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異世界転移でホムンクルス無双  作者: 雪川フフ
第一章 いざ異世界へ
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#01 異世界転移完了

 螺旋状に繋がれた虹色に輝く波が駆け回り、どんどんと情報を押し流していく。

 しばらくそんな事が続いた後、その空間を真っ白な閃光が覆い尽くした。

 思わず目を覆い、閃光が消えた後にはーーー見知らぬ景色が広がっていた。

 快晴の空の下、青々とした短草が広がる小高い丘には小さな小屋が建っている。


「ここが異世界か?別段変わりないように見えるな。」


 服装は先程屋上から落ちた時と変わっておらず、体に異常もない。

 そう言いながら小屋に近づいていくと地を震わせるような咆哮が響き、凄まじい突風が吹いた。

 空を見上げた蓮の目に写ったのはー


「前言撤回だな、やっぱり異世界だ。にしても、いきなりお目にかかれるとは。」


 黒い鱗がびっしりと大きな体躯を覆い、漆黒の翼を力強く羽ばたかせて飛び去っていく圧倒的存在。漫画やアニメなんかでもかなり大きな敵として扱われるファンタジーの代名詞、ドラゴン。この世界では西洋風のドラゴンが主流なのだろうか。

 はるか彼方までを飛行機よりも速く飛び去っていくのを見送った蓮は再び小屋へと近づいた。


 最近建てられたと思われる小屋は丸太を組まれており、思っていたよりも大きい。小屋というよりかはログハウスと言った方が適切だろう。こんな周りに何もないところに誰が住んでいるのだろうか、そう思いながらしっかりとしたドアをノックしようとすると、そこに手紙が貼られていることに気づいた。


 宛先は蓮になっている。十中八九ロキからだろう。

 折りたたまれていた手紙を広げるとやはりロキからのもので、しばらく連絡は取れなく、お詫びと言ってはなんだがこのログハウスは自由に使ってくれて構わない、と言った事が書かれていた。付け加えて、蓮がスキルを使うにあたって必要になるものを中に用意してあるともあった。


 ひとまず中に入ると、新鮮な木の香りが家いっぱいに充満している。ベッドや台所、洗面台もあり、部屋の隅には謎のプレゼントボックス、中央には四角いテーブル、その上にはこの家の鍵が置いてあった。ご丁寧にスペアまで用意してある。両開きになっているガラス窓を全て開けると、外から気持ちのいい風が中へと吹き込んだ。大きく伸びをして、これからすることを考えた。


 まずここがどこかわからないが、丘の麓には舗装こそされてはいないが道が見えた。そこを進めばどこかの国から街にはたどり着けるだろう。が、なによりもまずはロキに言われた通り、今の自分の力を確認しなくてはならない。テーブルの上には鍵と一緒にもう一つ、銀色のプレートが置かれていた。これがロキの言っていたステータスを確認できる道具だろう。手に持ち某国民的RPGのキャラクターのステータスを想像するとーー



 ステータス


 名前:篠原蓮

 種族:人間

 称号:〈喧嘩師〉

 スキル:【言語翻訳】【人造人間ホムンクルス】【全属性魔法】



 ーー表示された。

 名前も種族もそのままだが、称号の欄には地球で呼ばれたことのある事が表示されている。

 称号が喧嘩師の人間、どこのヘビ柄ジャケットの眼帯テクノカットだ。

 が、それ以上に蓮の目を引いたのはスキルの欄だった。

【言語翻訳】は文字通り、この世界の言語に自動的に翻訳してくれるもので、【全属性魔法】もそのままの意味で属性魔法が全て使える、というものだろう。

 だが、これは内容がわからない。


「【人造人間ホムンクルス】?」


 ラテン語で小人を意味しており、ヨーロッパの錬金術師が作り出した存在。限りなく人間に近く、生まれた時から様々な知識を身につけているというが、地球ではヨーロッパの医学錬金術師のパラケルスス以降成功した例はない。それでも多くの創作物で登場している。

 そのホムンクルスがなぜか蓮のスキル欄にはある。


「もしかして、さっきの手紙にあったスキルを使うのに必要な道具って…」


 そう考えた蓮は室内の隅に置いてある、派手にラッピングされたプレゼントボックスのリボンをほどき、中を確認した。中には大量の水が入った容器といくつもの袋、そしてピンポン球程度の大きさで洋紅色のルビーに似た丸い結晶があった。袋の中には黒や白、黄色といった種類別の粉があり、混ざり合って変な匂いがする。そのうちの一つである黒い粉からは鉄の匂いがした。


人造人間ホムンクルス】というスキルと大量の水、鉄粉と思われる物を始めとした数種の粉、そして紅く半透明の結晶。蓮の頭の中にある情報が思い出された。

 蓮は紅い結晶を手に持ち、苦笑いした。


「スキルと賢者の石と材料使って、ホムンクルス作り出せってか?」


 そう、この紅い結晶は俗に言う賢者の石である。

 哲学者の石、天上の石、大エリクシル、赤きティンクトゥラ等、様々な呼び名を持っている。鉛を金へと変え、不死の命をも与えると言われた、錬金術師が追い求めたものだ。しかし、これは地球での話。これがこの異世界リライトでも同じかどうかはわからない。


 と、それらの材料に挟まれるようにして一枚の紙があるのを見つけた。上部には大きく「賢者の石とは?」と記されている。著者はーー


「やっぱりロキじゃねぇか。」


 早速読み始めると、スラスラと読める。【言語翻訳】のお陰で文字も読めるらしい。今まで見てきたどの文字とも違うことに若干の違和感を覚えつつも内容は理解できた。


 この世界の賢者の石は、たしかに金を錬成することもできるが、それよりも病気の治療などに使われることの方が多いらしい。あらゆる病を治せるが、希少性が高く、それこそ王族が不死の病にかかった時以外は使わないそうだ。作り方もどこにあるかも、この世界の人々は知らないらしいーーしかし、この手紙にはそれが書いてあった。賢者の石の作り方が。多種の金属や液体を混ぜ、日数をかけて魔力を練り込み、更に日数をかけて凝縮することでやっと完成するらしい。「作り方は教えたが、この世界の全員が知ればバランスが崩れるから誰にも教えるな」とも書いてあった。


 そしてこの手紙の下には、もう一つ、賢者の石の使い道が書いてあった。蓮にとっては予想通りのことだった。


『賢者の石から発せられるエネルギーを使うことで人造人間ホムンクルスを作り出せる』


 この記述から見る限り、裏を返せば賢者の石がないと【人造人間ホムンクルス】のスキルは使えない、ということになる。


「でもまぁ賢者の石の作り方はわかったから失敗しても作り直せる、のか」


 そういうと賢者の石の説明書と箱の中から取り出した材料を並べた。ホムンクルスを作り出す手順は先程の説明書に書いてあった。


「1発目で鬼が出るか蛇が出るかわからないが…いっちょやってみるか」


 おもむろに手を合わせるとニヤリと笑って言った。

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