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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第2章 冒険者なんてなるんじゃなかった

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第2-13話 冒険者、黒幕と出会う

 「ヒロ君、ここにいたのか」


 ラウラを抱えたリリィが屋根伝いにヒロの元にやってくると、辺りの魔物を魔法で焼き尽くした。


 「何が起こっているんだ?」

 「地下迷宮ダンジョンから、魔物が溢れている」

 「……馬鹿な」


 地下迷宮ダンジョン内の魔物は階層の移動などしない。決められた階層内にとどまって、入ってくるものに牙をむく。だが、それ以外では決して自主的な行動は起こさない。


 「ヒロ君、ここは『レルトの地下迷宮』だぞ」

 「……なら何が起こるか、分かったもんじゃねえな」


 そうだ。ここは『境界都市レルト』。普通の地下迷宮ダンジョンと同じだと思っていると痛い目にあう。


 「……地下に潜るぞ。この迷宮の管轄は双極絶死おれたちになっている。この原因も解消する責任があるだろ」

 「分かった。行こう」

 「とりあえず、入り口に入らないことにはどうしようも無い。ナナ、道を開くぞ」

 「承った」


 ヒロとナナが剣を抜いて、魔物を狩っていく。その速度はまさに化け物と呼ぶにふさわしい。

 ヒロが刃を振るえば、ゴブリンの首が飛び、オークの身体が分かたれ、ゾンビが灰になる。

 無論、ナナとて恐ろしい。彼女が一太刀振るえば、彼女の射程の中にいた魔物たちが一斉に魔石となるのだ。


 「ここらの低級の魔物に知能はない。人間を見たら襲い掛かる程度のものだ」

 「うむ。分かっているでござる。私と人との区別もついておらぬようだからな」

 「……楽でいい」


 魔物たちは直近にいる人に襲い掛かる。だから、逃げ出した一般人に牙をむくことは無く、むしろ狩り始めた冒険者に襲い掛かっているものばかりだ。


 「見えてきたな」


 ヒロが見たのは、ついこの間まで毎日使い続けてきた地下迷宮ダンジョンの入り口。そこからは魔物たちが湯水のようにあふれ出していた。


 「『捻じれて、放て』」


 ヒロによって生み出された漆黒の砲弾がまっすぐ飛ぶと、魔物たちを壊滅させた。


 「『圧壊せよ』」


 わずかに採り逃した者たちもヒロの詠唱によって潰される。ヒロは迷宮の入り口に飛び込むと、今もわき続ける魔物を狩りつくして出口に粒子を使って壁を貼った。


 「とりあえず、これで対処療法にはなっただろ……」

 「残った魔物はほかの冒険者にお願いするしかないですね。ところで、ラウラさんはどこまで連れて行くんですか」

 「このまま、俺たちの近くにいてもらったほうが安全だろ。外だと何が起きるかわからねえ」

 「ラウラもご主人様の言う通りだと思います」

 「なら、全員で宝珠を触れ。ラウラは潜ったことがないから俺に捕まれ。これで移動できる」

 

 ヒロが向かうのは最下層、第八十階。どの階に問題があるのかは分からないが、上から降りるよりも下から登るほうが早いと見たのだ。


 世界が周り、乗り物酔いにも似た感覚でヒロ達は八十階の入り口へと転移した。


 「……これは」

 「……何があったでござるか」


 森が燃えていた(・・・・・・・)

 

 ……こんなことが、あり得るのだろうか。


 「皆さま、どうかされたのですか?」


 黙ったまま何も言おうとしない四人にラウラが首をかしげる。


 「ラウラは見るのは初めてか。この階層は、元々森のステージだったんだ。でも、今は燃えてしまっている」


 ヒロの言葉にラウラが黙り込む。

 

 「誰かが人為的に燃やしたのだろうか」

 「それ以外にないだろ。それが、今回の事件に繋がっているかは分からねえけどよ」


 ヒロがそう言ったところで、目の前から人喰い猿が現れる。

 火に追われるようにして森から逃げ出したのだろう。だが、逃げた先には金の冒険者。すぐに魔石になった。


 「おやおや、お早い到着だ」

 

 ふと、ヒロに声が掛けられる。気配のした方向に視線を送ると、黒いフードを被った男が一人。ヒロたちの前に立っていた。


 「チッ、見てやがったな。薄気味が悪い。全員出て来いよ」

 「流石は金級冒険者ゴールドホルダー。子供騙しは通じないというわけですか」


 ヒロの言葉に目の前の黒服が右腕を上げると、風景がうっすらと滲んでいくとそこから十人ほどの黒フード男たちが出てきた。


 「……次にやるときは、もう少し魔法の痕跡を消しておくんだな」

 「いえ、これは魔法じゃないですよ?」

 

 ……あれ?


 互いに首を傾げた。


 「いや、でも普通に見えてたし」

 「……何が見えているんですか」


 黒フードの男に引かれてしまった。おかしい。


 「そういえばご主人様。帝国でも罠を見破っていましたよね」

 「いや、あれは普通に見えるだろ」

 「見えませんよ……」

 「まあ、金級冒険者ゴールドホルダーともなれば常人には見えない何かが見えるのかもしれませんね」


 男の視線は見えないが、その言葉はヒロたちのことを知っているという口ぶりだった。だが、それ自体は別におかしなものではない。金級冒険者ゴールドホルダーはかなり希少レアだから、有名人になるのも仕方ないだろう。


 だが、


 「では、交渉といこうではありませんか」

 「はっ、何と何と天秤にかけるんだ?」

 「ご存知でしょう。貴方は、天秤を。私たちはこの街の命を。どうでしょう」

 

 ……こいつらか。


 「お前たちか。盗賊団に合成獣キメラを向かわせたのは」

 「はて、一体なんのことやら」


 そう言いながらも男の口は愉悦に歪んだ。

 

 ……やはり、痕機ラグアートの情報が洩れている。


 「お前たちはこの天秤と、この街の人間の命が釣り合うと、本当にそう思ってんのか」

 「まさか。こちらとしてもいくつか払えるものは払うつもりですよ。そうですね、真面目に五千億とかはどうでしょう」

 「ごっ……」


 ナナが言葉を詰まらせたように驚く。彼女は母親のことがあるから金に敏感になるのも分かるが、それくらいなら俺は既に持っている(・・・・・)


 ヒロは短刀をまっすぐ男たちに向けた。


 「上の事件をお前たちがやっているというのなら、お前たちを捉えればすむ話だ」

 「いけませんよ。冒険者はすぐ暴力に訴える」


 そうは言いながらも、まんざらでもなさそうな黒フード。



 ヒロは100%を吐き出して、飛び出した。

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