庭園と少女
船に揺られて数時間。
僕らは西洋世界の港町に到着していた。
辺りには赤レンガの建物が建っており、オシャレな街頭、オシャレな衣装、オシャレな街並み。
並べられた花壇には様々な色の薔薇が植わっていた。
「うわぁ!」
町を眺める君は、またもや目をキラキラと輝かせていた。
街中は仄かに薔薇が薫り、海のさざめきが心地良い。
僕はマップを一枚手に取ると、図書館の場所を調べた。
「ここから東の方に進めばいいのかな……っと」
君の手を掴むと、地図を頼りに街中を歩き始めた。
暫く街中を抜けていくと、見渡す程に巨大な館の前に着いた。
広大な庭園があり、綺麗に管理されたその屋敷はため息が出る程美しい。
「ここが図書館……?」
「ううん、ここは薔薇屋敷って言うみたい。ここの地下に図書館があるんだって」
僕と君は鉄柵の門を押し開けると、庭園の中に踏み込んだ。
花壇の多くには薔薇の木々が植えられており、庭園全体に華やかな香りが漂っている。
何人かの庭師だと思われる者が、ハサミ型の手を器用に操りながら管理をしていた。
庭園を眺めながら歩いていると、こちらに一人のメイド服を着た人物が近付いてくる。
「あの……お客様ですか?」
「あぁ、図書館に行きたいんだけど」
「あっ、図書館ですか。ではこちらにどうぞ」
メイドに案内されて、僕らは屋敷の方へ連れられて行く。
その時、一人の少女が僕らの前に現れた。
可愛らしい黒と白のエプロンドレスに、頭には黒いうさ耳のようなリボンを伸ばし、白い長髪を風に揺らしている。
赤い瞳をしたその少女は、興味深々なご様子で僕達の顔を眺めてきた。
「アリス様、どうされましたか?」
「うふふ、久々のお客さんね!ごきげんよう!黒い鳥に白い鳥さん!」
「ふふ、こんにちは!」
スカートの裾を持ち上げ、会釈をするアリスに、君が気さくに挨拶を返した。
「この方はここ薔薇屋敷のオーナー様の妹様でございます」
「ね、エリーゼ。この方達は何故ここへ?」
アリスはメイドの事をエリーゼと呼んだ。
「図書館に御用があるようなのです」
「へぇ~。図書館に……」
一瞬アリスの眼差しが妙に鋭くなった。
その目つきは、先日出会ったカグラのモノとよく似ている。
「ここの図書館はそれはそれは広いの。迷わないように気を付けるといいわ!」
アリスはそういってクルクルと回る。
「それじゃあ、私はこれで!白黒のハート、見つかるといいわね!」
それだけ言い残すと、彼女は去って行ってしまった。
……いや、何故ハートの事を知っているのか僕らは一瞬理解できなかった。
「……アリス様は少し不思議なお方なのです。ご主人様もですが、従者である私達ですら、知らないことだらけなんですよね……って、失礼しました」
ぼんやりと去っていくアリスの後ろ姿を眺めながら、エリーゼがぼんやりと呟いた。




