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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第1章 こんな世界でも生きてみたいと思ったんだ

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第1-03話 冒険者、ストーカーを撃退す

 「え、黒瀬君覚えてない? 城ヶ崎だよ! 城ヶ崎アミ!」

 「いや、覚えてるけど……」


 こんな顔だったっけ……?


 かつての級友たちとはもう二年間誰とも出会っていない。ヒロは最初、自分のクラスメイトは皆アレアの街の近くに召喚されているものとばかり思っていたが、どうにもそういうわけではないらしく、世界中のいたるところに生まれ直されていたらしい。


 才異の集団(ギフテッド)という言葉がある。

 これは二年前から同時多発的に世界に発生した黒髪黒目の若者を指す言葉だ。このころにどこからともなくやってきた彼らは皆どこかしらに大いなる才能を秘め、冒険者や軍に入ることによって人類に大きな貢献を果たしている。

 

 故に、黒髪黒目は排斥されるのだ。当然だろう、世界に突然発生した(・・・・・・)者たちが自分たちを超える才能を持って現れるのだ。これを嫉妬しない訳がない。そして、これを恐怖に思わない訳が無いのだ。


 「思い出話に花を咲かせるのも良いが、アミさん。君はヒロ君に頼むことがあるんじゃないのか?」

 「あ、そうでした! 私、村上君に襲われてるんですよ!」

 「村上……?」


 誰だっけ……?


 「あ、そ、その顔は覚えてない顔ですね。ほら! 教室の端っこの方で眼鏡かけてる人達とカードゲームやっていた」

 「……?」


 俺はカードゲームをやる友達もいなかったんだが?

 

 一応ヒロは頭の中で記憶をたどるが、村上と呼ばれた男に該当する人間は出てこなかった。記憶にないということはクラスの中心的人物ではなかったということだろうか?


 と、考えているとアミが出てきた曲がり角から三人の男が出てきた。全員の胸には銀の冒険者証ドックタグ。一人は黒髪黒目。残りの二人は明らかに日本人の顔つきではないため、無視。


 「城ヶ崎さん。どうして僕から逃げるんですかぁ!」


 みるからにヒョロヒョロの青年がそう叫ぶ。その背中には一本の長剣。触媒は持っていない。


 ということは剣士なのか……? それにしては筋肉が足りないぞ。


 「だ、だって。村上君すぐ追いかけてくるんだもん!」

 「まあ、俺はあまり話を聞いてないからあれだけど、村上。お前、ストーカーしてんのか」

 「君は……黒瀬か? 懐かしいな!」


 すまん、村上。俺はお前のこと覚えてないんだ……。


 「違うよ、黒瀬。俺は城ヶ崎さんのことをストーカーしてるわけじゃないんだ。ただ、この街で久しぶりに同級生にあったから、いろいろ話したくて!」

 「ち、違いますよ黒瀬君。あの人、前の前の街からずっと私を追いかけてくるんですよ! あの男三人組で! 人口が多いこの街に入れば撒けるかもと思って危険を犯して地下迷宮ダンジョンまで入ってきたのに、その後ろを追いかけてきて」

 「だって、城ヶ崎さんは光属性の才能を取ったんだろ? 補助魔法バフ使い一人で地下迷宮ダンジョンに潜るなんて自殺行為だから、魔物から守ろうと思って……」

 「あなたが追いかけて来なければ、地下迷宮ダンジョンになんて潜らなかったんですよ!!」

 

 うお、城ヶ崎がキレた。

 

 「もう! 黒瀬君!! アイツらをぶっ飛ばしてやって下さい!」

 「えぇ……。俺?」

 

 どっちが正しいのかよく分からないまま、ぶっ飛ばせなんて言われても。

 

 「……もう、ストーカーされるのはこりごりなんですよ」


 ポツリと城ヶ崎がつぶやいた。ヒロの耳がそれに反応する。今の言葉に、嘘はない。

 城ケ崎は、日本にいたころはぱっとしない女の子だった。だが、どうしたことか。こちらに来てから、可愛い系の美人に成長しているではないか。成長期というものは何とも偉大な物だと認識できるが、その美しい顔にはそれに応じた対価を支払わなければいけないらしい。


 「まあ、そういう訳だから覚悟しろよ。村上」

 「そんな……黒瀬までそっちにつくのか」

 

 少しだけ、悲しそうに村上は顔をうつむけるとクツクツと笑い始めた。


 「まあ、仕方ない。馬鹿が二人に増えただけだ。おい、るぞ」

 「へい、兄貴」


 村上の側にいた二人の男がそれぞれ斧と槍を構える。


 ……ん? 剣と斧と槍の三人パーティー?

 前衛ばかりだな……。


 前衛ばかりというパーティーはそうあるものではない。ヒロもこれで見るのは三回目ほどだ。今まで見てきた近接偏重パーティーは、光属性魔法の補助魔法バフ使いを入れることによって、様々な状況下に対応しているものなのだ。


 「村上君がパーティーに入れってしつこいんですよ!」

 「……あぁ」


 その瞬間、ヒロは全てを理解した。何故、城ヶ崎が村上に執拗に追いかけられたのか。

 何故、彼らが三人の近接パーティーなのか。


 「『放て』」


 こちらに接近する三人を見つめながら、詠唱。ヒロの後ろに発動された三つの純黒の球が三人めがけて発射される。当たれば木の幹すら貫通する球は、斧と槍を巻き込んで二人に直撃する。一瞬にして、二人は昏倒。地下迷宮ダンジョンの地面とキスする。

 

 だが、だが村上は違った。村上はあろうことか、剣の切っ先に魔法をひっかけると(・・・・・・)、後ろに流した。


 「へぇっ!?」


 アミが素っ頓狂な声を上げた。ヒロも上げるところだった。

 えぇ……何今の!?

 

 「今のを見るに黒瀬は闇魔法をとったのか。まあ、なんにしても僕の剣術の前では無力だけどね」

 

 け、剣術……。今のが、剣術。

 村上は見たところ剣の才能を取ったみたいだが、剣の才能というのは鍛えれば魔法を流せるようになるのか。


 ……え、何その無茶苦茶チートは。一番のあたりじゃないのか。それは。

 少なくとも、選んだ人間によって当たり外れが出る闇魔法なんぞよりも、よっぽど強くなれる才能じゃないか。


 「死ねぇぇぇええええええええええっ!!!!」


 と、剣を構えて突撃してくる村上を見ながらヒロは一つため息をついた。


 「『放て』」

 「その魔法は通じないって分かんないの――――ぶへぇっ!」


 村上に向かって、ヒロが真正面に生成した球を村上はいとも容易く受け流したが、真上に作った球には気が付かなかった様で、見事に脳天に直撃すると気絶した。


……まあ、威力はとんでもないけど向こうも殺そうとしてきたからこれで御相子ということで。


「これで、良かった? 城ヶ崎さ……」


皆まで言わないうちに、


「ありがとう、黒瀬君っ!」


城ヶ崎が抱き着いてきた。ふんわりと女の子らしい匂いがヒロの鼻に届く。

リリィとは違う匂いに少しヒロのテンションが上がる。


あ、意外とおっぱい大きい。


ヒロが思わぬ幸福に身を包んでいると、非常に冷たい目でリリィから見られた。


ゆ、許して……。


 リリィに嫌われないうちにヒロは一端城ケ崎を離す。


 「ほんとにありがとね、黒瀬君」

 「いや、気にしないで。じゃあ、またどこかで」

 

 そう言って離れようとした瞬間に、後ろから全力で引っ張られた。


 「待って待って待ってください!」

 「何々、なんなの……」


 一応、ヒロたちは地下迷宮ダンジョンの最前線に潜らなければいけないため、こんなところで使える時間は限られているのだが。


 「私を黒瀬君のパーティーに入れてください!」


 …………はい?


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