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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第2章 冒険者なんてなるんじゃなかった

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第2-01話 冒険者、仲間を守る

激動の二章、開幕です!

応援よろしくお願いします!

 「犯人はこの中にいるって、何を言っているんだ。ヒロ君」

 「そ、そうですよ。黒瀬君、何か証拠があるんですか?」

 「ヒロ殿はちゃんと黒い箱(アイテムボックス)にいれてたでござる。無くなるならまだしも、盗んだと聞くと聞き捨てならんでござるな」

 「そうですよ、ご主人様。いたずらに他人を疑うのは良くないですよ。無くしたなら、また探せばいいではないですか」

 「……ふん、見ていろよ。ちゃんと証拠を見せてやる」


 そういってヒロが取り出したのは、アルミパウダー。銀色の粉を黒い箱(アイテムボックス)の上に振りかけて、羽で粉を落とす。これで、指紋が出てくるのだ。


 そう思って羽で払っていたのだが、何も出てこない。


 「……あれぇ?」

 「ご、ご主人様……」


 四人の視線が冷たくなる。


 「い、いや。これで出てくるはずなん……」


 その瞬間、ヒロの頭には光る物。

 ヒロの黒い箱(アイテムボックス)には、銀の印が映っているが、それが薄く引き伸ばされているのだ。


 「……分かった。犯人が分かった」

 「誰なんだ……その犯人は」


 呆れた顔でリリィが尋ねる。だが、ヒロはゆっくりと彼女・・を指してはっきりと口にした。


 「……アミ、お前だ」

 「……何を、言い出すかと思えば。一体何の証拠があるんですか…………」

 「指紋が、拭き取られている。いや、正確に言えば指紋が拭き取られた跡が残っているんだ。お前は、この世界の住人が指紋を知らないということを知らないのか……?」

 「な、何をいうのかと思ったら。黒瀬君、それはこの世界の人たちを馬鹿にしすぎですよ。ちゃんと、冒険者ギルドで指紋を取るじゃないですか」

 「馬鹿になどしてない。この世界の人間たちは指紋に頼るよりももっと確実で、もっと簡単に個人を判別できる方法を持っているんだ。アミ、あのギルドで機械に指を乗せるのはな、指紋を取るためじゃないんだよ。なぁ、リリィ」

 「……あぁ。指紋が何かは分からないが、あれは生命力――魔力の波紋を計測して、保管しているんだ。魔力の波に同じものは無いからな」

 「……そ、そんな」

 「別に、怒りはしない。どうして、盗んだのか教えてくれ」


 ヒロがそう、アミに尋ねた瞬間だった。


 「ふぇっ……やっ、やっぱり、無理だったよっ……ごめなさいっ、ごめんなさいっ……」


 そう言って、泣き始めた。

 

 ……えぇ。


 「アミさん、泣けば許されるということはないぞ」

 「そうでござるよ。特壱級痕機イクス・ラグアート、どこに置いたか白状するでござる」

 

 女は女に厳しいというか、ヒロはアミが泣き始めたから少しきょどってしまったのだが、三人は逆にアミを問い詰め始めた。同性だと、責めやすいのか?


 「ごべんなざいっ……ごべんなざいっ……殺さないでっ、許してッ……」


 殺すとは穏やかな表現ではない。


 「おいおい、俺たちがお前を殺すわけが……」

 「助けっ、助けて、黒瀬君!!」


 アミが泣きながらヒロに手を伸ばす。その瞬間、みるみる内にアミの頭が肥大化し始めた。

 ボコリ、ボコリ、といびつな形に変革していく。


 「やだ、やだやだやだやだぁ!! まだ死にたくないっ!」


 ヒロは瞬時に魔法を発動。生み出された黒い粒子が、部屋の周囲を埋めていき完全なる闇に包まれると遅れて宿に備え付けの灯りをヒロがつけた。瞬間、アミの肥大化した頭がまるでビデオの逆再生を見ているかのように元に戻っていく。


 「ふぇっ……?」


 まだ、自分が助かったということが理解できなアミをリリィに預ける。


 「ナナ、リリィ、戦闘準備だ! 俺は敵を追う、絶対アミを殺させるな」

 「了解した」「承ったでござる!」


 ヒロが粒子を操作して、窓に出口を作るとヒロはそこから飛び降りて再び粒子で塞ぐ。今のは間違いなく、呪詛魔法と呼ばれる類の魔法。遠く離れた場所から確実に命を奪うことが出来る魔法だ。だが、もちろんその分制限もつく。分類としては闇魔法に該当するためヒロも文献だけで知っているが先ほどの魔法は、対象を視界内に収めないと発動しない、闇属性中級上位魔法『人間の真価(ヒュルマ・イズム)』だ。あのまま放っておくと、頭が破裂して死んでいた。


 どこから覗かれているか分からないため、ヒロは粒子によって部屋を閉じた。この宿は、一応それなりの冒険者が泊まる宿だ。アナスタシアのような例外はともかくとして、敵対的な人間を泊まらせるような宿ではない。

 

 なら、当然犯人は外にいる。


 ヒロは肉体の25%を使って地面を蹴って宙へと浮かぶ。常人離れした視力が、怪しげな人間を捉えた。それは、ほぼ直感のようなものだった。夜だというのに、人通りが多い『境界都市』の中において、人込みの中に普通に溶け込むその男を見つけることが出来たのはほぼ奇跡と言っていいだろう。


 勘で、犯人が捕まるのかって?

 通常ならばあたらない。だが、金級冒険者・・・・・の勘は結構当たるのだ。


 ヒロは壁を蹴ってその男の前に着地する。周囲にいた人が空から降ってきた人間に驚いて道を開けた。全身を隠した男と、ヒロがぐるりと人を囲んで対峙する。

 

 「一体、どうしたんですか?」


 聞こえてきたのは、少し慌てた男の声。とても落ち着く、優しい声をしている。


 「困るな。俺の仲間・・にちょっかい出されるのは」

 「なんのことでしょう……?」

 「とぼけるなよ。呪いの残滓が臭ってくるんだ」

 「はてさて、僕には一体あなたが何を言っているのか。さっぱりですよ」

 

 瞬間、ヒロはとっさに顔を右に傾けた。それは、身体が勝手に動いたのだ。ヒロが瞬きをすると、先ほどまでヒロの頭があった場所に男が武器で突きを放っていた。男の手には鋭く光るピックが握られている。

 

 こいつ、俺が瞬きする瞬間(・・・・・・)に攻撃してきやがったッ!


 そのタイミングは、明らかに意図的なもの。人間である以上逃れられない生理現象の穴を埋める様な男の攻撃に、ヒロは少しだけたじろいだ。


 「今のを避けるとは、流石は金級冒険者ゴールドホルダー。そこらの冒険者とは違いますね」

 「ケッ、有名人は辛いねぇ。俺の情報がバレバレだ。名乗れよ、優男」


 ヒロは男を蹴り飛ばして短刀を抜いた。フードが零れ落ち、頭から犬の耳を生やした男がゆっくりとヒロに向きなおる。


 ……獣人か。


 「名乗る名なんて、もうないけどね。そうだな、手っ取り早く分かりやすい名前でいこう」


 男がわずかに魔法を使ったのが分かった。使った魔法は土属性中級下位の磁力魔法。男が身体からまき散らした砂鉄が男の真後ろに集まる。


 獣人は身体能力が人間よりもはるかに優れている亜人種だ。だから、使う魔法はそれらを活かした身体強化魔法。いわゆる補助魔法バフだ。そのため、ほとんどは光魔法を使うのだが……。


 男は四足歩行の体勢を取り、自分の後ろから生やした金属の尾を見せびらかすようにして構えた。

 

 「『スコーピオン』だ、よろしく」

 「仲間を殺そうとしたつけを、払ってもらうぞ」


 衆人が見守る中、互いの刃がぶつかった。

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