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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第1章 こんな世界でも生きてみたいと思ったんだ

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第1-15話 冒険者、吸血鬼を仲間にする

 網傘に、青色の風よけを羽織って腰には一本の長剣。網傘から流れる髪の毛は美しい金髪で、肌はまるで死人かと疑うまでに美しい白色だった。

 転がっている少女は、ヒロたちに気が付いたのか這うようにして近づいて口を開いた。


 「おっ、おお……そこにおられるのは【妖刀使い】とお見受けする。この私、ナナ・イムダスクリャートの一生の願いである、なにとぞ血を分けてもらえぬか……」

 「……お前、吸血鬼ヴァンパイアか」


 名乗り上げと、見た目からヒロはヴェリムのトラウマを思い出す。


 「いかにも、第四真祖の来孫らいそんが一人『血喰ちはみ』のナナでござる……」

 

 ……ござる?


 和洋折衷の良いとこどりをした欲張り少女は、どうやら吸血鬼ヴァンパイアみたいである。だが、悲しいかな。血を分けてくれと人間如きに頭を下げる吸血鬼ヴァンパイア、いかに最強種に数えられる真祖の血族に連なっていようとも、このありさまでは威厳もなにもあったものではない。


 「ヒロ君、どうする……。いまなられるぞ」


 ヒロと同じように、吸血鬼ヴァンパイアに殺されそうになったリリィが耳打ちする。


 「……まて、話を聞こう」


 ヒロの言葉に、後ろにいた三人の顔が驚愕にそまった。


 「正気ですか、黒瀬君!?」

 「ご主人様、相手は人間ではないのですよっ!」

 「……分かってる。分かっているけど、先に話を聞こう」


 仲間たちから非難轟々だが、ヒロは一応彼女の話を聞いておいたほうが良いのではないかと思ったのだ。それは何故だかは分からない。けれど、それは冒険者の勘であるような気がした。きっと、ヒロの中の冒険者としての勘が、彼女を殺すには惜しいと告げたのだ。

 

 「なぁ、ナナとやら。一体どうして、俺の部屋(こんなところ)で倒れてるんだ」

 「は、母上を助けたいのだ」

 「詳しく話せ」

 「少しだけ、長くなる。……事の発端は二年前だった。私たち、吸血鬼ヴァンパイアはこの世界とは少しだけズレた別の世界、異界に住んでいるのだがそこに四人の来訪者が現れた。奴らは、吸血鬼ヴァンパイアの中でも人間にあだなした者を狩っていった。それを見かねた第六真祖の玄孫やしゃご『血狼』のヴェリムどのが、討伐に向かわれたのだが奴らの不意打ちによって敗北し、我らの王が出向かれた。勝負は引き分け、王は長い眠りにつかれたが、その後人間たちが我らの住処に入ってきて吸血鬼ヴァンパイア狩りを行ったでござる。その狩りの途中、まだ幼かった私を守って母が人間に捕まったのだ。母は、契約奴隷となって今も貴族の私兵にされている。そんな母を助けるためには金が、金がいるのでござる」


 吸血鬼ヴァンパイアの少女は、力尽きながらもそういった。


 「それで、どうして俺のところにきた」


 ヒロの静かな問い。


 「……一流の冒険者である【妖刀使い】殿にしか、もう頼るあてがないのだ」


 そういって彼女は、少しだけ自嘲気味に笑った。

 ナナの言葉から、その言葉に込められた意味以上の物をヒロは受けとって、


 「リリィ、今の話どこまで本当だ」


 ヒロの言葉に、リリィが告げる。


 「……嘘は入っていない。全て、事実だ」

 「そうか。なら『血喰』のナナよ、契約だ。俺はこの街に眠っているとされる特壱級痕機イクス・ラグアートが欲しい。見つかるまで、俺のパーティーに入れ。そして俺を手伝え」

 「……承知したでござる」

 「その代わり、お前に血と金やろう」

 「……かたじけない」

 「黒瀬君!?」

 「ご主人様!!」


 ヒロの勝手な決定に二人が怒るが、大丈夫だ。吸血鬼ヴァンパイアは誇り高い種族。一度交わした契約は、こちらが反故するまで絶対に破らない。

 ヒロは自分の親指の腹を【絶刀】で薄く切りつけると、ナナの口元へと近づける。ナナは少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめると、その血をぺろりと舐めた。


 ぺろり。


 ペロペロ。


 「……ん、ちゅ……んっ………」


 ちゅぱちゅぱと音をたてて、大事そうにヒロの血をナナが舐める。

 後ろの三人の目が痛い。三人ともお前は何をさせているんだという顔で睨んでくる。


 ……何でだよ! 血を舐めさせてるだけじゃないか!!


 そして、しばらく血を舐めた後に、ナナは顔を赤らめたままヒロに礼をした。


 「……こんなところで、血を舐めさせるとは【妖刀使い】殿は中々大胆な御仁だな」

 「ヒロだ。よろしく」


 ヒロはがっちりとナナと握手をした。もう、親指の傷はふさがっていた。



 後でナナから聞いて、ヒロはひたすらに謝り通したのだが、吸血鬼ヴァンパイアにとって血を舐めるという行為はキスと同義なのだという。ヒロにしてみれば、てっきり食事だと思っていたのだが、吸血行為がそれに該当するのだという。同じ血を摂取するのに、牙でとるか舌で取るかで変わるというのだから、面倒な種族だとその時思った。


 「ところで、ナナはどこで寝るんだ?」

 「奇妙なことを聞くな、ヒロ殿は。ヒロの部屋(ここ)に決まっているでござる」



 ……ですよねぇ。


 いつの間にか、ヒロの部屋が五人が宿泊する大所帯となったのだ。




 「はい、定時報告定時報告こちら皆さまのアイドル、『スコーピオン』であります。好きなものはおっぱい、嫌いなものは野菜です。こちら、何も異常なし。報告終了でありまぁす」

 「ふざけるな、馬鹿者っ! 真面目にやれ!!」


 闇の中に潜むたった一つの人影。だが、聞こえる声は二つ。

 その陰の耳元には一つの機械がついていた。


 「真面目にって言ったって、特にめぼしいものはなし。双極絶死ツイン・アルカナムは帝国にいったらしいよ」

 「帝国での行動は入手できていないのか?」

 「流石の僕も黒曜馬にはちょーっと追いつけないかな」

 「…………」


 影の声に、向こう側も少しだけ考え込むようにして黙り込む。

 

 「接触コンタクトの方はどうなった?」

 「ばぁっちり。僕を誰だと思ってるの」

 「了解した。引き続き、奴らの警戒に当たってくれ……と言いたいのだがな、少し本国の方がきな臭いことになってきた」

 「戻ったほうが良いかい?」

 「いや、まだ何とかなるだろう。帰還タイミングは追ってこちらから連絡する。それまでは奴らを監視しておけ、それとな」

 「まだ、あるのかい?」

 「上官への口の利き方を改めない場合、減給だからな。以上」


 プツ、と機械からの声が聞こえなくなる。


 影は一度、肩をすくめると次の瞬間にはもう姿も残さず消えていた。

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