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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第2章 冒険者なんてなるんじゃなかった

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第2-23話 英雄、間に合わず

 その知らせはとても唐突に訪れた。


 「……帝国で革命が起きた?」


 ヒロ達がアレアの街に訪れてから二週間ほどだった時のことだった。


 「ああ、我々が道中で仕入れた情報だ。政府を通しているから確実だと思うぞ」

 

 それは、軍の大尉からもたらされた情報だった。


 「革命ってのはどれくらい前に起きたんだ?」

 「正確なほどは定かではないが、勝ち目のない戦争に挑んだ皇帝に対して民衆の不安が爆発したらしい。あそこは元々、いろんな国をまとめ上げて出来た国だからな。民衆も一枚岩じゃないんだ」

 「……皇族はどうなるんだ?」

 「さて、詳しいほどは分からないが……。普通は殺されるんじゃないか?」

 「……ッ! 貴重な情報感謝する」

 

 ヒロは大尉にそう告げると、宿泊している宿まで走って戻った。


 「おい、みんな! 揃ってるか!?」

 「どうしたんだ、ヒロ君。そんなに急いで」

 「今すぐ帝国に行くぞ! アナスタシアが危ない!!」

 「黒瀬君、状況説明をしてください」

 「帝国で革命が起きた。原因は帝政に不満があったからのようだが、革命が起きた場合ほとんどの為政者は殺される!」

 「ひ、姫様が……殺される?」

 「急ぐぞ。今なら軍が連れてきた竜車を借りられる。あれなら、帝都まで三日とかからない」

 「分かっているが、道中の準備はどうするのだ」

 「一応、俺が万が一の場合に備えて黒い箱(アイテムボックス)に一か月分の食料と水を用意している。それで何とかしよう」

 「分かった。帝国に向かおう。だが、ヒロ君。最悪の場合は想定しておくんだぞ」

 「…………分かってる」


 ヒロ達五人は宿を飛び出すと、南門に駐屯基地を構えていた軍に駆け込んだ。


 「ん、どうした。そんなに血相抱えて」

 「一週間竜車を貸してくれ」

 「一週間? そんなに時間をとってどうするんだ? 最前線にでも行くのか?」

 「帝国に行く。第三皇女を救いに行くんだ」

 「はぁ? いや、まあそれは良いけどよ。高いぜ、竜車は」

 「一億払う。御者もつけろ」

 「い、一億ぅ!? 貸し出す!!」


 ヒロはその場で小切手をきると竜車に乗りこんだ。御者が慌てて走ってきて、竜車を動かし始める。竜車に刻まれた風圧安定と、悪路走行、気温固定の祝福が展開される。


 荷台の脚竜を駆動力にして動かす竜車は馬車や黒曜馬などとは比べ物にならないほどの速度を出す。最高速度は冗談抜きで150キロ近くにまで達することもある乗り物だ。勿論、それを動かす御者はプロフェッショナルだし、竜の餌台も結構かかるので庶民では到底乗ることなど出来はしないが。


 「……頼む。アナスタシア、生きていてくれよ」


 ヒロの言葉は、竜車の出す音に掻き消えて霧散した。


 出発したのは昼前くらいだったが、日が暮れる前には山脈の麓についてしまっていた。そこにある村で一泊すると、翌日はそのまま山脈を迂回しながら竜車を走らせた。いかに速度が出せると言っても、崖際のような悪路では最高速度など出せるはずもない。ヒロは、はやる気持ちを抑えながら、竜車を押して少しでも早く着くようにわずかながらの努力を行った。

 その甲斐あってか、二日目の夜には帝国の領土に入ることが出来た。

 

そうして三日目。森に入るまでは竜車は理論値で走れるので、竜車の速度に任せて走っていると、急に竜車が進路を変えた。


「何がっ!」

「ヒロ君、上!!」


 リリィの叫びで、ヒロが空を見上げるとそこには天を覆うほどのワイバーンの群れ。そのうちの複数体が、脚竜を喰らおうと落下してきた。

 だから、御者が進行方向を変えたのだ。


 「何が……。起きてんだ」

 「この間、ヒロ殿とリリィ殿が狩った仲間でござろうか? いや、それにしてもこの数は……」

 

 アミも、ナナも、ラウラも攻撃魔法が使えないのでただ、空を見上げることしかできない。


 「クソ……。『捻じれて、放て』」

 「『光よ集まれ、そして散れ』」


 ヒロとリリィが同時に詠唱。生み出された砲弾と、熱線によって十何体かのワイバーンが魔石になったが、それでも空を埋め尽くすようなワイバーンにとっては取るに足らない数でしかない。


 「俺の残存魔力だと、中級魔法は残り280発しか撃てねえ。それじゃ、この空を埋め尽くすワイバーンは狩り切れない」

 「黒瀬君! あの隕石魔法はどうなの?」

 「あれは空に対してじゃ大して効果無いし……。地面にぶつけて土砂を巻き上げる方法とってもいいが、もう少し離れないとまとめてみんな死んじまう」

 「夜ならあそこまで飛ぶことも不可能ではないが……昼ではどうにもできぬでござる」

 「……飛ぶか」

 「……ご主人様。何を考えているのですか?」

 「飛んでくる」

 「は?」


 ヒロは竜車から飛び出して文字通りの全力、100%の力を出すと空へと飛んだ。ワイバーンたちがヒロ達に襲い掛かろうと待機していた高度はせいぜいが150m、高くても300mほどだ。ワイバーンたちは、地面からロケットのように飛び出したヒロに対してろくな回避行動をとれずにぶつかった。

 漆黒の粒子を空中に生み出して、それを足場に横に飛び少しだけ大きなワイバーンに捕まると、自らの身体とワイバーンの身体を特級魔法の粒子によって結んだ。


 「絶刀よ。刀身を伸ばせ」

 【了解】

 【武装展開:刀身延長】

  

 ヒロの魔力を消費して、透明な刀身が伸びていく。


 「まだだ。もっと伸ばせ」

 【武装展開:刀身延長Ⅱ】

 「もっとだ」

 【極大延長しますか?】

 【Yes/No】

 「イエスだっ!」

 【了解】

 【武装解放:極大刀身】

 【展開します】


 ずるり、とヒロの身体から魔力が持って行かれる。目には見えぬがヒロには体感で分かる。この刀、尋常ならざるほどに長い。流石に一キロは無いが、700mはありそうだ。


 「断ち切れェえええええええええええッ!!!」


 ヒロは50%の力を持って絶刀を振るった。ヒロの生命力を消費して生み出された透明な刃はたちどころに周囲一体のワイバーンを全て狩りつくす。


 「……圧巻でござるな」

 「ヒロ君がどんどん人間離れしている気がするよ」

 「多分それ、間違いじゃないですよ……」

 「かっこいいですねぇ。ご主人様」


 それぞれがそれぞれの言葉を口にして、最後のワイバーンを殺したヒロが地面に落ちてくるをのを待った。

 地面に転がった魔石は、拾う時間がもったいないので放っておいた。魔石は次に通りかかった人間が拾うだろう。ヒロは御者に先をいそがせると、そのまま帝都に突入した。


 「クソッ、人が多すぎるっ!!」


 帝都の大通りは、どこにここまで人が居たのかと思うほどに人間で溢れていた。


 「ヒロ殿、あれ」

 ぱっと、ナナが指さしたのは大通りの終着点。一際大きな広場で、ギロチンに拘束されているアナスタシアの姿だった。


 「アナスタシア!!」

 「ヒロ!?」


 ヒロは周囲の建物の屋根を走りながら、アナスタシアに駆け寄る。帝国国民たちが一斉にヒロにヤジを飛ばす。


 「貴様、コイツが何をしたのか知っているのか!」

 「帝国を滅ぼそうとしたんだぞ!」

 「部外者が口を挟むな!」

 

 「ふざけるなッ! 子供に責任負わせて恥ずかしくねえのか!!」


 ヒロの一喝は帝国市民には届かず、


 「落とせ」


 ただ、処刑者の男が淡々とギロチンの刃を落とした。


 そんなもの、ここから撃ち落としてやるッ!


 ヒロは漆黒の粒子によって生み出された弾丸を、スローモーションで落ち続けるギロチンの刃めがけて放とうとして、


 「……ガハッ!」

 

 魔法を喰らった。それによって、狙いがそれる。

 

 「やめろ」

 

 声が漏れる。無慈悲な刃はまっすぐ落ちる。


 「やめてくれ」


 ヒロの言葉は届かない。アナスタシアは、わずかにヒロに手を伸ばすように見せて、




 そして、その首が舞った。






 これは、英雄譚ではない。世界に英雄ヒーローなど存在しない。

 窮地に助けを求める人間に、救いを貰たらす人間などは存在しない。


 これは少年が足掻く物語。全てを失い、全てを投げ捨て、世界の敵となる物語だ。


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