表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】贄の聖女  作者: 黄昏睡(たそがれ すい)
5/11

聖女の儀、前日

気づくと、石造りの小さな部屋にいた。

窓は高い位置に明かり取り用の小さなものが、一つだけ。

薄暗い部屋のベッドの上に、私は横たわっていた。

じゃらりと音がした足元を見ると、足首に枷がつけられ鎖で繋がれていた。



……………………鎖?



意識が覚醒し、何が起きたかを思い出す。

一気に血の気が引いた。


捕まってしまった。





神殿の神官に、捕まってしまった。






呆然としていると、ガチャリと音がしてドアノブが回った。驚きに肩が震える。

逃げ出したいけれど、鎖は短くドアのところまでも届かない。

部屋の中に、いつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべた神官長が入ってきた。


「儀式を控えた身で逃げ出そうだなんて、いけない子ですね」


あまりにもいつも通りの口調だった。

幼い頃、小さな悪戯が見つかった時と同じ口調。


「し、神官長様……」


震える声で呼びかけた。


「あなたがいなければ、穢れが払えない。皆が困ってしまいますよ?」


しょうがない子だと、優しく窘められる。


「し、しかし私は儀式で命を落とすと…」


何かの間違いであって欲しい。


祈るような気持ちは、あっさりと裏切られた。


「ええ、そうですよ」


至極当然といった表情の神官長の頷きで。


「穢れは、消さなければなりませんから」





………穢れ?私が?




思いもよらない言葉。

疑問が伝わったのだろうか、説明が続けられた。


「これから行う儀式で、あなたに穢れを降ろします。そしてあなたは、穢れそのものとして明日の儀式で滅せられるのです」


初めて聞く内容だった。

直前まで知らされずにいた、儀式の詳細。




穢れを降ろす。


私が穢れそのものになる。




不吉な響きに身体が震え出す。


死ぬと言われたことは、当然恐ろしい。

でもそれよりも酷いことが、この身に起ころうとしているのではないだろうか。

ただ殺されるよりも、ずっと酷いことが。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ