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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第2章 冒険者なんてなるんじゃなかった

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第2-02話 冒険者、皇国に向かう

 ヒロの絶刀と、スコーピオンの尾がぶつかり合って、甲高い金属音と火花が散る。


 「ここ最近、俺たちを見ていたのはお前か?」

 「さて、どうだかね。僕だけじゃないと思うよ、君についていたのは」

 「人気者は困るねえッ!!」


 スコーピオンが尾を使って繰り出した突きは流れるような五連撃。全てを薄皮一枚で回避すると、地面に五つの大きな穴が出来ていた。

 

 「その磁力魔法、自分の身体みたいに扱ってるけど、どんだけ訓練したんだ?」

 「さぁ? 僕の記憶があるより、ずっと前からだと思うよ」


 ヒロの刃と、スコーピオンの尾は衆人環視の中で幾度となくぶつかり合う猛攻。

 だが、速すぎるが故にほとんどの者の目には衝撃音と火花くらいしかとらえることが出来ない。


 「だらだらと戦うのも、興が無い」


 ヒロが勢いよく刀を叩きつけることでスコーピオンの体勢を崩すと、その瞬間に一瞬で尾を切り抜いた。わずかに遅れて六つに分割された尾がスコーピオンの支配を逃れて地面に落ちて、砂鉄へと変わった。


 スコーピオンが新たに詠唱開始。それは、初級上位の身体強化魔法。だが、詠唱が終わるよりも先にヒロがスコーピオンの両腕を斬り飛ばした。


 「……ッ! 流石は、金級冒険者ゴールドホルダー………!!」

 「俺を舐めすぎたな。これでも金の持ち主だぞ」


 スコーピオンの両腕がわずかに宙を舞って地面に落ちる。

 けれど、誰一人として悲鳴を上げるものはいない。良い意味でも、悪い意味でこの状況に慣れてしまっているのだ。

 

 スコーピオンは両腕を斬り飛ばされてから、諦めたように地に膝をついた。


 「やれやれ、中途半端にかかわるんじゃなかった」


 そう言った瞬間に、ヒロが口の中に布を入れた。

 大体、こういった奴らは奥歯に毒を仕込んでいていざって時はそれをかみ砕いて死んだりするのだ。


 「勝手に死ぬなよ。お前には聞きたいことが山ほどある」


 そう言ってヒロはスコーピオンを引きずって宿へと戻った。


 


 「だ、誰ですかっ!?」

 「アミを殺そうとした奴だ」

 「ひぇっ……」


 そんなやつを同じ部屋に連れてくるなという目でラウラに睨まれた。


 でも、外だと尋問出来ないから仕方なくない?


 ヒロはスコーピオンの傷口に無理やり治癒ポーションをかけることで腕を生やし、対魔素材で作られた手錠をかけておいた。これで一切の魔法を使うことが出来ない。


 「アミ、コイツのことを知っているか」

 「……っ、し、知ってる! 皇国のスパイだよっ!!」

 「へぇ、一体そんなスパイ様が一介の冒険者様に何の用だ?」

 「……そいつが、私に黒瀬君の特壱級痕機イクス・ラグアートを盗んでくるようにって言ったの。だから、私たち(・・)は一芝居うって、私が黒瀬君のパーティーに入ったんだよ」

 「私たち?」

 「……村上君も皇国の人間なの。私たちは、皇国の人間に脅されて…………」

 

 今にも泣きだしそうなアミにヒロは待ったをかけた。これ以上、彼女に喋らせるのは酷だろう。ここは、彼女をそんな目に合わせた本人に喋らせるということにしよう。

 ラウラにお願いして、アミを別室に移動させる。


 「んで、皇国おまえたちはどうやってこいつらの言うことを聞かせているんだ?」

 「そういうのは責任者に聞いてくれよ。僕は一つも知らな――痛い痛い痛いッ! 足の肉をゆっくりと削ぐのやめてっ!!」


 ヒロは短刀を使ってスコーピオンの足の肉を薄く生ハムのようにスライスした。

 リリィとナナが無感情にスコーピオンを見ている。


 「なら喋れ。俺は命は取らないけど、それ以外のものなら何でも持って行くぞ」

 「分かった喋るよっ!」


 もちろん、自決用の毒薬はヒロが既に取り上げている。

 スコーピオンがその恐怖に屈したのかどうかは知らないが、口を開いた。


 「才異の集団(ギフテッド)は二年くらい前から、この世界に突発的に出てきたよね。皇国はいち早く彼らを保護して、『隷属の魔刻』を埋め込んだ。僕らはどの国よりも早く、彼らの才能に気が付いていたんだ。だから、皇国は彼らを使って自国の軍備に回したのさ」

 「クズが……」


 リリィがそう漏らす。ヒロも同じ意見だった。

 

 『隷属の魔刻』とは、この世界の奴隷が刻み込まれる『呪い』の一つだ。特殊な痕機ラグアートによって、人体にそれを植え付けると、埋め込まれた側は主と認めた者から下される一切の命令に反発することが出来なくなる。

 いや、精神的には反発出来るのだがそうすると『魔刻』が体内の生命力を引っ掻き回すことによって、良くて廃人。悪ければ激しい痛みに襲われながら、死に至る。

 

 「……人間はかくも不思議な生き物でござる」


 吸血鬼ヴァンパイアは仲間に優しいのだろう。ナナの言葉には人間に対する恐怖がわずかに浮かび上がっていた。


 「……どうする、ヒロ君」

 「どうするも何も……」


 短い間だが、アミはヒロのパーティーの仲間だった。それに、かつては同じ教室で同じ授業を受けた仲間でもある。そんな仲間が自由意志を奪われているというのなら。


 「……アミに会いに行こう」

 

 リリィはその言葉にうなずくとヒロとともに立ち上がって、スコーピオンがいる部屋を後にする。


 「あぁ、そうそう。ナナ、ソイツの血を吸っても良いぞ。ただ殺すなよ、これからも使うんだから」

 「了解したでござる」


 目を煌めかせたナナがスコーピオンに近づく。


 ……完全に捕食者の目だ。


 「はっ!? 血吸うの? 君もしかして吸血鬼ヴァンパイア……!!??」


 後ろから悲鳴が聞こえてきたけど、まあ仕方ないだろう。殺さないだけ優しいと思ってほしい。


 「アミ、『魔刻』を見せてくれ」


 そういうと、アミの肩がビクリと震えた。


 「ひ、引かないでくれるなら……」

 「大丈夫だ。俺たちは仲間なんだろう? アミにとっては、皇国に言われて渋々入ったパーティーかも知れないけど俺にとっては立派な仲間だったんだ。だから、頼む」

 「……うん」


 アミは頷くと来ている服をゆっくりと脱ぎ始めた。

 

 ……あ、そっか。魔刻って身体に直接打ち込むもんね。


 そう思った瞬間、リリィによってヒロの目がふさがれた。


 「ひ、ヒロ君。こういうのは見るんじゃない!」

 

 …………。


 「……はい」

 

 アミがそう言って、背中を見せてきた。それをラウラ、リリィ、そしてヒロがみて絶句した。


 一体、どれだけ傷つけられたのだろう。背中にはいくつもの傷がアミの背中に覆っており、そして肩のあたりには薄黒い刻印がわずかに光を持って光っていた。


 「……これか」

 

 これが、今もなおアミを苦しめている元凶だ。

 

 ヒロ達が黙っていると、アミが泣き始めた。


 「いっ、いやだよお……。死にたくないよ……。助けてよっ、黒瀬君……」

 「勿論だ」


 ヒロはノータイムで言葉を吐いた。

 

 「行こう、皇国へ。アミを救うんだ」


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