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夢IL''幻界少女  作者: ヱフノジルイ
薔薇屋敷
22/47

夢幻書庫

 屋敷の地下。

 エリーゼに連れられた僕らは書庫に辿り着いた。


「ここから先は私はご一緒出来ないので、地図を頼りにご自分達の力でお願いします」


「はーい。ありがとうございました、エリーゼさん」


 君がエリーゼにそう言うと彼女は一礼してから去っていった。


 地図で見た通り、書庫は途轍もなく広かった。

 迷路のように本棚が配置され、極端に入り組んでいる。

 幸い手元に地図があるのだが、どの本棚も似たような背表紙ばかりでどこがどこだか分からなくなってしまう。

 何人か掃除をしているメイドを見つけたので、随時道を聞きながら書庫内を進んでいった。

 しかし途中で階段に向かうはずの扉が倒れている本棚に塞がれ、先に進めなくなっていた。

 どうしようか、と悩んでいると君が本棚の本を物色し始めた。


「あ、この本ちょっと面白そう……」


 君が一冊の本を手に取る。

 表紙に目玉が記された、不思議な本だった。


「なんか気持ち悪いね」


「そうだね」


 君がぺらりと本を開ける。

 その時だった。

 君の体が本の中に突然吸い込まれたのだ。


「あ、あれ!?ちょっと!?」


 持ち主を失った本がぱたりと足元に落ちる。


 全身の血の気が引く。

 僕は咄嗟に本を持ち上げ、同じように開いた。

 黒い文字の羅列が並んでいる……と。

 いきなり体が何かに引き込まれるような感覚を覚えた。

 その直後、本の中に意識を引きずり込まれた。


 暗い暗い空間に落ちた僕は、地面に尻餅をついた。

 鈍い痛みがほぼ剥き出しの尻に響き、優しくさすった。

 横を見ると君がきょろきょろと辺りを見回している。


「こ、ここ、本の中……?」


「みたいだね……どうしよう」


 僕も立ち上がって辺りを見回す。

 と、周囲にいくつもの目が浮いているのに気付いた。

 それらは一直線に道を成し、僕らの事を見つめている。


「……先に進んでみよう」


 君の手を引いて、目に見つめられながら先に進んでいく。

 少し進んでいくと、目の前に壁のような物が現れた。

 何となく触ってみると、その壁は動きそうだった。


「君はそっちを」


「分かった……せーの!」


 一緒に力を込めて壁を押す。

 その時暗い空間に光が差し込み、次の瞬間には元の本棚が並ぶ書庫の中に居た。

 足元には似たような本が落ちている。

 周囲を見回すと、先ほどと本棚に並んでいる本が変わっていた。


「もしかして、本と本を通じて違う場所に行けるようになってるんじゃ……」


「なるほど……これを上手く活用して一気に下の階を目指してみよう」


 手当たり次第に本を捲り、入り込めるものを探してみる。

 花柄の表紙の本を開いた時に、同じような感覚を感じ、本の中に引き込まれた。


 辺り一面の花畑。

 蝶が舞い、風に草木が揺れる。

 そんな華やかな風景の中を、僕達は歩く。


「出口はどこかなぁっと」


 花を踏みしめ、先に歩いていく。

 暫く歩いてからだんだんと風景が崩れ始めているのに気付いた。

 花を踏ん付ける度に絵の具が崩れていくように風景が乱れていく。

 出口を見つけた頃には、踏んで潰れた花は全て人の形をした肉塊へと変わっていた。


 本から飛び出すと、表紙に苦悶する人々の顔が描かれた本が落ちていた。


「なんだか……怖い本だったね」


「うん……」


 気付けば周りの本棚も朽ちていて、床には本が散乱していた。

 どうやら手を付けられていないほど下層にワープしてしまったらしい。

 本の山の上を進み、それらを掻き分けながら、ワープに使えそうな本を探す。


 本の山の下に、一冊気になる本を見つけた。

 題字も何もなく、無地の表紙が目を引いた。


「これだね」


「そうみたい。開いてみよう」


 僕と君は一緒に本を開いた。

 同じような感覚が全身に襲い掛かる。

 その時、僕は強烈な眠気を憶えた。


 その眠気はとても耐えられたものではなく、本の中に引き込まれる頃には、既に僕は深い眠りの底に落とされていた。

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