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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
序章 強くなければ意味はない

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第21話 来訪者、絶望と対敵す

翌日、ギルドには70人近い冒険者が集まっていた。


 「おー、なんかすげえな」

 「18組のパーティーが集まっているらしいわ」

 「18ってことは72人か」

 「この街に70人も冒険者がいた事に驚きよ」

 「いや、馬鹿にしすぎでしょ……」


 流石に田舎とは言っても、300人くらいは冒険者はいるだろう。

 

 今回のオークの巣の壊滅は依頼主がギルドという非常に稀なクエストだ。故に、報酬は確実。金に困る冒険者たちがこのクエストを受けるのだろう。


 「黒瀬か、お前もこのクエスト受けたのか」

 「藤堂か……。銀の冒険者証ドックタグを手に入れたのか」

 「ああ、お前も銅になったみたいだな」


 久しぶりに出会った藤堂たちは皆、銀の冒険者証ドックタグをつけていた。


 「ヒロ君、この方は?」

 「昔の知り合いだよ」

 「へえ、お前パーティーに入れたのか。良かったな」

 「ああ、お前らのおかげだよ」

 「今度飯おごれよ」


 藤堂を呼んだ彼のパーティーのところに、藤堂は戻っていった。


 ああ、そういえばまだ飯奢ってないや。


 ヒロもガウェインが待っている入り口へと向かう。

 今回は人数が人数なので、パーティーリーダーだけが作戦説明を受けたのだ。


 「僕たちの役割は森のなかで逃げるオークを減らすかかりだよ」

 「無難な位置に配置されたな」


 移動しながらヒロは応える。

 どんな人間がこのクエストを受けるのかと思って先ほどから見回していたが、九割が銅の冒険者。そして一組の銀級冒険者を除くとあとは木の冒険者たちだった。

 今回のクエストを経て銅へと上がろうとしているのだろう。かなり意気込んでいたのが微笑ましい。

 

 ガウェインに渡された地図を見ながら、門から出て森へと向かう。

 森に入るのも久しぶりで、とても懐かしい気分になる。

 しばらく歩いて、目印の巨木を前にして止まった。道中で二体のオークに出会ったが、ヒロの初級魔法で頭を吹き飛ばされて魔石となった。いつの間にか、ヒロは初級魔法でオークを倒せるまでになっていたらしい。

 ガルトンドで毎日のように魔法を使っていたのは間違いではなかったみたいだ。

 

「ここか」

「気楽にやろうぜ」

「そうだな」

 

 確かに、森の中はどう歩いてもオークに出会ってしまう。オークはD級の魔物で駆け出し冒険者では手も足も出ないだろう。巣が出来たとは言え、こんなに増殖しているとはおもってもみなかった。


 「魔物の巣ってのは良くできるもんなのか?」

 「いや……。普通は巣っていうほど大きくならないよ。冒険者が狩るからね。でも今回はちょっと異例だね。一応この街には銅級の冒険者は少なくないし、ここら一帯で狩る魔物なんてオークくらいしかいないだろうから」

 「なんか原因があると思うか?」

 「オークっていうのは結構繁殖力が高いんだ。それこそ、人型の相手なら何でも孕ませられるほどに」

 「へぇ……」


 オークの精力が強いのはこの世界でも変わらないことらしい。

 

 「だから、どこかから人を攫ったりゴブリンとかを孕ませたりしてるのかもね」

 「ご、ゴブリンを……」


 すげえや。オーク。


 今回は複数のパーティーが協力して行うクエストのため、作戦開始の狼煙が上がるまではその場で待機となる。することも無いので、三十分ほど待っていたが、その間に三体のオークと出会った。

 明らかに、オークとエンカウントする率が跳ね上がっている。たしかに、これは巣を潰さなければ駆け出し冒険者など、ろくに森に入ることも出来ないだろうし、ファルテ草の採取のような簡単な依頼も達成できないだろう。


 「あれ、黒瀬っち?」

 「こんなとこでどうしたんだ?」


 木のふもとで座っていたら、藤堂たちのパーティーと出会った。


 「うちらはこれからオークの巣穴に行くんだよ」

 「ああ、お前らが突撃かかりなのか」

 「他にも六組のパーティーがいるんだけどね」


 へえ、七組のパーティーで巣穴に飛び込むのか。どれだけ本気なんだよ、ギルドは。

 たかがオークである。まあ、巣穴に何体いるかは分からないし、用心に用心を重ねているとは思うのだが。

そんな話をしていると、藤堂たちの後ろからがやがやと十人くらいが現れた。彼らが一緒に突撃するのだろう。頑張ってほしいものだ。

 

 そんな、時だった。ふっ、と森の奥からソイツは現れた。


「あれってオークかな?」


 奥から出てきたうちの一人がそういった。 

 彼女が指さしたほうを見ると、二百メートルほど離れた場所をソイツが歩いていた。

 ヒロ達も立ち上がって、ソイツをよく見た。

 

 体長は三メートルほど。明らかに他のオークよりも体格が良い。肌の色は緑を含んだ黒色。右手には石から削りだしたような巨大な石塊。自らの身長と同じくらいの石塊をいともたやすく持ちながら歩いている。

 ソイツが吐いた息は水蒸気量が多いのか、それとも体温が高温なのか冬でもないというのに真白くそまる。


 「俺が行くぜ。一番槍突撃―!」

 「馬鹿、一人で先行すんなよ」


 藤堂と、藤村の二人が軽口を叩きながらそのオークめがけて走っていた。その後ろを魔法使いコンビが追いかける。


 ほかの冒険者たちもゆっくりとそのオークへと近づいていった。


 そして、藤村が爆ぜた。

 

 「……は?」


 爆発したのではない。一瞬にして、破裂した水風船のように血をまき散らしたのだ。

 それを追いかけていた藤堂がもつれる様にして前に倒れる。見ると、首から上が無くなっていた。

 先ほどの黒いオークの姿が無い。ヒロは周囲を警戒しながら、見回すと――いた。


 木にしがみつくようにして藤堂の顔を咥えている。その顔には、藤村を茶化すような笑み。まさか、今自分が死んだなどと気が付いてはいないようだ。


 「何が、起きたの……」

 「戦闘準備ッ!」


 ガウェインが対敵しながら、叫ぶ。その瞬間にその場にいた冒険者たちが全て武器を抜いてソイツを見た。

 ヒロはその瞬間、初めてそのオークをちゃんとみた。べったりと張り付いているのは、人の苦悶に歪む顔。

 

 「何だアイツッ!」

 「偽人種フェイムだ。しかもただの偽人種フェイムじゃない。あの体格、あの肌の色。間違いなく、エンペラーオークだよ」

 「……そんなことが、ありえるのか」

 「天文学的確率だろうさ、クソ……こんなの聞いてないよ」


 ガウェインが苦しそうに言う。

 上位種ネルガット。それは群で動く魔物にごくごくわずかな確率で生まれる、上位種。生まれながらにして同族を統率する才を与えられた物。

 無論、ヒロとてガルトンドで情報に目を通している。

 オークを率いるハイオークが生まれる確率が1/30。強さは普通のオークの30倍。

 その中でもトップにたつキングオークが生まれるのがハイオークの中でも1/100。強さは普通のオークの3000倍。

 そのキングオークを統率する支配者こそがエンペラーオーク。生まれる確率はキングオークが生まれる確率の1/400。なら、強さは?


 そして、問題なのが偽人種フェイムと呼ばれる突然変異種だ。普通の魔物の中の一万千分の一という確率で生まれるそれは、人の顔を持って生まれ人と同じレベルの知力を有するという。


 普通のオークの百二十万倍強くて、人間の頭脳を持った生物?

 ……勝てるはずがない。


 ガウェインが落ち着いて黒と赤の狼煙を上げる。

 緊急事態発生、救援求むだ。


 「お前、何を打った?」

 

 目を開けた瞬間に、先ほどまで三百メートルは離れた場所にいたエンペラーオークがガウェインの目の前にいた。冒険者たちの顔が驚愕に染まる。


 ……喋れるのか。


 「『血と踊れ、さすれば汝は夜を彩る』!」


 ためらうことなく中級魔法を使う。一瞬で鈍化した世界で、ヒロだけが普通に動ける。


 動ける、はずだった。


 エンペラーオークはその鈍化した世界についてきた。

だが、人間で同じように動けるヒロに驚愕し動きが一瞬だけ遅れた。その、一瞬が五秒もあれば狩り取れる。ヒロの岩すら断ち切る切断強化の祝福を施した短剣が、エンペラーオークの身体を薄く切った。


 血が舞い散る中、エンペラーオークはヒロから距離を置く。

 一瞬遅れて、二人の間に猛烈な風が吹き荒れた。


 魔法が解けたヒロと、距離をとったエンペラーオークが睨みあう。




 これは後に『アレアの惨劇』と呼ばれるようになる地獄の始まりである。

 冒険者数計72名。

 内、死亡者70名。生存者2名。

 これは、ヒロが英雄となる物語であり、

 そして、世界を敵に回す物語である。


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