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「海神の唄」  ~Takaの唄~  作者: Taka多可
3/9

<<2:裏通りの物々交換屋>>



北風が強く、やさしく走る  そんな街のどこか。

裏側通りの先にある・・地下道の深くて長い階段を降りた所に

その店はある。


.    ギギィ・・・・・  ばたんっ


小さなカウンターの奥、そして左右の壁一面が巨大な棚でずらりと並び、白い箱が無数と収められている。

幾重にもロープで縛られて安定性が悪そうに傾いている箱、

まるでCDやMDケースのように薄っぺらい箱、

人間一人が入れそうなくらい大きな箱もある。

また、獣皮で包まれた物、不気味な色を放つ水晶球、おぞましい姿をした魚の剥製・・・・

一見、マニアやオタクの好き好みそうな店だが・・・ ここにはそんな客は来ない。

彼らでさえも、この店へやってくる者達から見れば普通の人間だ。

『現実世界』に生きる人間には・・・・・・・・店の存在自体が知られないのだ。


ここへやってくるのは・・・・・・・・


「いらっしゃいませ。・・・おや、これまた怪しいお客様だね。」

カウンターに座っている、茶髪で青い眼鏡を掛けた男の店員がにっこりと・・その店には不釣合いなほどの笑顔で客に笑いかけた。

客は黒いコートを羽織り、中は白衣 というなんとも不思議な格好だ。

科学者とかを非難するわけではないが((゜というか、作者自体が科学者の卵だし。゜))いくらなんでもその男は、あからさまに怪しすぎる。


「しかし、この店ではどんなものでも『物々交換』で手に入れることができますよ。 さて、何をお求めで?」

「・・・ある機械人形を探している・・丁度、そこの・・・」

人間サイズの箱を指差して言う。

「ぁあ、これですね。ですが、当店にあるこちらはフィギュァでして、現物を店内に置くことは出来ません。 お取り寄せの用紙は~っと・・・」

「違う。」

「フム・・・・新規のを購入したい、そういうことでは無いのですね?」

「そうだ。 探して欲しい機体のナンバーなどの詳細はこれに書いてある。」

客は、ほとんどイントネーションの無い声で答えると 二つに折りたたまれた紙切れを渡した。


「ふふ。これまたずいぶん古い機体ナンバーですねぇ。 ですが、これがどこにあるのかは知っていますよ。人間と機械の区別くらいは、出来ますからね。」

「流石だ。」

「こちらはそういう商売ですからね。 ・・・貴方も知っているからここへいらっしゃられたのでしょう?」

客は帽子とコートを深く着なおす。

「・・・深く追求はしませんよ。3日後にもう一度お越しください。商品をお渡しします。

 ところで、当店では前払いが前提となっております。 交換する品を・・・・」


.      ドンッ!   ジャララ・・ざらっ


客は、白衣の中から取り出した皮袋を乱暴にカウンターに置いた。

袋の中から・・・宝石やアクセサリーがバラバラとこぼれている。

しかし・・・・

「ふふ、どれもこれも天然の、本物ではなく人工の鉱物ですね。」


ところが店員は怒るでもなく

「はい、充分です。お引き受けいたします。 仕事が失敗した場合や、ワタクシどもが死んだ場合、お返ししますから・・・・・」

「返却はしなくていい、どうせ元には戻らない。」

「左様ですか。 では。」

「3日後にまたくる・・・・よろしく頼む。」

「はい。 毎度どうも御贔屓にー・・・・」


.    キィ・・・  ゴゴンッ




「お(にぃ)、またお客かい?」

「あぁ、また怪しいお客様だよ。 というか、たまにはお前も番台しなよ。面白いよ?」

「ォィォィ勘弁してくれよ。俺はまだこの環境にさえ慣れてないんだぞ?無茶苦茶言わないでくれよ・・・」


店員の座っているカウンターの横にあるドアから、店員と同じように茶髪で、赤い眼鏡をかけた男が入ってきた。

店員の双子(弟)だ。


「なんだなんだ、この石ゼーンブ偽物じゃないか!」

「いいんだよ。さっきのお客様にとって、この石は"大切なもの"なんだからね。

 ウチの店ではお客様の望む品を提供する代りに・・そのお客様の"命"・・・なんて言うと物騒かな・・・つまり、"人生の一部"を料金として請求するわけさ。

 彼にとってはこの石がこれからの人生において、必要になるはずだったものな訳。」

「う~~~~ん・・・・」

弟は納得がいかない顔のまま、指輪を一つとって指でくるくると回す。


「まぁ、お兄は『物の記憶』が読めるからねぇ。」

「そうそう、『物』といえば・・・さっきのお客様、ロボットだったよ。」

「ふーん・・・・・・   って、   ぇえええ!?」

にこやかに兄は続ける。

「正確には『アンドロイド』 って、ヤツかも。多分、創造者の依頼だよ。その人の作ったロボットがお使いに来たんだろうね。

 そして、この石は機械の体の一部らしい。」

「!!?」


.         カツ―ン!


指輪が小さな音を立てて弟の手から 落ちた。


「ぇーっと・・・・」

兄は、カウンターの下から青っぽい迷彩柄のノートパソコンを取り出すと、先ほど受け取った紙を見ながらポチポチとキーを打ち始めた。

「・・・お兄、まさかまだ『雨だれ』でしか 打てないのか・・?」

「・・・・・別に、指一本で打っちゃいけない、という決まりもなかろう。」


  かちゃ・・・    ・・かちっ・・・


  ・・・・ぽちっ・・・・・・・




「~~~~~~~~~~~~っ! ぇえいじれったいなぁ! おら、貸してみろよ。」


かかかかかかかかかかかか・・・・


「早いな。」

「お兄が遅いだけだから (汗;)」


「よし、出た。 ふ~ん・・・・『NO.Tak-sa_00013』か。かなり古いね、モデルタイプかい?こいつ・・・」

「たしかこの機体、造られてすぐに行方不明になってたやつだよ。まぁ、当時は試作段階だからと気にしてなかったんだろう。

 今頃になって探すとはねぇ・・・・こういう依頼は厄介だよ、本当に・・・・」

はぁあ~と、大きなため息をつく兄。


「けど、なんだか可哀想じゃねーか? 多分今まで何も知らずに育ったにちがいないぜ。 突然なぁ・・・・・俺も似たようなもんだけど・・・・・・」

「そうだねぇ。 ほら、見てごらん。今は普通の小学校に通っているよ。」

「でも・・・」

「「仕事だからな~」ね~」


「さて、行こうぜ お兄。」

「そうだね・・・しばらくお店はお休みだ。  それと、外では【アヤメ】と呼ぶように。いいね?」

「ヘイヘイ、じゃ俺のことも【レイ】って、ちゃんと呼べよ?」

「む・・・」






二人がいなくなり、不気味な静けさが戻った店内。

そのカウンターから一枚の紙が ひらっと 床に落ちた。



紙にはこう書かれていた。



---------------------------------



FuselageNo    : Tak-sa_00013

Sexual Distinction: Missing              .

---------------------------------


↑訳すると、  機体ナンバー:Tak-sa_00013、性別:無



(( これは、多可谷が、海神の通う小学校へ転校してきてから、2ヵ月後の出来事である ))

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