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出逢いの野菜スープ 7

 


 涙が止まらなかった。

 

 あっさりとしていて、野菜の味がしっかり出ている。

 見た目はシンプルだけど、出汁の効いた味だった。


「(おいしい)」


 この世界に来て、心の底からそう言える料理だった。


 

 温かい、心がこもった美味しい料理。


 

 喉が痛いくらい喜んでる。

 お腹がポカポカして、さっきまであんなにも鳴いてた腹の音はびっくりするほど消えていた。

 身体中に栄養と共に温かさが広がっていく。



「(おいしい)」



 スプーンを持つ手がスープを掬う、そして口へ運ぶ。

 その動きが止まらない。


 何度もその味が欲しくて、無心になって味わう。



 きっと死にそうな程空腹だったからかもしれない。

 それでも美味しくて、涙が止まらないのも気にせず食べ続けた。




「おいし、い……っ…………すごく……おいしいよ……ぉ……」




 生きててよかった。

 頑張ってよかった。

 苦しいことがたくさんあったけど、こうして美味しい料理に出逢えたから私は幸せだ。



 今なら心からそう言える。



 気付けば器の中は空になっていた。

 とても美味しいスープにもうありつけないのかと思うと切なくなる。


 するとウィリアムさんが私に手を差し出してきた。



「…………え?」

「お代わり、欲しいんだろ」

「いい、の?」



 早く寄越せと手を伸ばされている。

 私は少し迷うとウィリアムさんへ器を渡す。


 女の子としてお代わりはどうかと思ったけど美味しいものをもっと食べたいという欲求には勝てなかった。



 先程よりもスープが沢山入った状態で渡されて思わず恥ずかしさと嬉しさが同時に襲ってくる。

 それでも一口飲むと心から「おいしい」という気持ちが溢れ出てまた止まらなくなるのだ。



 ウィリアムさん、エルネストさんありがとう。

 美味しいご飯をありがとう。




 願うなら、私は………………



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