17.暁の森の道中2
結論から言うと、播磨と古夜里の情熱は空回りだった。
「ん~。要するに~、すごいNPC~、ってことだよね~?」
「……もうそれで良いわ」
「……はにとーにとっては、今後聞く名前は全部それで良いぞ。……あんこも大変だろ」
「まさか! ここがはにーの良さですわ」
「……素直にすげえわ」
普段から対ガルで鍛えられている播磨を以てしても、はにとーには惨敗だった。
講義内容とともにダイジェストでお送りする。
○
『ロロックスフィア』の基本属性は六つ、火・風・土・水・光・闇である。
基本六属性の派生属性として氷や影などあれこれが存在する(なお、以下では派生属性については扱わない。数が多いのであまりに冗長なうえ、そも未解明な部分も多いため)。
六つの基本属性のうち、火・風・土・水の四属性を『四元属性』、光・闇の二属性を『二極属性』と呼ぶ。余談だが、この呼称はあくまでフレーバーの域を出ず、スキルの説明欄などのシステム上の文章には表記されない。
多くの装備・スキル・魔物は属性を持つ。しかし必ずしも何らかの属性を持つ訳ではなく、その場合は無属性として扱われる。
「お~。『しげん』って~、『四元属性』のこと~」
「さすがにここは大丈夫か……」
「まだ基本中の基本よ」
属性の力関係はおよそ以下の通り。
・火は風に勝ち、風は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝つ。
・光と闇は互いに勝つ。
弱点属性をつけばその威力や効果が上乗せされる。
重要なのは、上の力関係はあくまでおよそであること。
弱点となる属性や効果が上がる属性は、装備・スキル・魔物毎に定められている。そのため上の記述の例外はかなり多い。
例えば、はにとーへの講義の間にガルとサクラメンが戦っていた大風イタチは、風属性の魔物ではあるが火属性を弱点としない。弱点属性が無い魔物である。
同様に、火属性魔物だが水属性攻撃に耐性を持つとか、無属性装備だが火属性魔物に対し威力が上がるとか、そんな例はざらにある。
「え~? イタチは風だから~、燃やしたんじゃないの~?」
「ものに依るんだよ。俺が『地平線上の太陽』を使ったのは、あれが俺の最大範囲だったからだ。今回、属性は関係無え」
「……まあ、初心者には多い勘違いだものね。蜂蜜の人はヒーラーだし、まだ大丈夫……」
「…目を逸らすな。…はにとーは…上級だぞ」
ロロックスフィアには、各基本六属性魔法を極めた六人の魔女・魔法使いが存在したらしい。
『火の魔女』、『風の魔女』、『土の魔女』、『水の魔女』の四人をまとめて『四元の魔女』。
『光の魔法使い』、『闇の魔法使い』の二人をまとめて『二極の魔法使い』。
彼等の伝説は各地に残っており、ゲームをプレイしていれば自然と様々なところで目に耳に入ってくる。
曰く、たった一人で百万の魔物の軍勢を打ち破った。
曰く、とある大陸の全てのダンジョンを破壊した。
曰く、神によって地上へ降りた遣いである。
曰く、現在使われているあらゆる魔法の雛型を作った。
曰く、一万年以上前から存命で、最終戦争直後に人類存続の手助けをした。
曰く、一万年前にシイガスをばらまいて地表を滅ぼし、現在までそれを維持している。
等々。
彼等が人類ならば伝説の内容はほとんどが眉唾物だが、あまりにその名を目にする機会が多いため、プレイヤー・NPC問わずしばしば議論の的になっている。
実在したのか、あるいは現存するのか。
人類なのか、別存在なのか。
プレイヤーが遭遇した場合は如何なる役割を果たすのか――スキルや装備をくれるのか、それとも敵対するのか。
等々。
特に魔法系スキルの取得クエストでは繰り返し出てくる名前なので、総じて魔法系のプレイヤーは彼等への注目度が高い。中には『四元の魔女』や『二極の魔法使い』との邂逅をこのゲームの主目的に据えるプレイヤーもいる程である。
はにとーはバッファー兼ヒーラーであり、この枠に収まるはずなのだが。
「へ~。初耳~」
「ダウト」
「ダウトね」
「…ダウト」
「ダウトだネ」
「キュートですわね」
ここいらで播磨と古夜里の心が折れたのであった。然もありなん、ああもにこやかに「初耳」と断じられては返す言葉も無かった。
○
「はにーは興味の無いことは本当にさっぱりですから。どうかお気になさらず」
「……そうね。熱くなりすぎていたわ。所詮はフレーバーだもの。好きに楽しむべきよね」
「ああ。そもそも、はにとーにはあんこがいる訳だし、無理に勉強する必要も無かったな。……それにしても」
ちらと播磨が見遣った先には未だに交戦中のガル・サクラメンと大風イタチ。
はにとーへの講義にかまけて長らく放置していたが、それなりに時間が経った今でも状況に変化は無いようだった。
「アイツ等はいつまで遊んでんだ……『パラライズシュート』」
赤金の杖から紫電が飛ぶ。大した速度でもなかったが、吸い込まれるように大風イタチにヒットした。
ダメージこそ無いが、強力な麻痺状態を付与するスキルである。イタチは持ち前の素早さを半分も発揮できなくなった。
「あら、優しいのね。トドメを刺してしまえば良いのに」
「後々面倒くせえからな」
実質トドメのようなものではあるが。
この隙にサクラメンがラッシュを決めて、あっさりと戦闘は終了した。
○
先頭二人の機嫌も持ち直したし、他の面々は待っている間に十分休憩を取ったので、一行はすぐに中ボス部屋を出て探索を進めた。
あの中ボス以降も、フィールドには大きな変化は無い。依然、木々の隙間に覗く東の空だけが仄かに赤い、真っ暗な森が続くばかりだ。
一方、道中でエンカウントする魔物は数段手強くなっていた。
中ボス以前にも出没していた軍隊蜘蛛、手長熊、風イタチの三種は続投だ。しかし軍隊蜘蛛と風イタチの群れの規模がおよそ倍に巨大化している。
数が増えたことで、特に軍隊蜘蛛はより複雑な連携を取るようになった。数が倍になっただけで対応の難易度は三倍にも四倍にも跳ね上がる。
さらに、エンカウントする魔物の種類も、新たに二種増えた。
一種は、先程も戦った大風イタチ。
しかし中ボス部屋と違って、こちらは群れを作らず常に単体で襲撃してくる。大した障害ではない。
そしてもう一種。
はにとーが事前に『魔力探知』で一帯を調べた限りでは、今までの軍隊蜘蛛の襲撃の兆候と差は無かった。
例によって複数の奇襲役と思しき集団が確認されたので、ルナとあんころもちはそちらの殲滅に向かっている。
「アイツだ! 出やがったぞ!」
先頭を行くガルの警告に、場の緊張感がいくらか増す。当然だ、甘々党の合流以降好調だった攻略が、その魔物によって再び暗礁に乗り上げかけているのだから。
件の魔物の姿はすぐに後衛達の目にも入ってきた。十数匹の蜘蛛の群れと、その最後尾に佇む異形が。
その姿は、一言で言ってしまえば『アラクネ』。数多の創作でよく見かける蜘蛛女だった。
下半身に相応する部分は丸々蜘蛛一匹だ。八本の足は勿論、頭胸部も腹部も、蜘蛛として足りないパーツは無い。サイズは他の軍隊蜘蛛よりも一回り大きい。
その頭胸部から人間の上半身が生えており、その人型部分の顔面にはヒトの鼻と口と、そして八つの真っ黒な単眼が並ぶ。
しかし、先述の通り下半身は蜘蛛として不足無い。すなわち蜘蛛部分にも有毒の上顎と八つの単眼がしっかりくっついている。つまりこの魔物は十六の眼と二つの口を持っていることになる。
さながら、蜘蛛とヒトのパーツを何人(匹)分か錬金釜に放り込んでかき混ぜて作ったかのようだった。とても蜘蛛が人型に進化した果ての姿には見えない。
少なくとも『暁の森』の探索パーティは誰一人として、見たことも聞いたこともなかった魔物だった。
「作戦通りに行くぞ。『スプレッドファイア』!」
播磨は前衛が少し移動して前方に空間を空けたのを確認してから、中ボス戦後も持ち替えなかった赤金の杖を振るった。放たれたのは炎の津波。燃えない木々の幹を回り込んで、炎が地面を撫で広がっていく。
アラクネをはじめ蜘蛛のおよそ半数は糸と木々を利用して立体的に回避したが、残りの半数は炎に巻かれて大ダメージを負った。威力よりも範囲に長けるスキルだが、事前に受けていたはにとーのバフと杖の効果によって威力も大幅に強化されている。それでも一撃では倒し切れなかったようだ。
「ちっ死なねえか、もう一回!」
自信も前進しながら立て続けに同様のスキルを発動し、二度目の放火で蜘蛛の三分の一を葬った。
残った蜘蛛達は、炎を回避しながらも着実に接近していた。既に広範囲に展開し、一行の左右に回り込んでいる個体もいる。
これ以上の広範囲攻撃はフレンドリーファイアの恐れから撃てない。一匹ずつ地道に倒す必要がある。
相対するは軍隊蜘蛛が九匹とアラクネが一匹。
軍隊蜘蛛に関して言えばそれほど問題でもない。中ボス以前も多いときにはこのくらいの数での襲撃を受けていた。既に立ち回りは随分と洗練されている。
問題はアラクネだ。
軍隊蜘蛛は腹部の末端から糸を出すため、糸の射出中は必ず後ろを向く。加えてその間は微動だにしない。予備動作は分かりやすく、攻撃の隙も大きい。個としては精々中級ダンジョン雑魚敵相応だ。
脅威なのは奇襲性の高いフィールドと、高錬度の有機的な連携という群として強さである。
一方でアラクネは、蜘蛛部分の腹部だけからではなく人型部分の両掌からも糸を射出する。そのため腹部からの射出に比べてずっと自由度が大きく、対応が難しくなる。
そのうえ硬直がある蜘蛛と違って、両掌からの射出中も自由に動き回ることができる。地面を走りながらの射出は勿論、糸を使って木々の間を飛び回る立体的な軌道も可能とする。「大昔の漫画にいたな、そんな蜘蛛男」とは播磨の弁だ。
個としては上級ダンジョンの中ボス並み。大風イタチ三体分程度だ。
しかもアラクネは順当に軍隊蜘蛛の上位個体らしく蜘蛛達の連携にも加わる。蜘蛛達と協力して、プレイヤー達の隙を生むように、自分達の不足を補うように行動する。
中ボス部屋において、同じフィールドにはいたが種を越えた共闘はせず、それぞれに攻撃してきた大風イタチと軍隊蜘蛛の一団よりも厄介な相手だ。
さらに加えると、アラクネが出現した場合には軍隊蜘蛛は奇襲役を潰しても撤退をしない。蜘蛛を全滅させるか、プレイヤーが全滅ないし撤退するかだ。
そこで探索パーティが考えたアラクネ対策は「とにかくアラクネと軍隊蜘蛛を分断する」だった。
「それじゃ、行ってくるネ!」
「おう! 達者でな!」
『飛行』スキルでもって天ヶ崎が上昇する。目指すは上方を飛んで接近していたアラクネだ。飛来する糸を最小限の挙動で回避し、アラクネにタックルを決めた。その勢いのまま闇の向こうへ離れて行く。
「……まるで今生の別れみたいね?」
「……やめろよ、縁起でも無え。天ヶ崎ならマジで頓死しかねない」
「…言っている…場合か。…アタッカーは…播磨だけだぞ」
「私もいるじゃん」
「ん~? 攻撃当てられるの~? 蜘蛛も速いよ~?」
「……私は今日からタンクになるじゃん」
「それは丁度良いな」
ここに残ったメンバーは揃ってAGIが低い。蜘蛛の動きに追い付けない以上、下手に縦長の陣形を組んでも後衛が蜘蛛の糸の餌食になるだけなので、前衛と後衛の別が無い程まとまっている。壁役が増えるなら都合が良かった。勿論、本気でサクラメンをタンク扱いする気はないが。
苦しい陣形にも思えるが、直にルナとあんころもちが戻って来るので、それまで凌げば良い。メンツからすると難しい仕事でも無い。
「まあ、のんびり待つ気も無え。とっとと片付けるぞ。サクラも無理ない範囲で殴ってくれ」
「りょーかい」
「やる気だな、播磨」
「ああ。……割りとマジで天ヶ崎が不安なんだよ」
○
ディグダグの五人とはにとーが軍隊蜘蛛に囲まれている地点から五十メートル程離れた森の中。
高さおよそ十メートルの宙空に浮いた天ヶ崎天は、太い枝の上に立つアラクネと向き合っていた。
此彼の距離は二メートルも無い。前衛の間合いだ。天ヶ崎の手には三十センチ程の短杖があることを鑑みると天ヶ崎がアラクネに追い詰められているように思えるが、実際には天ヶ崎が距離を詰めた結果だ。
天ヶ崎がアラクネを拉致して一対一に持ち込んでから既にしばらく経っているが、天ヶ崎は常にこの間合いを保ち続けていた。自分だけが活きる、この間合いを。
「ここまで近いと、君はやりにくいんだよネ?」
近距離で魔法と糸を撃ち合いながら、天ヶ崎は呟く。勿論アラクネからの返答は無いが、天ヶ崎は構わず続ける。
「陽動のために前に出ることはあっても、そこに留まることはほとんど無かった。上から攪乱するのが主な役割なんじゃないカナ?」
不意にアラクネが後ろに跳んで枝から飛び降りた。天ヶ崎も追って地面へ急降下するが、アラクネの身体は真っ直ぐ地面に向かわず、途中でしゅっと後方の闇に消えた。腹部から出した糸を後方の枝につけ、スイングしながら糸を伝って下がったのだ。天ヶ崎もすぐに方向を転換する。
「うん、悪くないネ。それで、追いかけると迎撃が来るんだよネ?」
自身の周囲に冷気の盾を展開しながら追跡する。予想通り闇の奥から網状の糸が飛んで来た。糸は冷気で一瞬にして凍りつき、天ヶ崎に当たると砕け散った。
すぐに糸に吊られて逆さまのアラクネを発見した。十メートル程先だ、すかさずバランスボール大の火の玉を撃ち込む。
アラクネも天ヶ崎の接近を察知していたようで、右手を天ヶ崎に、左手を横に向けてそれぞれ糸を射出していた。右手の糸は火の玉にぶつかって燃え落ちたが、アラクネ自身は左手の糸で身体を引っ張って寸前で見事に火の玉を回避した。
「なかなかやるナァ。まあ……」
火の玉の後ろに続いて接近していた天ヶ崎にまでは気が回っていなかったようだ。
「もう一歩及ばないケド」
既にアラクネに肉薄していた天ヶ崎が、その身体を吹っ飛ばした。
アラクネは受け身も取らず頭から地面に落ち、まもなく消滅した。天ヶ崎の攻撃で既に終わっていたのだろう。
「蜘蛛にも言えるケド、単体だと決定打に欠けるネ。糸以外の中距離火力があれば、……いや、糸だけでもバリエーション増やせそうだケド。蜘蛛と言えば設置罠なのに、それも無いってのはチョットお粗末カナ」
天ヶ崎がアラクネを引っ張ったのは進路の先の方だった。別に戻っても良かったが、彼等なら軍隊蜘蛛の包囲を突破して追いつくだろう。という訳で、待ちながら一人反省会もとい一人論評会である。
「しかし、ボクの『ハードインパクト』を何度も受けていながら部位破壊も無いとはネェ。……ステータスじゃなくて、仕様カナ? だったらなお惜しいナ、インファイト型でも強そうだヨネ」
『ハードインパクト』は超短射程・超狭範囲・超高威力の魔法スキルだ。スキル使用者の周囲二メートル以内の指定した位置に直径五十センチの球形の衝撃波を起こす。それ用のスキルという訳ではないが、範囲と威力の関係から部位破壊が起きやすい。
前衛でしか使えない射程だが、前衛魔法職の多くは武器を使うため、杖に準ずる装備と相性の良いこのスキルの使用率は低い。
しかし杖持ちながら前衛をする天ヶ崎は愛用しているスキルだった。スキルレベルも高く、並みの威力ではない。
「……魔物戦はフィードバックできないのがナァ。全部、ルナみたいに会話が成り立ってくれればいいのにネ。無理か、暴動が起こる。……でも」
天ヶ崎の主戦場はPvPだ。勿論PKではない。
プレイヤーどうしで戦闘を行える『闘技場』という専用施設に入り浸る『剣闘士』と呼ばれるプレイヤー達がいる。
天ヶ崎もその一員だ。
繊細なコントロールが難しい飛行スキルを自在に操って空を飛び回り、杖持ちには考えられない近距離で高威力の魔法を叩き込む。
『変態機動』や『カミカゼ』なる二つ名で知られるトッププレイヤーだ。
ダンジョンは時々息抜きで潜るくらいなので、今回のディグダグからのオファーは実に幸運だったと、アラクネとの戦闘を振り返って切に思う。
結果的に、アラクネは天ヶ崎に完敗だった。全て読まれての敗北だった。だが。
天ヶ崎が行動を読めるということは、翻ってPvP的なプレイヤーを騙すための実に人間臭い思考である、ということだ。
「歴戦の剣闘士達にはさすがに劣るとは言え、ここの蜘蛛達には戦略がある。群れから離されても策を練り戦う意志がある。単純なプログラム的なルーチンじゃない。少なくともAIが自動作成するダンジョンの敵が持つスペックじゃない」
戦闘は対話だ、と天ヶ崎は考えている。
相手に勝つため策を弄し、相手の一挙手一投足からその策を、基になった思考を読み取る。
移り行く戦況に応じて次々と策を変え、相手の策は潰していく。
会話と同じだ。インプット、思考、アウトプット、その繰り返し。どちらかのHPが切れるまで、願わくは相手のHPが切れるまで続く。
魔物の言葉は一見するに複雑難解で、しかし分かってしまえば実に幼稚で低次だ。
だから天ヶ崎は闘技場に籠った。魔物よりも分かりやすくて、しかしずっと複雑で理解が難しい相手を求めて。
「運営の本気か。……エンプティ、君は実に惜しいことをしたかもしれない。ここが君の求める最前線だヨ、多分だケド。今度会ったら存分に自慢してあげよう。…………ん? 来たネ」
薄ぼんやりとした光が入り口側からやって来た。そちらを見遣ると、案の定探索パーティの一行だった。ルナとあんころもちもいる。
「天ヶ崎、生きてるか!?」
「元気だヨ。少しダメージ入っているケド……お、ありがとう」
すかさず回復が飛んで来た。すぐに全快したので、天ヶ崎は重ねて礼を言って止める。
「あら、あまりダメージは受けていなかったのね」
「移動中に絡み付いた糸を燃やした時の自傷ダメージだけカナ」
「…あのアラクネを…完封か。…さすが…剣闘士、…差しに…強い」
「ボク等向けだったからネ。逆に、普通の魔物ならもっと苦戦したヨ」
「やっぱそうか。異様に人間臭いもんな、アイツ等」
「ああ。だから、ボクの方は次からも同じ作戦で行けそうだヨ」
「こっちも問題無え」
「おう! じゃあ決定だな」
○
その後もアラクネを含め魔物達と何度か遭遇するが、難なく撃破して歩を進めて行った。
そして探索の果て、一行は森の闇のその奥に、ぽっかりと開けた空間を初めて発見したのだった。
煽るスタイル。剣闘士はパフォーマーでもあるので、ある種の職業病です。
煽っといて頓死するからこその人気だったり。