<<1:男か女か>>
「ね~多可谷ぃ?」
「なんです?海神さん」
「結局君は女の子なの?男の子なの??」
. がごん!!
・・・・・・北風の恩恵を受ける・・海と道の大地。
小さな町のそんなに大きくもない、小学校。
その児童食堂に、妙な音が響いた。
まぁ、あたし・・・【海神 このは(ワタツミ コノハ)】のせいだけどね。
・・・・あたしは、この『可愛らしすぎる』名前が苦手だ。
性格とあってない気がする。
セミロングの外撥ねパンキーヘアでこげ茶色の髪。目は黒っぽいかな。
歌うのと運動するのが大好きで、勉強は・・・・とりあえず平均点。
どこにでもいるフツーの女の子。
海神 このは
「おい海神、あんまり変な質問するなよ。多可谷 困ってるじゃないか。」
「だって、わかんないんだもん・・・・」
「・・・どっちだと、思う?」
コカした飯碗とテーブルをあたしの渡したティッシュで拭きながら笑いかけてくる。
「ん~・・・・女の子だといいなぁ。」
フレンチフライポテトをほおばりながら言う。
「どう見たって男じゃん。」
「ぇえ~?私も女の子だと思ってたけど・・・・」
「「・・・・ ざわざわ ・・・・ ・・ ・・・・・」」
あたしたち6年1組のクラスに転校してきた【多可谷 悟】は 男とも女とも、とれなかった。
左足が悪いらしく、補助器具をつけている。
黒くてきれいなショートカット。
長いマツゲに凛々しい眉。
黒と茶色のコントラストのはっきりした瞳がすごくきれい。
背もそこそこ高い。
けれど、字がすごく下手だった。 (笑)
多可谷 悟
ウチの学校の出席簿は男女混合の〔あいうえお〕順。
それに転校生は一番最後に入るから、男子なのか女子なのか・・わからないのだ。
先生に聞いてもなぜかはぐらかされた。何かを隠すかのように・・・・・・・
コドモだからって、気が付かないと思ってるんじゃないの?
まぁったく・・・・・
それに、一人称が「自分」だったことも介錯する。
トイレ? 障がい者用(男女兼用)を使っている。
まっさか・・・・・後をつけるわけにも行かないでしょ。無理。
「あのさ、海神さん?」
「んぇ?らに(何)?」 ←口の中いっぱい(汗;)
「名前・・・なんていったけ?」
「(ごくんっ!)あぁ。【海神 このは】だよ。」
「・・・苗字か名前かどっちでよんだほうがいい?」
「苗字で呼んでよ。それに呼び捨てで良いしさ。『このは』なーんて 恥ずかしくて・・・・」
「可愛いじゃないか、いい名前だと思うよ。嫌いなの?」
「う~~ん・・・嫌いじゃないけど、似合わないような気がするよぅ・・・・」
名前は嫌いじゃない。
ただ、極度の照れ屋・・・・・さっきも言った(書いた?)けど、こういう女のコ~な名前は性に合わないと言うかなんと言うか・・・
「そーいう多可谷は?自分の名前好きなの? もしかして、『名前が男か女かはっきりしないから自分もそうしてる』とか言わないでしょうね!?」
びしっと飯粒だらけのしゃもじを多可谷に向ける。
「嫌いじゃないし、そのつもりだけど?」
「「だぁあああ~~!!」」 そのへんにいたクラスメイトたちごとすっ転んだ。
「多可谷ぃ~~~~!」
「あははは!ゴメンゴメン。 ・・・でも、もしかしたら自分の名前はそう言う理由なのかもしれないかな・・・・」
「ぇ?何 聞こえなかったんだけど・・・・」
「ううん、なんでもないよ。 海神、自分もご飯お代わりするからしゃもじ貸して?」
「ぇ、あ・・・はい。」
やっぱり、不思議な人・・・・・