第2-15話 冒険者、英雄になる
第二ラウンドはヒロが伸ばした刀で倒した。首を断ち切ったはずの大猿は、どこにそんな力を残していたのかヒロとしばらく打ち合っていたものの、一分と経たずに魔石になった。
「帰ろう。残りの魔物を狩らないと」
「うむ。報酬は弾むでござるよ」
「任せろ」
第80階層を突破したあと、ヒロ達は宝珠を使って最上階に戻った。戻るとそこには魔物がいるわいるわ。
「扉塞いでいたからここに溜まっちまったのか……」
「全部倒してしまおう」
「ああ、いい稼ぎになるしな」
「私もっと溜まってると思っていましたよ」
「なら、深い階層の魔物は来てねえのかもな」
ヒロ達は軽く雑談をしながら、魔物を狩っていく。別に強い魔物がいるわけではない。ヒロたちの前にいるのはどれもこれもD-級の魔物ばかりだ。ヒロ達はものの数分でその場にいた魔物を狩りつくすと、壁を解除して外に出た。
そこにいたのは、数多くの冒険者たち。地下迷宮の出口から出てきたヒロ達を見て、みな動きを止めている。
「双極絶死っ! 大丈夫なのか!!」
そう言って飛び出してきたのは、冒険者ギルドレルト支部の支部長。その身なりは荒くれ者の互助組織とは思えないまでに整っている。
「ええ、問題は解決しました。後は深層の魔物がここまで来るかもという心配がありますが、しばらく待っても出てこなかったのでその可能性は低いでしょう」
「そうか……。流石は金級冒険者。見事な腕だ」
「ありがとうございます」
「報酬は追って通達する。後は我々に任せてくれ」
「お願いします」
後処理は支部長がやってがくれるみたいなので丸投げして、ヒロ達は宿を探すことにした。本当はラウラに探してもらうところだったのだが、先ほどの爆発が彼女に少なからずの精神的ショックを与えているので、しばらくリリィに任せてヒロ達が宿を探すことにした。
アミとヒロ&ナナという組み合わせで宿探しに向かった。
「そういえば、お前のお袋さんは幾らあれば解放出来るんだ?」
「母上でござるか? 1億7千万イルでござる」
「……ほぼ二億か」
ヒロの言葉にナナが頷く。
「中々溜まらぬでござるな。地道にやるしかないでござる」
「痕機を見つければ難しい話じゃない。これからどうするかは一緒に考えよう」
「ヒロ殿はこれからどうするのでござるか」
「これから、か」
「まだ、地下迷宮に潜るのでござるか? 冒険者として、他のことを続けるのでござるか? それとも、冒険者を辞めるのでござるか?」
「俺は……」
リリィと決めた三年目まではまだ時間がある。けど、ヒロはもうガウェインたちに囚われていない。あの日、リリィと語った日に悟ったのだ。
「……身の振り方を考えないとなぁ」
「今後についてでござるか」
「ああ、皇国と東邦連合が同盟を組むなんて夢にも思っていなかったけど、世界がきな臭いことになってるのは事実だ。金級冒険者の俺とリリィはいたるところに引っ張りだこだろうよ」
「戦争が始まるなら、強い個が必要ということでござるな」
「けど、俺としては戦争で稼ぐつもりはないし、そもそも戦争が始まるなんていう確証もない。お前のお袋さんを解放できるだけの額を稼いだら、リリィと一緒に引退するのもありだな」
「引退したなら、何をするのでござるか?」
「さてな……。田舎に土地でも買ってスローライフでも送るさ」
「金の冒険者が後衛を育てずにひきこもるとなると我らには好都合でござるよ」
「ははっ、バランスよくいかねえとな」
「おーい、黒瀬くーん。見つかったよー!!」
どうやらヒロの出した条件に見合う宿が見つかったようだ。アミがこちらに駆け寄ってきた。
ヒロ達はリリィとラウラを呼びに戻ると、宿に向かった。
三日後、ヒロの部屋に一通の手紙が届いていた。差出人を見ると、冒険者ギルドの支部長から。ヒロ達はレルトの冒険者ギルドに向かうと、受付嬢が奥に案内してくれた。
「こっ、これはどこに向かっているでござるか」
これから向かう場所には強者の冒険者がいるという話をしてからビビりっぱなしのナナにヒロが苦笑いをする。
「さてな、でも怒られるわけじゃなさそうだぜ」
ヒロたちが通された応接室には、支部長のほかにももう一人。かなり渋い男がいた。全身を正装で包み、もう四十越えというのにその姿は二十代後半にも見える。
「久しぶりだね、ヒロ君」
「ああ、市長殿」
その男こそ『境界都市レルト』のトップだ。
「それで、支部長と市長が二人そろって何をするっていうんだ」
「本日は君たちに渡したいものがあってね。いや、ヒロ君。まさか君が皇国にまで恩を売っているとは知らなかったよ」
……耳がはやいことだ。
「仲間を助けにいっただけだ。別に特別なことなんて何もしてねえよ」
その言葉にアミが少しだけ顔を赤くした。
「では支部長。あれを」
「ええ」
市長がそういうと、支部長が机の上にケースを置くとゆっくりと開いた。一瞬、金かと思ったが違う。金ならば口座の数字をいじるだけでいい。なら、これは。
「白い冒険者証だ。気に入ってくれると嬉しいよ」
そこにはご丁寧に、ヒロの名が刻まれている。無論、リリィの物も用意されており、手渡される。アミには金の冒険者証。
「そこの彼女には、必要ないだろう?」
市長がナナを指さして、ニタリと笑う。それにナナが驚いてびくりと震えた。
気の弱い吸血鬼もいたもんだ。
「ケッ、耳がいいことで」
「市長だからね」
「これは、俺に英雄になれってことか?」
「馬鹿なことを。君はもう英雄だ」
白い冒険者証は、分類不可能種を狩って、国家の危機を救うような英雄に与えられるものだ。少なくとも今のヒロたちは分類不可能種を倒していないため、条件を満たしていない。
「皇国を救い、この大陸の物流の中心であるこの街を救った。君たちには、これを受け取る資格がある」
「だけど、俺たちはまだ分類不可能種を倒してないぞ」
「ヒロ君、今の世界は英雄を欲しているんだ。意味は分かるだろう」
「……あぁ」
今、世界情勢がピリピリしている。ピリピリしているからこそ、民衆は新たな英雄を欲しているということだ。
そして、ヒロはタイミングがもっともよかったというだけのこと。
「おめでとう、双極絶死。君たちは、英雄だよ」
そう言ってほほ笑む市長の言葉に、ヒロはうすら寒いものを感じずにはいられなかった。
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