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外れを引いた異世界転移~世界を壊すは我にあり~  作者: シクラメン
序章 強くなければ意味はない
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第11話 来訪者、ダンジョンに挑む

 南の迷宮までは門から歩いて二十分のところにあった。急ごしらえに作られたと思わしき建物が入り口に立っている。

 

 「ここ、かな……」

 「そうみたいだね」

 「じゃ、さっそく入るか」

 「え、こ、心の準備が……」


 リリィの言葉が入り口付近で反響する。

 颯爽と三人が建物の中に入ると、目の前には綺麗な宝玉と地下へとつながる装飾された階段。宝玉の方は地面に固定されているので外すことは叶わないだろう。

遅れて入ってきたリリィと合流して階段を下っていく。

 何段、駆け下りたであろうか。ふと、目の前をそよ風が吹き抜ける。


 ……地下世界なのに、風?


 と思ったのもつかの間、目の前に広がるのは巨大な草原と燦々と降り注ぐ太陽の光。

 

 「……ああ、なるほど。ここはこういう……」

 

 ヒロの言葉にガウェインが頷く。


 「ここのダンジョンは『空間展開型』と呼ばれるタイプのダンジョンだよ。一階層ごとに空間が独立してるからね。地下にいても暗さで気が滅入らないのが良いところだよ」

 「こ、ここって時間がたてば夜とかになるんですか?」

 「いや、ならないらしいよ。ここは時間の流れが停滞しているからね」


 ふーん……? そういうものなのか。


 「さて、一階層なんてE級の中でも最底辺の魔物くらいしか出てこないし、さっさと二階層に行ってしまおう」

 「どこ行けばいいの?」

 「階段降りてまっすぐ進めばいいらしい」

 「へぇ……」


 攻略されつくした南の迷宮は、ほとんどの情報が本に載っている。

 故に、手軽に強くなりたい冒険者や金を稼ぎたい冒険者がこの迷宮へと潜るのだ。

 

 「一階層の階層主って何なの?」

 「ゴブリンリーダーらしいよ」

 「ゴブリンリーダー?」

 

 ヒロの問いにガウェインが応える。


 「上位種ネルガットだよ。普通の魔物にもいるよ」

 「ねるがっと?」

 「あー。えっとね、ゴブリンみたいな群れで行動する魔物には結構あることなんだけど、大体二十体から三十体に一体くらいの確率で、上位種が生まれるんだ。今回だとゴブリンリーダーだから、普通のゴブリンの1/30くらいの確率で生まれるんだ」

 「へえ、強いのか?」

 「それなりに。今回のゴブリンリーダーだと普通のゴブリンの三十倍くらいって言われてる」

 「ほえー」

 「ちなみに、ゴブリンリーダーの中から1/50くらいの確率でゴブリンキングが生まれるって言われているよ」

 「強いのか?」

 「ゴブリンリーダーの五十倍ほどだね」

 「じゃあ、普通のゴブリンの1500倍くらいか」

 

 普通のゴブリンの1500倍くらい強いってそれ強いのか……?


 「ちなみに噂だけどゴブリンキングの中から1/100くらいの確率でゴブリンエンペラーが生まれるって言われてて」

 「どうせゴブリンキングの100倍強いんだろ?」

 「さぁ……。交戦記録が無いからよくわかんないだよね」


 そんな無駄話をしていると、草原の中にそびえたつ巨大な建物が見えてきた。

 四人でわいわい喋りながら、中に入ると開けた空間。日陰に入ったことで、ひんやりとした空気に包まれる。

 部屋の中心、そこに立つのは一メートル五十センチほどの影。左手には盾、右手に剣を構え部屋に入ってきた四人に向かって襲い掛かった。


 「『放て』」


 ゴブリンリーダーの飛び上がった瞬間を狙いすましたヒロの一撃。

 黒い球は宙でゴブリンの身体を打ち付けると、地面へと撃墜させた。すかさずガウェインが追撃に移る。地に落ちて目を回しているゴブリンリーダーの首元に刃を突きつける。

 澄んだ金属音とともにゴブリンリーダーの首が外れると、身体が一瞬で霧散して魔石が後に残った。


 「あっけない……」

 「まあ、所詮ゴブリンだし」

 「ここ守ってる意味あるんですかね?」


 さんざんな言われようである。


 「さて、この調子で五階層まで降りてしまおう」

 

 南の地下迷宮ダンジョン、ここは一階層ごとに出てくる魔物ランクが決まっているとても冒険者向けのダンジョンである。

 一階層ではE-。二階層ではE。三階層ではE+。といった具合にだ。

 故に冒険者たちがガルトンドに集まったわけだ。自分の実力に合わせて迷宮の深度を変えられる。

 だが問題があって9階層目、C+クラスより強い魔物は一切出てこない。だから、一流の冒険者たちはもっと強い魔物を求めて西の迷宮へと向かう。


 ヒロ達は二階層を軽々突破して、三階層、四階層ともに全て一時間未満で踏破した。


 五階層は遺跡階層というべきか、曇って灰色の空の元、完全に朽ちてしまった遺跡群を進んでいくという階層だった。

 しばらく進んでいると、ヒロがふと視線を感じた。


 「ん……?」


 ちらりと後ろを振り返るが、何もいない。

 おかしいな。今絶対に視線を感じたんだけどな。そう思ってガウェインの後ろをついていくが、またちらりと視線を感じる。


 「どうしたの?」


 先ほどから何回も後ろを振り返ってばかりのヒロにロザリアが尋ねる。


 「いや、なんかさっきから見られてるなって」

 「どこから視線を感じるの?」

  

ヒロがゆっくりと指をさした場所は羽が折れたガーゴイルの石像。

 

 「『濁流よ!』」


 刹那の逡巡も無く、ロザリアが水属性の魔法を発動。ガーゴイルの上に生まれた莫大な水が一瞬にしてガーゴイルを押し付ける。

 その瞬間に、初めてガーゴイルが動いたが全てが遅い。


 「『放て』っ!」


 ヒロの詠唱によって三つの黒い球ガーゴイルに着弾。石の身体を削っていき最後の一撃が頭に直撃した瞬間に、ガーゴイルが魔石になった。


 「あ、あれはただの石像じゃなかったんですね」

 「上手いこと擬態してたみたいだな」

 

 ヒロが魔石をポーチにしまいながらそういう。


 あ、この魔石結構大きいぞ。これは良い値で売れるに違いない。


 「五階層の敵はこういう敵ばかりなのかな」


 次の瞬間、ガウェインが空から降りてきた羽根つきのガーゴイルに一撃を加えながら言う。ロザリアが追撃魔法を撃った瞬間に、ヒロの背後から恐ろしいほどの殺気。

 ヒロは反射的にしゃがみ込むと、頭の上を炎が通過した。


 「ブレスか?」

 

 だが、しかし所詮はガーゴイル。そのブレスに触れたとて火傷は負うだろうが死にはしないだろう。おかげさまで魔法は降りてこないようだ。


 「ヒロ君、援護行きますっ!」


 リリィがヒロの後ろに入る。


 さて、正面のガーゴイル。後方のガーゴイル。今までD級の魔物はパーティー全員で戦ってきたから初めての試みとなるが……。


 「危なかったら逃げようっ!」

 

 ガウェインの言葉にヒロはニヤリと笑う。

 

 ……さあ、今の自分がどこまで強くなったか。確かめようじゃないか。


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