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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
序章 強くなければ意味はない

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第02話 来訪者、魔物を狩る

 薬草といえば森だろう。くらいの感覚で森に来たのだが、ファルテ草ってそもそも薬草なのか?

 

 「どうしよっかな……」


 呆然と立っていてもなにも始まらない。そう思って、ヒロはしゃがむとそこらへんに生えている草を見つめ始めた。異世界ならこれで鑑定がはじまるはずだ。


 そう思って始めたが、いつまでたっても何も分からない。そもそも俺、鑑定スキルなんて持ってたっけ? ステータスが見れれば分かるんだけどなあ。

 そんなことを考えながら、適当な草をちぎってみる。……こんな草、見た事ない。ヒロは腰についていたポーチにしまい込むと、他にも今まで見た事のない草ばかりをちぎってはポーチに入れ始めた。

 

 気が付くと、あたりがうっすらと暗くなりはじめていた。もう日暮れなのか。早すぎだろ。

 ヒロは自分が千切ってきた草をたどって森の外に出ると、ちょうど日が暮れた。一気にあたりが暗くなりはじめ、冷え始める。


 「急いで帰ったほうがいいな、これ」


 ヒロは小走りで街まで走ると、門兵が今まさに帰ろうとしている瞬間だった。あ、危ない。これ間に合わなかったら、一日野宿することになってたぞ。

 ヒロは仮冒険者証を見せて、中に入るとまっさきに冒険者ギルドに向かった。受け付けに向うととりあえずポーチに詰めた草花を受け付けに置くと、依頼札も渡した。


 「た、確かにほかの薬草も買い取ることには買い取りますけど。そういうのはもっと早くに持ってきてください。もうギルドを閉めるところですよ」

 「あ、す、すいません」


 その後、教えてもらったが、どうやらこの世界では日が暮れると店を閉めるのが一般的らしい。知らなかった……。日本だと二十四時間働いているとこばかりだったしな。


 「まあ、とりあえず鑑定はしますけど……。ファルテ草は……ありますね」


 そういって受付嬢が取り出したのは、最初にヒロが千切った見た事のない草だった。よかった、あれがファルテ草だったんだ。

 受付嬢はどの薬草が一体どれくらいの値段するのかが分かるらしく、カウンターの下から小銭を重ねていった。

 五分ほどヒロが待っていると、鑑定が終わった。


 「お待たせしました。全部で576イルですね。どうします? 本登録します?」

 「いや、今日は良いです」

 

 ざっとこの街の食事の相場を(屋台だけだが)見ていた。どれも五十イルから六十イルする。それだけならいいけど、宿代もあるからな。そこらへんは抜かりないのだ。


 「なら、今日から二週間以内にお願いしますねー」


 別に金があっても断る人間は珍しくないのか、受付嬢はそこまで追求しなかった。


 ギルドから外に出ると、ひとまず宿を探し始めた。飯は無くても何とかなるけど、眠らなきゃなんともならないからな。


 そう思って、大きく看板に宿と掲げられてる場所に入った。


 「いらっしゃい」

 

 そう声をかけて来たのは身長が一メートル九十くらいはあるだろう大男。


 「あ、あの一晩泊まりたいんですけど、幾らですか?」

 「部屋に風呂ついて朝飯つきが1200イル、風呂無し朝飯ありが800イル、朝飯なし風呂無しが600イルだな。」

 「……分かりました」


 だめだ、今ヒロの手持ちは薬草を売って稼いだ分の576イル。とてもじゃないが600イルを払えるような状況にない。

 

 「おいおい兄ちゃんどこにいくんだよ」

 「いや、手持ちがないんで別のとこに行こうかなって」

 「この街でウチが最安値だぞ?」

 「ほ、本当に!?」

 「ああ……。ってその様子を見るにお前、田舎者か。それにその木札、冒険者になったばっかってとこだな。どうだ、安くしてやるぞ?」

 「い、良いんですか?」

 「まあ、お前の手持ちしだいだけどな」


 そう言って大柄な男は大きく笑った。よかった悪い人じゃなさそうだ」

 

 「実はいま576イルしかなくて……」

 「おう、なら550イルで風呂無し、飯無しでどうだ」

 「それでお願いします!」

 「部屋は12番な、鍵はこれ。頑張れよ、駆けだし!」

 「ありがとうございます!!」


 良かった。優しい人に出会えて……。受け取った鍵を持って12号室を開ける。そこにはまずまずのベッドと上着をかけるでっぱりだけの部屋があった。


 「シンプルだなあ」


 でも、野宿を免れたんだ。良しとしよう。多分、今の俺がクラスの奴らの中で一番異世界慣れしてるだろう。何しろ、あそこにいたやつらは異世界物のラノベなんて読まなさそうだし。


 「明日も頑張るか……」


 目をつむると、そのまま睡魔に飲まれた。




 それから、一週間がたった。未だ、本登録は出来ていない。

 それに加えて一つ、この世界にステータスは存在しない。街の人間たちにそれとなく声をかけてみたが、誰もやり方を知らないとのこと。だが、異世界人ならという可能性もなくは無いが、異世界に慣れている俺が出来ないのだ、無いに決まってる。

 それにもう一つ、冒険者というのは非常に稼げない仕事だ。

 一日あたりの平均した稼ぎが1000~1100イル。そのうちの800イルが宿代に消える。節制すれば200イル浮くが流石に体を動かす冒険者で風呂に入らないという選択肢はない。

 そして残った200~300イルのうちのほとんど食費に飛ぶ。そのため、今、ヒロの貯金は120イルだった。

 「どうしよう」


 一週間は元の世界と同じ7日間だったのであと7日間あると言えば聞こえはいいのだが、この稼ぎのままでは絶対に届かない。

 薬草ばかりを採取するんじゃなくて、魔物を狩るか? いや、でも武器なんて買えない。肝心の闇魔法は駄目だ。一向に発動する気配を見せない。

 けど、このまま薬草ばかり稼いでいたって絶対に300イルには届かない。


 そんなことを思いながら、ヒロはいつものように薬草の採取に向かった。


 この世界に来てからずっと、こんなことしてる気がするなぁ。

 異世界に来れば、もっと心が躍るような毎日が待っているのだと勝手に思っていた。けど、現実は元の世界よりも厳しくて、ありきたりな毎日だった。


 そうして、薬草をちぎってポーチにいれた瞬間だった。何かに見られているような気がして顔を上げる。


 「ギィ!」


 顔が醜悪、背は一メートル二十センチほどだろうか。手にはぼろぼろの短剣を持ち、ボロボロの衣服をまとっている。……ゴブリンだ。

 群れからはぐれたのか、こちらの世界のゴブリンは単独行動をするのか。なんて、どうでも良いことが頭の中をよぎる。

 ゴブリンは再び、ギィと鳴くとこちらめがけて走ってきた。なんでこっちに来る? 決まっている。俺を殺すためだ。逃げないと。逃げるってどこへ? 森の外へ。さあ、早く。早くッ!


 「うわああああああああああああああああああ」


 立ち上がって今まで来た道を走って逃げる。その瞬間、ヒュッっと頬を何かが掠ってこけてしまう。何が通ったんだと頭を上げると、矢が深々と木に刺さっている。ゴブリンは背中に弓を背負っていたらしい。絶望に迫るヒロの顔を見て、にやりと笑った。

殺される。このままだと殺される。

 

 「だ、誰か、助けてくれ!」

 

 そう言って大声を出すが、誰もなんの返事も返ってこない。帰ってくるはずがない。こんな浅い森でゴブリン見て逃げ出すような冒険者なんていないからだ。


 はやく逃げないと。そう思って立とうとするのだが、足も腰にも力が入らない。……死ぬ?


 嫌だ、嫌だッ!


 ゴブリンは弓を背負い直して、剣を持ってこっちに来る。


 「来るな、来るなよぉ!!」


 こちらに迫るゴブリンは意にも介さず、剣を振り上げて、


 「『停まれ』よぉ!!!」


 クン、と停止した。その瞬間、体の中からずるりと何かが抜けていく感覚。自らの影が、自らの足元を離れ、ゴブリンの影を捉えている。

 殺すしかない。それしか、逃げ伸びる道がない。ヒロはゆっくりと立ち上がると、ゴブリンが持っていた、錆びてボロボロになった剣を奪い取ると、一息に心臓めがけて突き刺した。別に、そこが心臓だと知っていたわけじゃない。ただ、人間の心臓と同じ場所を突き刺しただけだ。肉を穿つ独特の触感と、刺した場所からあふれ出す血液がヒロの服を汚していく。

 

 ゴブリンが苦しそうに声を上げるが、ヒロの影がゴブリンを羽交い絞めにしており、動けない。


 「死ね、死ね、死ねっ!」


 そうして、一際大きく突き刺すと、苦しそうに声を上げて、ゴブリンの体が霧散した。


 「……こ、殺した」


 魔物は倒すと、その体を霧散させ後には魔石だけが残る。ごとり、と地面に落ちた魔石を拾い上げてポーチにいれる。

 殺してしまった……。でも、仕方なかった。殺さなきゃ、俺が死んでいた。

 ゆっくりと、自らの体から広がっていく霧散するゴブリンの血を見ながらそんなことを考える。


 「今日は、もう帰ろう……」


 もう、薬草を採取する元気はなかった。


 ゴブリンの魔石は400イルで売れ、その日の稼ぎは1500イルになった。


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