第1-04話 冒険者、ハーレムになる
「私を黒瀬君のパーティーに入れてください!」
と、そう言って頭を下げるアミをヒロが見つめる。
「……何で?」
「だって、お礼っていっても私お金持ってないから払えないし、他に何も思いつかないからせめて最前線に潜るまでのサポートくらいしかできないと思って……」
「いや、申し出はありがたいんだけど……」
現実のパーティーはゲームと違ってほいほい変えれるようなものじゃない。
パーティーメンバーは家族のように大切な仲間であって、自分が出来ないことを変わりにやってくれる、足りないところを補えるような仲なのだ。だから、パーティーとして完成するにはそれこそ一朝一夕では時間が足りない。ヒロとリリィのコンビですらも、未だ完璧なコンビだとは言えないのである。
そんな中で、アミをパーティーメンバーに加えるわけにもいかない。
「で、でも。黒瀬君のパーティーって、補助魔法使いがいないじゃない!」
「いや、リリィは補助魔法も使えるんだ……」
初級上位までだけどね、とは言わなかった。
「え……。えぇ!? 教会戦闘装束を着てるのに!!?」
いや、教会戦闘装束は教会の名を冠してるんだから補助魔法も使えるだろうよ。
「そ、そんな……。私に出来ることは中級上位の補助魔法と治癒魔法を使うことだけなのに……」
これ見よがしにアミがつぶやく。
いや、お前中級上位魔法使えるんかーい。
こうなると話は別だ。中級上位と初級上位の性能差は天と地、月とすっぽん、雲泥の差だ。初級上位魔法がチュートリアル終了時に使える最強魔法だとするなら、中級上位はゲーム終盤で使える最強の魔法くらいの性能差をもっている。上級上位はラスボスが使ってくる魔法とでも思っておけばいい。特級魔法? あれは別ゲー。
ともかく、中級上位の魔法を使えるとなると彼女はいろんなパーティーに引っ張りだこ。ヒロとリリィのように、攻撃魔法しか使えない脳筋パーティーには是非とも欲しい存在なのだ。
しかし、先ほどリリィの顔を立てたばかりだから、なんとも言い難い。
「でも、でも黒瀬君以外のパーティーだといつ村上君が襲ってくるかわかんないじゃないですか!」
「……ん、まあ、確かに」
村上とは少ししか話してはいないが、それでも言葉尻からあふれ出る自信や慢心というものをヒロはヒシヒシと感じた。生半可なパーティーではすぐに襲ってくるだろう。だって、自分が銀級なのに金級の冒険者に襲い掛かるような奴だし。
「どうする、リリィ」
「ヒロ君の好きにしたらいい。このパーティーのリーダーは君だからな」
「ん、じゃあ手伝ってもらおう。中級上位の治癒魔法が使えるなら安心だし」
一応、治せる怪我にも限度というものがあり、その限度によって治癒魔法はランク付けされている。例えばヒロがキラービーの幼虫に腹の中を食い破られた後、カオリによって使われた魔法のランクは中級中位。食い破られた内蔵と、切られた背中の修復が可能なのが中級中位の治癒魔法だ。つまり、アミが使える治癒魔法はそれより上の回復性能。
多分、上半身と下半身が千切れても治すことが出来るだろう。恐ろしいからやりたくないが。
一応、かなり考えて誘ったのだが、
「そうか、君がいうなら反対はしないが……」
と、少しだけリリィには悲しそうな顔をされた。いや、この顔は怒ってる顔か?
……何で?
「あ、ありがとう!!」
対照的にアミはヒロに抱き着いてきた。でかーい、説明不要ッ!!
「君はヒロから離れるんだ。すぐにでもそこの男が起きるかも知れないから、すぐに移動するぞ」
「はいっ! あ、私のことはアミって呼んでください!」
と、元気な声を上げてアミが仲間に加わった。
リリィの言う通り、村上たちがいつ起きるかも分からないのでヒロは足早に第六階層の階層主を倒して第七階層へと下った。第七階層も今までと変わらない迷路だらけの薄暗い階層だった。
……気が滅入るな。
ここに来るまで約三時間。その間、ずっと人工の光しか見ていない。たがが日の光と侮るなかれ。太陽光はうつ病に大きく関係している『セロトニン』を分泌させる。これはうつ病だけではなく、感情を穏やかな気分にする効果を持っているのだ。
「ガルトンドの地下迷宮が懐かしいぜ……」
「あそこは階層にもよるがこんなに長時間太陽の光を浴びないということは無かったからな。こうも暗いと気が滅入る」
「そうですよねー。『空間開放型』の地下迷宮って結構珍しいですもんね」
しかも、道が迷路上になっているからストレスの溜まることこの上ない。
確かに、どちらの言い分にも一理ある気がする。だから、
「どうしてこうなった?」
ヒロがいつも取っている宿屋は銀級以上を相手にした高級宿屋だ。銀級以上の冒険者になると、使っている武器や防具の一つだけで家一つ建てられるほどの値段をするものが少なくない。だから、そういった冒険者を相手にする宿屋は必然的に防犯に力が入ることになる。
ヒロが今回使っている宿屋は『参級痕機』の『開かずの扉』が使われている宿屋だった。この宿は一度、宿側で宿泊する冒険者の冒険者証を部屋に登録する。すると、冒険者証がカードキーとなって扉を開けることが出来るという代物だ。無論、設備はそれだけではない。内装は決して派手ではないが、最低限度の物で一流の品を揃えてある宿なのだ。無論、値段とて安くはない。一泊一万イルはする。だからこそ。だからこそ、この状況が納得いかなかった。
ヒロは今、ベッドの上に腰かけている。キングサイズの巨大なベッドだ。その右にはリリィ。まあ、これは別にいいだろう。基本的に同じ部屋で二人が寝泊まりすることは無いが、互いの部屋でミーティングをすることはあるので、別に珍しいことではない。問題なのはヒロの左側だ。そこにはアミが座り込んでニコニコしながら足を振っている。
今回借りたのは一部屋。そう、三人で一部屋だ。だからヒロはもう一度この現状を見渡して、声を漏らした。
「……どうして、こうなった?」




