すれ違いの駅
再び夢幻の駅へ。
相変わらず人が多く、わらわらと盛り上がっていた。
「えぇっと、旅館行きはこっちの方ですね」
構内図を見ながら君が僕の手を引いて歩く。
人混みを掻き分け、階段を駆け上がる。
暫く昇っていくと「ここですね」といい君がホームの方へ出た。
周りには旅行鞄を持った家族だと思われる団体や、老人夫婦だと思われる二人組などが並んでいた。
「電車が来るまではまだ時間がありそうだね」
「そうですね」
君と僕は並んでホームに立つ。
電光掲示板には次に来る列車は止まらずに通過すると示されていた。
反対側のホームにも人混みが出来ていた。
僕はなんとなく、その列を眺めていた。
ふと、一人の人物に目線が移った。
深い深い海底のように青い髪。
透き通る青空のように澄んだ青い瞳。
それらを引き立たせる白いヘッドフォンに地面すれすれなほど長いマフラー。
その少女は自分の隣に立っていた、もう一人の少女と手を繋いでいる。
神々しささえ感じる、金の長髪。
月輪のように美しい、金の瞳。
黒いヘッドフォンと同じく長く黒いマフラーを首に巻き、黒に金の模様が入ったパーカーのような服を着崩している。
パーカーの下には何も着ていないようで、素肌が見え隠れしていた。
そして僕は、その二人にどこかで見覚えがあった。
どこだかは忘れた。
いや、思い出せない。
でも僕は確かに、あの青い少女と金の少女に出会った事がある。
『間もなく電車が通過します』
構内に流れるアナウンスも、耳に入らなかった。
僕は二人の方をじっと見る。
青髪の少女の目線が、ゆっくりとこちらの方に向く。
僕はその少女に釘付けになり、目が逸らせない。
少女の口が、ゆっくりと笑み、そして何かを呟いた。
その直後、轟音と共に目の前を電車が走り抜け、視界が遮られる。
風と音により僕の意識は引き戻された。
「どうしたんですか?」
君は心配そうに僕の手を握る。
「いや、大丈夫だよ」
そっけなく返事をして、再び目線を戻したが、そこに二人の姿は無くなっていた。
それから10分ほど待つと、目的の電車が到着する。
モダンなつくりの、古めかしくもカッコいい列車だ。
僕と君はそれに乗り込むと、迎え合わせの席に腰掛けた。
程なくして列車は走り出す。
「楽しみですね!」
「うん……そうだね」
君はとても楽しそうだった。
でも、僕の心はあまり晴れなかった。
あの二人の少女の瞳が、僕の脳裏に焼き付いて、離れなかった。
列車は僕達を乗せて進んでいく。
次の世界を、目指して揺れる。




