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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
序章 強くなければ意味はない
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第03話 来訪者、魔物に捕まる

 ゴブリンを倒して手に入った魔石を売って得たお金は速攻本登録に支払った。これで、身分証を失う危険は無くなったわけだ。

 一安心。だが、まだ問題がある。


 武器がいる。今回はたまたまゴブリンが武器を持っていたから倒せたが、これから先全ての魔物が武器を持っているわけじゃない。それに魔法のこともある。ゴブリンを倒してからずっと気怠さに襲われている。


 今日は正直言って何もしたくない。これが魔力を使うということなのだろうか。発動したタイミングもきっかけもよく分からない。もう、宿に帰ってそのまま眠りこけてしまいたい。


 そう思ってギルドを後にしようとした瞬間に声をかけられた。


 「ねえ、君。少しの間時間あるかい?」


 金髪碧眼、全身を甲冑で包み込んだ騎士のような見た目をした少年だ。

 イケメンであるその顔には人の好さそうな笑顔が浮かんでいる。

 でも、そんなイケメンが一体なんの用だというのか。


 「誰?」

 「君、ソロで冒険者をやっているんだよね。もしよかったら僕とパーティーを組まないか?」

 

 ああ、そういう……。


 「悪いけど、他を当たってくれ」


 なんで一人でも生きていける異世界に来てまで誰かとつるまなきゃいけないんだ。俺はクラスにいたいつもつるんでいるような奴らとは違う。俺は、一人でも生きていける。誰かと一緒にいなきゃいけないほど心は弱くない。

 

 「そうか。それは残念だ。また縁があればどこかで会おう」


 ヒロの言葉に嫌な顔一つせずに別れを告げるとその少年はギルドの中に入っていった。見たところ良いところのお坊ちゃんだろうか。やれやれ、一人で生きていけない人間は大変だな。


 ヒロはわき目もふらずに足早に宿に帰ると、窓から差し込む赤の光から伸びる自分の影を見つめる。

 あの時、ゴブリンを倒したとき確かに自分の影は伸びていた。あれが闇魔法だというのなら。


 「伸びろ」


 そう呟くが何も起きない。影はいつものように自分の足元に佇んでこちらを見つめていた。

 

 「寝よう」


 ヒロはゴブリンから奪った錆びた短剣を部屋の地面に置くとひと眠りについた。


 その日の夜は最悪の夢を見た。

 言いようのない不形態のどす黒い化け物に全身を覆われてバラバラに引きちぎられる夢だ。夜中に何度飛び起きても同じ夢を見た。夢だと分かっていても何もできずにただ、ただ千切られる。

 おかげで早朝から目が覚めて、眠れないから身体を動かそうと森へと入った。


 朝、街から出るときに夜行性の冒険者たちに出会った。

 夜に活動する魔物は昼に活動するものよりも臆病で、狡猾で、そして強い。夜は魔物の時間だからだ。そんな中、そういった魔物を狙って狩りを行う冒険者たちがいる。彼らは命の危機を冒す代わりに昼に稼ぐ冒険者よりもはるかに稼ぎが高い。


 昼を活動時間にしていながら、ひいひい言っているヒロには無関係の世界だ。

 見てろよ、闇魔法を身に着けた暁には……。


 そういって冒険者たちをにらみつけるが当の本人たちは暢気に鼻歌でも歌いながら街へと入っていった。


 ヒロはいつものように森に入るといつものように薬草採取を始めた。それはこの世界にやってきて幾度も繰り返してきたルーティンワーク。


 「最近、薬草減ってきたな」


 

 それも当然だろう。この森はヒロ以外の初心者の冒険者がよく入る森だ。もちろん薬草を取るのもヒロだけではない。同じとこばかりから薬草を取っていたら無くなるのは当然のことだろう。


 「奥に入るかぁ……」


 あまり気乗りはしないが、贅沢を言っていられる立場ではないことくらいヒロに分かっていた。森の奥に入れば入るほど、人の手から森が離れれば離れるほど、魔物の数は増えていく。

 だが、ヒロが今いる場所は森の中でもかなり浅い場所だ。一方で危ない魔物が出てくるのはもっと深い場所。少しくらいなら大丈夫だろう。

 それに、いつかは通らなければならない道だ。


 「行くか」


 自分に活を入れ森の奥へと入る。

 進むにつれて次第に日の光が入らなくなっていく。なるほど確かに、鬱蒼とし始めている。

 注意深く足元を見ながら進んでいると、生えているではないか。そこらかしこにファルテ草が。


 「おお、こんなに一杯」


 こんな奥にまで初心者は入ってこない。かといって中級者はこんなところで薬草採取なんて儲からないことはしない。そこは絶好の穴場だった。

 ヒロは誰にもとられることなく、良く育ったファルテ草を根っこから引きちぎるとポーチに詰めていく。

これは結構稼げるぞ。ファルテ草はその長さが長いほど高値で売れる。ここら一帯のものは下手すれば一本50イルとかで売れるかもしれない。一気に生活が楽になるぞ!


そうして一心不乱に採取していた。ふと、手を止める。天を仰ぐと既に日が高く上っていた。もう昼時か、そろそろ昼飯にするか。そう思ってポーチから携帯食料を出そうとした瞬間だった。


……ん? 身体が思うように動かない。


朝から今まで水を一杯も飲んでいないから脱水症状が起きたのかもしれない。そう思って水筒に手を伸ばすがその手は途中で止まる。


「あ……れ…………?」


 ふらり、とそのまま地面に倒れた。もちろん倒れないように地面に対して手を差し出したが、いうことを聞かずにそのままの体勢で地面に倒れる。

 

何が起きているんだ!?

 

 地面に横たわったままのヒロの身体が何者かによって持ち上げられる。必死に眼球だけ動かすと目に入ったのはヒロと同じほどの大きさをした巨大な蜂。

 

 「ヒッ……」


 声にならない悲鳴がヒロの口から洩れる。知らない、こんな魔物は知らない。

 今まで見たことも聞いたことも無い。


 そんな巨大な蜂にヒロの身体はつかみ上げられて器用に森の木々を避けながら奥へと連れていかれる。


 十分、いや二十分ほど移動したころだろうか。それなりの大きさの洞口に入ると、ヒロはその中の一室、ちょうど一人部屋ほどの空間に下ろされると蜂はどこかへと行ってしまった。


 一体、どうなるってんだよ!!


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