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やっと休みが取れて佐藤くんとデートの日。メッセージは毎日のようにやり取りしてるけれど緊張する。
私服姿の佐藤くん。サラサラの髪に 目を細めた笑顔が若手の俳優さんみたいで かっこいい。
「いつもよりも背が高いみたい。」
「店で履いてる靴よりも厚底のスニーカーですから。どこか行きたいところありますか。」
「家の鍵につけてるストラップ 新しいの見たいかな。」
「欲しいの決まりましたか?」
すうっとストラップを取り上げる佐藤くん。
「僕が お会計してきます。」
手慣れてる…。
「お待たせしました。はい…どうしました?」
「ううん。佐藤くんモテるでしょう?」
「まあ それなりに」
「 そういえば 前の店でも 短大生に告白されてたわね。」
「いつのネタですか。好きな人がいるからって、とっくに断りましたよ。」
今日は暖かいので オープンテラスでお茶することにする。
「…半年位前 鈴木さんと好みのタイプの話ししたこと覚えてますか?
その時 鈴木さんの好みも聞いて。
年上で 背が高くて タバコ吸わない人だっていわれて。
年はどうしようもないけど、タバコはやめたし、背だって今日みたいな靴履けば180㎝超えます。
僕 お買い得ですよ。」
「お買い得どころか佐藤くんはすごくかっこいいわ。逆になんで私なのかがわからない。」
「一目惚れです。」
「は」
「いや 笑顔惚れかな。」
佐藤くんはゆっくり席をたって、私の隣に移動してくる。
「いつも優しくてなんでも受け入れてくれるけど、鈴木さん実は他人に興味ないでしょう。」
「そんなことはないと思うけど。」
「SNSも全くしないし。」
「そうでもないわよ。個人情報に気をつけてるだけ。」
佐藤くんは苦く笑った。
「映画もライブもひとりで行ってましたね。」
え?
「実は何回かつけたことあります。気がついてくれないかなって期待して。 」
「普通に声かけてくれればいいのに。」
「そしたら デートしてくれました?」
「…多分。」
「 ははっ。嬉しいな。」
機嫌がよさそう。言っても大丈夫かしら。
「ところでそろそろ解散したいのだけれど。」
急に温度が下がった気がした。
「この流れでそれを言いますか。どこいくんですか。」
「…好きな小劇団の公演がこの近くで。」
「どうして僕を誘うという発想がでてこないんですか。」
頭をかき乱す。せっかく綺麗な髪なのに。
「無名だから 普通の人は面白くないかと思って。」
「一緒に行くに決まってるでしょう。やっと僕の夢がかなうんだから。」