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夜も更けた電車の中。


人もまばらな車内で 佐藤くんと並んで座っているのはいいんだけど。


「手を離してくれない?」


「いやですよ。僕の指名料高いっていったでしょう。恋人つなぎ 好きなんです。」


「ちょっと 。持ち上げないで!」


「誰も みてませんて。顔赤くしてかわいいなあ。」


私の好きな綺麗な顔が肩にもたれかかる。


「飲み会楽しかったですか。あいつら僕の悪口言ってたでしょう。」


仕事帰りの少しだけかすれた甘い声。


「気にしなくていいですよ。その人がいなくなったとたん悪口言い始めるのはよくあることですから。


特に 僕は嫌われてるし。」


骨ばった大きな手も私好みで。


「でも (カナデ)さんのことは たとえ いないところでも 誰も悪口言ったりしなかった。


そんな 誰にでも好かれるところも好きです。」


ああもうそんなこと言われたらほだされてしまうじゃない。


髪もいつの間にかほどかれてて。いろいろ気になるところはあるけれど。


佐藤くん以上に 私を好きになってくれる人は あらわれない気がする。


「ねえ 佐藤くん。」


「なんですか。奏さん。」


黒い笑みの佐藤くん あ 名前か。


(カケル)くん。 遅くなったけど、私と付き合って下さい。」


目を合わせそう言うと。彼は息をのんで、それからしあわせそうに笑った。


「…やった。じゃあ 明日は指輪買いに行きましょう。お揃いの。」


「え?」


「僕のものだという証をつけてください。ここに。一日中。」


左手の薬指に口づける。


「…仕事中は指輪は禁止で。」


「知ってますよ。結婚指輪ならいいってことも。」


絡めた指先を口元にあてたまま。まるで物語の王子のように。


「結婚して下さい。」


「ええっ。」


「ええって、ひどいな。僕と結婚するつもりはないってことですか。」


「そうじゃないけど、そんなこと、まだ。」


「考えたこともないですか。 僕とのことは 遊びですか。」


「そうじゃなくて。」


「言い訳はいいんで、とりあえず今から僕の家にいきましょう?」


「えええっ⁉︎」


視線の先には熱をおびた眼差しがあった。


「急に立とうとしないで。もっと 僕のそばにきてください。」


片手で頬をつつむ。


「まだ僕 奏さんの口から僕のこと好きだってきいてない。」


親指でくちびるに触れて。


「好きって言って。……もう一回。……もっと、もっともっと。」


傾けた顔が。吐息が近づく。


「…………お願い。今夜くらい独り占めさせて?」









Happy end…?








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