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チキンのトマト煮は仲間の証 10

 いよいよ明日、緋色の小鳥亭はリニューアルオープンを迎える。


 一週間という短い時間ではあったが手伝いに来てくれたリコやスヴァル夫妻の手助けもあり、何ということでしょうと褒め称えたい程、見違えるくらい素敵な外見と変貌した。


 住宅街の中にある店舗は遠くから分かる様に私の描いたプリムが目印の看板を用意し、壊れかけていた扉や外壁は手直しをして綺麗にした。

 内装も飾り付けをして、女性や家族連れでも訪れやすいような雰囲気に。メニューも分かりやすくカウンターの上と、テーブルに備え付けのものを用意した。

 まだ私が入りたてということで、今は常連さんがよく頼んでいるメニューを中心にして今後増やしていこうと決めた。

 


 改めてこの一週間を思い返すと作業量が物凄く多くて大変だったけど、こうして明日からお客様が入るだろうホールを見渡すと、自然とやる気がこみ上げてくる。


「一応様々なお店にチラシを貼らせてもらいましたけど……お客さん来ますかね」

「大丈夫じゃない? 酒場に来てるオッサンたちに『可愛い店員さんが入った!』って伝えておいたから」

「ははは。それでは明日から男性客が殺到しそうですね。私としてはこんなにオシャレにお店が変わったので女性の方も来て欲しいんですけど」

 

 リコの宣伝方法を聞いて思わず顔が熱くなってしまう。私を目当てに来られても困るというのに……。


 今、ホールには私とエルネスト、リコとプリムがいた。

 ただプリムはいつもの定位置であるリコの肩には居らず、店内に作ったプリム専用のスペースにいた。

 プリムが店名の由来なのだからせっかくなので彼女が過ごせる場所を用意したらどうかと提案してみたのだ。

 勿論、皆も快く了承してくれて店の一角に作ってみた。

 

 その場所は彼女が何度も心地よさを追求して用意したお気に入りの寝床が用意されている。

 そしてプリムのリクエストとして仕事の邪魔にならないという条件の下、大好きなウィルを見るためにキッチンを眺めることができる場所に作られているのはここだけの話だ。


 ちなみに、ウィルは現在夕食作りの為にキッチンにいる。さっそく作った彼女のためのスペースは活用されていた。


「今日のご飯、なんだろ……」

 

 出逢って早一週間。既に私はウィルの料理の虜になっていた。

 ウィルの料理はどれも美味しくて、一日の中で一番楽しみな時間となっていた。

 

 彼の料理を三食食べられるなら給金は要らないと思ってしまう程、彼の料理は私のお気に入りとなった。


 ホールにいてもキッチンから食欲を誘ういい香りが漂ってくる。先程から必死にお腹が鳴らないように、自分に言い聞かせてるくらいだ。


「この香りからすると……いつものアレか」

「まあ、そうでしょうね」

「いつもの……あれ?」


 どうやら二人は今日のメニューが何か分かったらしい。私だけ分からず、匂いを嗅いで推理してみる。


「うーん……ちょっとだけ、トマトの香り……がするような」

「おや、鋭いですね」


 どうやらトマトを使用してることは正解らしい。しかし、匂いからではそれ以外の情報は分からない。


「今日のメニューはですね、この店の看板メニューなんですよ」

「看板メニューって……」

 

 ふと私は見上げる。視線の先にあるのは、お客様に見やすいように取り付けられた大きなメニュー表だ。

 その一番最初に書かれているメニュー名を言葉にする。



「――チキンの、トマト煮」



 チキンのトマト煮。メニュー選びの時もウィルが一番最初に候補に入れていた品だ。


「一番人気商品でもあるんですよ。明日からオープンですし……マイアさんにも是非食べてほしいと思ったんでしょう」

 

 確かに、店員として働く身としてはお客様におすすめする時どんな料理か説明することがある。

 その際自分自身が食べているかいないかで説明の説得力が変わる。一番人気の料理ならば、是非食べてみたい。


「すごく楽しみです、看板メニュー」

 


 ああ、料理の完成が待ち遠しい。

 きっと明日から来てくれるお客様も、こんな気持ちになるだろう。



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