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夢IL''幻界少女  作者: ヱフノジルイ
殺伐の鳥
33/47

夢を、今再び

 やがて僕らの意識は現に……否、夢に戻る。

 足元に落ちたモノクロの本が、白と黒の瘴気になって消滅した。


 君はただ茫然と、自分の手を見つめている。

 その手に塗れた、夥しい量の血を想起したのか、肩を震わせていた。


「そうだ……私がやらなきゃいけないんだ……全部全部皆殺しにして……そして解放してあげないと……」


 君の目は、次第に人の物では無くなっていくようだった。

 その目は、あの日君が見せた破壊に囚われた悪魔のような目だった。


「行こう、ルイズ……全部、全部、壊しに行こう?」


 君は僕に手を差し伸べる。

 ただその放つ殺気は、あの頃と比べて何かがおかしかった。

 そこに本当に人類を解放したいという意志があるとは思えなかった。

 ただの破壊と殺伐に、目覚めてしまっているかのようだった。


「イリス、君は……」


「……?どうしたの?」


「いや……なんでもないよ。それじゃ行こうか」


 僕は君の手を握ると、共に歩き出した。

 これは破滅の道となるのだろうか?

 本当に、僕は真の自由を手にする事が出来るのだろうか?

 この僕の手を引いている君は、私を束縛する幻滅なのか?

 今はそう思いたくなかった。


 部屋を出て上の階へ上がると、世界の様子が変貌していた。

 あの煌びやかだった屋敷はボロボロの廃墟のような姿になり果てている。

 床も壁も朽ち、美しかった薔薇の花も枯れ腐っていた。

 従者達も皆、歩く屍となっている。


「真実に辿り着いたか、イリス、そしてルイズ」


「おめでとう、おめでとう」


 ストレンジとアリスが僕達の前に姿を現した。

 イリスが剣を構えた。


「私達は等の昔に死んでいる。今更死のうが生きようが同じことだ……だが」


 ストレンジが鋭い瞳でイリスを睨んだ。


「お前は、本当に人類を救いたいという意志があるのか?今のお前のその目には、その意志が見受けられない」


「壊したい、壊れたい、終わらせたい、終わりたい。例えそこに次が無く、再生の無い破壊だとしても、とにかく終わらせたい。イリス、あなたの目にはそう描かれている」


「……うるさい」


 剣の刃が駆動を始めた。

 耳を劈く高音が辺りに響く。


「次があろうと無かろうと私には関係無い……私は、全部全部破壊して、この世界を、束縛を、終わらせる……」


「ならば私達はお前には賛同出来ない。あの少女は、シエルは、自己犠牲をも覚悟して、人類の為に大破壊に乗り出した。その思いを踏みにじるのは到底許されるべき行為では無い」


「だから、何?今の人類は不完全だと私は思っている。だから私は一度全部破壊し尽したら、一から全部作り直す……今の人類は、次の世代には必要ない」


「……それがお前の答えだと言うなら、行くがいい。既に死した私達には、今更生ある者に口をはさむ権利は無い」


 アリスとストレンジが道を開ける。

 その先には、屋敷の出口が扉を開いて待ち構えていた。


「行け、黒き破壊の鳥よ。逝け、白き破滅の鳥よ。己が望む世界の為に、今を生きろ」


「がんばれ~!がんばれ~!」


 去っていく僕達を見送ると、屋敷の扉がゆっくりと閉じた。


 外の庭園の花々も荒れ果て、街並みも廃墟のようになっていた。

 それは今まで僕達が見てきたものが幻想だったのか、元々こういう姿だったのか、知らない間に時間が過ぎたのか。

 それは僕達には分からない。

 ただ今それを考える必要も無かった。

 僕達は、僕達の目的の為に、生きるだけだから。


「それじゃあ行こう?全部を皆殺しにするために!」


 君は僕の手を引いてそういった。

 ……僕は、ただ君に連れられる事しか出来なかった。

 その君の笑顔が、僕に破滅の二文字を連想させた。

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