闇底の憂街
僕と君は手をつなぎ、闇底を歩いていく。
ふわりゆらりと君の髪が、美しく闇に揺れた。
当たり前だが闇底は暗い。
前に何があるのかも分からない。
ただ僕達はあても無く、闇底を歩いた。
其処に答えが有るかも知れない。
底に答えは無いかも知れない。
それでも目指すべき場所が決まらぬ僕らは
この闇底の中を歩く以外に、手は無かった。
とりあえず遠目に見える、闇に沈んだビル群を目指し、闇の中を進む。
君の握る手の力が、ちょっぴり強くなった、そんな気がした。
気付けばビル群の中にいた。
真っ黒い闇の中。
ビル達はどいつもこいつものっぺりと。
ぬらりとのっそり立っていた。
街の中には、黒い黒い人影が、俯きながら歩いている。
ぬらりとした顔面には顔は無く、ぽっかりすっかり穴が開く。
彼らは僕達とは逆向きに群れを成して歩いている。
僕と君はその中を、手を繋ぎながら歩いて行った。
「……なんだか怖いです」
君はぼそりと呟いた。
確かにそうだと頷いた。
彼らは確かに歩いていたが
そこに心は見いだせなかった。
顔に開いた虚空な穴は。
心が無いと訴えかける。
この影達は、何故生きる?
自分を殺し、群れを成し。
集団の中で生き続け。
やがて誰も気付かず果てる。
それに何の意味がある?
影は一人の人間だ。
人であるなら物では無い。
なのに何故、影は自分を殺し、パーツとなろうとするのだろう?
悩み思い訝しげ、首を傾げた僕の頬、君がそっと突いてた。
「あの、早くこんなところ抜け出しましょう?」
君の言葉に、僕は思考から引き戻された。
「うんうん、そうだね。こんなとこ、見たってちっとも面白くないもん」
僕は君に呟くと、君はニコりとほほ笑んだ。
顔の無い人塵の中を抜けてくと。
ぬらりにゅらりとしたビルが。
僕と君の前に居た。
これより先には街は無い。
再び闇があるだけだ。
闇面すらも貫くそのビルは。
如何にも怪しい雰囲気だ。
「ここしか他に無いみたい……ですね」
君は隣で呟いた。
確かにそうだ、そうだとも。
僕は君の手を引いて、扉を強く手で押した。
怯えた君に、気付けずに。