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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
第1章 こんな世界でも生きてみたいと思ったんだ

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第1-02話 冒険者、目立つ

 「あれか? 双極絶死ツイン・アルカナムってのは」

 

 暗闇に一人、地下迷宮ダンジョンの入り口に立っているヒロとリリィを眺める影があった。


 「そうだ。第二級要注意人物達だ。気をつけろよ」


 影は一つというのに、会話が響く。影の耳元には一つの機械。


 「そんなやつらに皇国の未来がかかっていると思うと頭が痛いね」

 「だが、やつら以外に特壱級痕機イクス・ラグアートは持って帰れまい。特にこの、『レルトの地下迷宮』なら尚更だ」

 「まあ、こちらも対象に接触コンタクトしてみるよ。一応、彼の素性も調べてある」

 「やれやれ、アイツらが来なければ平和なままで終わったものを」

 「冷戦状態は平和とは言わないよ」

 「…………」

 「はい、じゃあ臨時報告を終わるよ。接触コンタクトはこちらのタイミングに任せてほしい」

 「ああ、信じているぞ。『スコーピオン』」


 ガチャリ、という音が響いて会話が止まる。『スコーピオン』と呼ばれた影は耳元の機械を外して、楽しそうに笑った。


 「さて、さてさて。街に動乱を巻き込んだお二人さん。君らに世界の命運は任された。僕らの仕事は見守るだけ」


 次の瞬間には、そこにはもう何もいなかった。



 「…………ん?」

 「どうした? 振り返って」

 「いや……。視線を感じたんだけど、気のせいみたいだ」

 「そうか。まあ、気を付けよう。私たちは目立つ。どこかで恨みを買っていてもおかしくはない」

 「そうだな」


 二人は冒険者ギルドでそろえた攻略一式を数えると、頷いて『レルトの地下迷宮』の入り口へと歩き始めた。

 

 『レルトの地下迷宮』は、他の地下迷宮ダンジョンとは一線を画す特殊な地下迷宮ダンジョンだ。

特殊な条件はいろいろあるが、一つは街の地下に広がっているということ。街の地下三十メートルより下には巨大な地下迷宮ダンジョンが広がっている。

二つ目は、一階層から、五階層まで、完全に魔物が枯れているということだ。そんな地下迷宮ダンジョンは世界の中でも『レルトの地下迷宮』しかないらしい。だから、一階層から五階層までは観光地のようになっているのだという。

 冒険者のように自らを守る術を持たないものは、地下迷宮ダンジョンに入れない。けれど、『レルトの地下迷宮』は別だ。だから、地下迷宮ダンジョンを一目見たがっている観光客が押し寄せてくる。

 三つ目は、その難易度だ。『レルトの地下迷宮』の地下迷宮は有史以前より存在していると言われている世界最古の地下迷宮ダンジョンの一つだ。だが、この迷宮は未だ攻略されていない。現在の最大深度は第78階層。この地下迷宮ダンジョンは人類の歴史とともにあったのだ。

 

 そんな、最難関迷宮の一つに数えられている迷宮に今まで関わった迷宮全てを攻略してきた二人がやってきたのだ。冒険者ギルドを含め、道中でも大騒ぎになった。


 「つ、双極絶死ツイン・アルカナムだっ!」

 「すげー! あれ、本物かよ」

 「レルトに来てるっていう噂は本当だったのかよ!」


 一階層を歩くだけで、周囲から声がかかる。

 ちなみに一階層は迷宮内に屋台が軒を連ねており、縁日のような有様だった。


 こんなんが地下迷宮ダンジョンで良いのか?

 

 と、思わないことも無いが。


 「目立つな、私たちは」

 「……そうだな」


 リリィは教会戦闘装束バトル・ドレスの中に格納された豊満な胸をむしろ張るようにして歩く。結構有名になるのも苦でないタイプのようだ。

 だが、ヒロとしては結構つらい。何しろ、今までの人生の17年間まったくもって人前に出た事のない人生だ。ここ一年程で、急にヒロの知名度が上がったため生活に困難をきたしているくらいである。

 

 ……放っておいてくれよ。


 と、言っても彼らは聞きもしないだろうが。

 

 二人はさっさと、一から五階層を駆け抜けていく。二人が歩く間、周りから声が上がる。リリィは楽しそうだが、ヒロにとっては結構つらいものがある。足早に駆け抜けて、第六階層に到着する。


 入ると、今までと全く変わらないレンガの壁。迷路のように入り組んだ階層が待っていた。ここは『空間閉塞型』。ガルトンドのように、階層ごとに新しい風景が見れるということは無い。ただ、下に下に続いていくだけだ。


 「こっちの方が落ち着くわ」

 「ヒロ君、君は本当にそういうところを直したほうが良いぞ。私たちはこれ以上、どうやっても知名度は下がらないんだから」

 「そうかなぁ……」


 二人は喋りながら、迷宮の中を歩いていく。変わり映えしないレンガの壁だが、冒険者ギルドで買った情報本とそれに書かれている地図があれば最短距離で第七階層まで向かっていける。


 一応、この壁もレンガに見えるが立派な『痕機ラグアート』の一種で、絶対に傷つかない壁として機能している。何年たとうと、この壁が自然に壊れることはないのだ。

 

 「ヒロ君、分かっているとは思うけど」

 「……ああ」

 「残り一年だよ」


 この二年、彼らはたった一つの目的のもと動いていた。

 それは死者の蘇生(神の奇跡)だ。二年前に失ったあの二人を生き返らせる。ただ、そのためだけに攻略されていない迷宮に潜り『痕機ラグアート』を探し求めたのだ。

 

最初に、それを言い出したのはヒロだった。自分のせいで、ロザリアとガウェインは死んでしまった。そんな彼らをどうか生き返らせたいのだと。

それをリリィは受け入れた。ヒロがやりたいならば、自分は付いていく。ただそのサポートをするだけだ。だが、死者を生き返らせるなど並大抵のことでは達成できない。それを成し遂げるには、やはり『痕機ラグアート』その中でも最上の物がいる。

 それを聞いたヒロは、制限を設けることにした。リリィの申し出はとてもありがたかったが、彼女の人生を自分が無制限に拘束していい理由にはならないためだ。だから、ヒロは三年間だけという契約を設けた。三年間だけ、力を貸してくれと。

 迷宮攻略、それ自体に非常に時間がかかる上に特壱級痕機イクス・ラグアートを見つけようとなれば、その時間は膨れ上がる。三年間で、目的とする特壱級痕機イクス・ラグアートを見つけようとするのが間違いなのだ。


 「ヒロ君」

 「ああ、気づいてるよ」


 二人の耳に届いているのはこちらに走り寄ってくる足音。それもとにかく焦っているような、それ。

 ヒロ達はとりあえず、その場でいったん止まると足音の主に会うことにした。一分も待たないうちに、足音はすぐに聞こえる様になり曲がり角から黒髪黒目の少女が飛び出してきた。


 「た、助けてください!」

 「どうしたんだい?」


 リリィが少女に向かって話かける。


 「ぼ、冒険者に追われてるんです! すぐ、後ろに迫ってるんです。助けてください! って、黒瀬君!?」

 「え、誰……?」


 二年ぶりに呼ばれたその名前に困惑しつつ、青年は首を傾げた。

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