私
私は、硬いベッドに寝かされている。
私は、腕に注射器を刺されている。
私は、妙な装置を喉の奥深くに入れられている。
私は、ぼんやりと薄眼で天井を見上げている。
私は、天井につるされた照明を見つめている。
私は、周りで蠢く機械達に成すがままにされている。
私は、一糸纏わぬ姿で体中を弄り回されている。
私は、ゆっくりとその白銀色に輝くメスで胸を切り開かれている。
私は、横に安置されている培養槽の方へ目線を移している。
私は、培養槽の中で浮かぶ脈打つ物体を眺めている。
私は、機械と肉が混ざり合ったようなそれを見つめている。
私は、胸を開かれる感覚を感じて身を身を捩じらせようとしている。
私は、意志とは反してビクともしない体の気持ち悪さを憶える。
私は、自分の心臓に鋭いメスが差し込まれるのを見る。
私は、恐怖心で叫ぼうとする。
私は、声を出す事が出来ず更に恐怖心が増長する。
私は、心臓を切り裂かれその半分を摘出されるのをただ眺める。
私は、血液が溢れ出すそれを見て更に恐怖する。
私は、培養槽の中から取り出された機械と肉の塊を見る。
私は、それを胸の中へ入れられようとして抵抗しようとする。
私は、体を動かす事が出来ず抵抗出来ないでいる。
私は、ただ自分の心臓に縫い止められるその機械とも肉塊とも似つかないそれを見つめる。
私は、胸を閉じられ縫い付けられ縫合跡が刻まれていくのをただただ眺める。
私は、自分の喉の奥から延命装置が引き抜かれていくのを感じる。
私は、強烈な嗚咽に耐えられず激しく嘔吐する。
私は、体の感覚を取り戻して暴れようとしたが機械に抑え込まれる。
私は、強烈な拒絶反応に頭がおかしくなりそうになる。
私は、私の中に広がっていく妙な感覚に苛まれ意識が遠退いて行くのを感じる。
私は、私の中でもう一つの何かが出来上がって行くのを感じる。
私は、その意識を失う直前に一つの人影を見た。
私とそっくりな顔をした、黒い黒い少女の姿が。




