普段の姿と違いすぎて。

けれど、今日のこの日に儀式の壇上に上がる女性は、聖女様以外にない。

よく見れば、服装や髪の色は聖女様のもので、顔立ちにも面影があった。

しかしその顔に、いつもの慈しみに溢れた笑みは無かった。猜疑心と憎しみに満ちた眼差しで辺りを窺い、神官に触れられれば怯えて叫び身を震わせている。

まるで気の狂った物乞いのようなその姿。

それを見てハッとした。


そうだ、これが俺たちの穢れだ。

綺麗なことしか知らない顔の聖女様とは、無縁だったもの。

それが今、聖女様の身に降りていた。

胸のすくような感覚がした。



そうか。

聖女様が俺たちの穢れを引き受けてくれたから、今こんなにも晴れやかな気持ちなのか。



ならば、この穢れは始末しなければ。


穢れはどうせまた、俺たちの中に少しずつ溜まっていくだろう。


だがここにある穢れは、今ここで始末しなければ。


折角、聖女様がその身を捧げてくれたのだから。



「「殺せ!殺せ!」」



周囲から声が上がった。


ああ、皆、同じ気持ちなのか。



「「「「殺せ!!殺せ!!!」」」」



声はどんどん大きくなっていく。


そうだ。

こいつは、穢れは殺さなければいけない。


気づけば俺も、力の限り叫んでいた。



「殺せ!!!!奴を殺せ!!!!!」




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