表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢IL''幻界少女  作者: ヱフノジルイ
玄鶴宿屋
16/47

ホットスプリング・ドリーム

 暖かい。

 温かい。

 とても、あたたかい。


 揺らぎ揺らめく水面に。

 赤い夕景の空が。

 ゆらりゆらりと輝いた。


「はぁ~、生き返るぅ~……」


「久々だな、こうやってみんなで旅行に来たのも」


「うん……」


 周囲を見回せば、またあの三人が居た。

 どうやら自分は彼女達と温泉へ行ったらしい。

 周りに君の姿は無い。


「海外に行っちゃう前の……最後のお見送り旅行だもんね」


「それで温泉って言うのはどうかと思うけどな。まぁあっちに行ったら温泉とかも無いんだろうな~……これが最後かぁ」


「恋しくなったらいつでも戻ってくればいいんだよ!いつでも私達、プラン組むからさ」


 赤髪の少女が海外に行く前の、最後のお見送り旅行という事らしい。

 必死に楽しもうとしてるのだが、やはり別れと言うものを忘れきれないのか、彼女達の表情は何となく曇っていた。

 皆は暫く黙って、湯に浸かっていた。


 なんだか、体が軽いような気がした。


 どうやら貸し切りか何なのか、周りには他の客がいない。

 温泉自体もそこまで広い訳ではないのだが。


 僕はなんとなく、周りの少女達の体格を眺める。


 赤髪の少女は雄弁な口調に似合ったがっしりとした体格で、脂肪よりもどことなく筋肉の方が多い。

 緑髪の少女はなかなかにスタイルが良く、日本人らしい、綺麗な体のラインをしていた。

 青髪の少女は君と似て、少し痩せ型で見るからに体が弱そうなのが感じ取れる。


 その時、僕は彼女達の決定的共通点を見つけた。

 「胸」だった。

 胸と胸の間に、大きな手術痕が残されているのだ。

 青髪の少女は前回の街中の夢で見たが、それと同じような傷が、緑髪と赤髪の二人にも刻まれていた。

 縫い跡が生々しく残っており、痛々しい。


 そしてその少女達の輪の中に居る僕自身にも……!?


「ん?どうしたんだ?」


「さっきから黙りっぱなしだけど……のぼせた?」


 そんな……!?

 無い!

 なんで無いんだ!


「僕の胸は……っ!?」


「僕……?」


 自分の胸はそこには無く。

 ただただ平たい、平坦な胸と、それを中央で分かつような手術痕のみがそこにあった。

 肌もつるつるすべすべだ。

 そしてこの感触は間違いなく。


 「君」の体だった。


「僕って……お前そんなキャラだったか?」


「あんまり傷つけたくないからハッキリ言わないけどさ……失って驚くほどの物も元々持って無かったよね?」


「いやっ、違っ……!」


 水面に映った自分の顔を見て、その疑いは確信へと変わった。

 間違いない、この体は君の姿をしている。


「なんだか……様子が可笑しい」


「まさか発作かっ!?」


「……っ!」


 咄嗟に辺りを見回し、僕は湯船から飛び出す。

 皆から距離を置くために走って更衣室の方へ逃げる。


「あっ!ちょっと!」


「どうしたんだよ!?」


 更衣室に置かれている大鏡。

 それは君の姿をした僕の体を鮮明に映していた。


 恐る恐る、鏡に向かって手を伸ばす。

 鏡の中の僕の、胸の手術痕に指先が触れる。

 

 その直後、僕の意識は鏡の中の君に引き込まれるようにして、失われた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ