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チキンのトマト煮は仲間の証 15

本日二話投稿しております。


 ◇◆◇



「なかなか帰ってこないなー」

「いいじゃないですか、青春って感じで」

 

 ホールに残った二人は飲み干して残りわずかなワインを片手に二人の居るだろうキッチンを見つめる。

 見つめる瞳は心配よりも、二人の行方を生暖かく見守る保護者のようなものであった。

 少しでもいい雰囲気になってくれたらいいな、というお節介も兼ねていたがこの様子だと自分達の予想以上にいい雰囲気になっているようで嬉しい。


「本当、若いっていいよなぁ……」

「やめてくださいよ、リコ。私まだ若いつもりなんですから」

「そりゃ俺もまだピチピチだよ。そうじゃなくって……甘酸っぱいなーって」

 

 今まで幼い頃から一緒に過ごしてきたが今まで浮いた話の一つも聞いたことの無かった親友の変化。

 彼の過去を知り共に過ごしつつ彼の幸せを願ってきた二人にとって、森の中で出会ったマイアの存在はまさに一筋の光だった。

 

「それにしても……なんでマイアちゃんがバジルなのかねー。もっと主張するものにすればいいのに」

「んー……。ウィルの今までの傾向からすると……初めて逢ったのが森の中だからとか……ですかね」

「木々の葉っぱか……ありえそうだな」


 自分達の食材が選ばれた理由がそれぞれ髪の色から選んだ言っていた位だ。

 きっと作った本人も深く理由は考えず、マイアのイメージですぐに思いついたものを食材にしたと推察する。


「もう少しロマンのある選び方をすりゃあいいのに。これじゃ恋愛に至るまでまだまだ先かな……」

「おやおや、何を言ってるんですかリコ」


 大きなため息を零すリコに対して、エルネストは目の前の料理を味わいつつ満面の笑顔を浮かべ――

「トマトとバジルって、とても相性がいいんですよ」

 と楽しげに語るのだった。

 

 ◇◆◇


 翌朝、快晴に恵まれた自由都市に十回の鐘の音が鳴り響く中、街外れの住宅街には人の活気づく声があった。

 皆、一軒の店の前に列をなしていて楽しげにその扉が開くのを待ちかねている。

 開店当時からの常連も居れば、宣伝を聞きつけて足を運んでみた人もいた。


 ゆっくりとその店の扉が開かれると、高く髪を一つに結った一人の女性が扉に掛けられた『CLOSE』と描かれているパネルをひっくり返し『OPEN』の面を上にする。


 そしてこの店の料理を待ち望んで訪れた人々へ笑顔で一礼し、大きな声で挨拶した。



「――大変お待たせいたしました。緋色の小鳥亭、只今から開店です!」


 

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