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16ー8 記憶消去、請け負います。……200万で

 天宮城に向かって手を差し出すドライアド。天宮城は最初訳がわからず首を捻った。


「えっと?」

『握る』

「こう?」


 普通に握手するように手を握る。するとドライアドはそれでは不服だったようで指を絡ませるようにして繋ぎ直す。所謂恋人繋ぎだ。


「?」

『ん』


 暫くそのまま無言の時間が流れる。


「えっと………これはなに?」

『むぅ。大きい』

「手が?」

『体』

「俺一応大人だし………」


 昔は栄養不足でかなり小さかったが今はちゃんと成長してそれなりに高い方である。


 一人暮らしをするようになって節約であまり夕食などをとらなくなったが最近は食べっぱなしだ。


 地味にではあるが未だに少しずつ伸びている。


『まだかかる』

「いや、これなにしてんの?」

『木』

「はい?」


 返答になっているのか、それは。


「木ってなに」

『ん、もう出来る』


 だから何が、そう言おうとした瞬間に何かが体の中に流れ込むような感覚を覚えた。それは血のように全身を巡り、やがて違和感しかなかったそれは徐々に体に馴染んでいく。


「こ、れは………?」


 能力を本気で使ったときと似たような虚脱感。今の一瞬で一キロ本気で走ったような疲労が一気に来たような感じだ。


『大きくて、よかった。小さかったら死んでる』

「いや俺の体になにしてんの⁉」

『契約』

「は?」

『今から私はあなたと対等な関係。だから一緒に行く』

「………はぁぁあああああ⁉」


 珍しく天宮城が素で叫んだ瞬間だった。


「い、1から説明してくれ。なんで一緒に行く事になってるんだ」

『…………ダメ?』

「いや、駄目とか駄目じゃないとかそういう話じゃなくて」


 とりあえず何をしたのか説明がほしい。ドライアドは不思議そうな顔をして、


『対等』


 天宮城と自分を交互に指差す。


「うん。わからないかな」


 質問しているのとは違った答えが返ってくる。すると横からスラ太郎が顔を出す。


「キュ、キュイ!」

「?」

『紙とペン頂戴って言ってる』


 本当にそうなのかわからないがとりあえずノートとペンを空中から取り出してスラ太郎に渡してみる。


 スラ太郎の体の一部がにょん、と伸びてペンを掴んだかと思うと高速でそのペンが動いていく。


【読めますでしょうか】


 恐ろしく綺麗な字でそう綴られている。


「⁉⁉⁉⁉⁉」


 唖然としている天宮城をよそにまたなにかを次のページに書いてこちらに見せる。


【ドライアド様とのご契約をされて大層驚きの事かとは思いますが、それについては拙者より説明させていただきます】


 お前誰だよ。そう突っ込みたくなるような文章だ。蜜柑の皮やらゴミやらをジュワジュワと取り込んでいるあのスラ太郎なのか。


 一言も言葉を発せずにいる天宮城。それを肯定と受け取ったらしいスラ太郎はまた高速で何かを書いて見せる。


【以前、アイン様から世界樹のご説明を受けたときに神精霊はある一族と契約を交わしているという話がありましたが覚えていらっしゃいますよね。ご主人様はそれを今為されたのでございます。本来ならば儀式などが必要になることですがご主人様の受け皿が大きかった為にこのような簡易儀式でも契約が完了したのです】


 ずらっと並ぶ言葉。一瞬、ご主人様って誰だよ、と突っ込みかけて自分だと気づき赤面する。


 正直天宮城の羞恥心のツボがわからない。


【これによりこの世界樹、ルペンドラスとの魔力的な繋がりが出来ましたのでドライアド様は普段離れることの出来ない世界樹からご主人様の側に限り動くことが可能となりました】

「いや、ちょっとストップ」

【なんで御座いましょう?】

「スラ太郎、だよな?」

【愚問でございます】

「…………そんなキャラだったの?」


 質問は山ほどあるがとりあえず一番気になるのはそこである。


「きゅ」


 こくん、と首肯く。


【拙者はスラ太郎で御座います】

「あ、なんか凄い名前とか見た目とかのギャップがヤバイな、これ………」

【変更いたしましょうか?】

「いや、変更しなくていいよ。いいけど」


 もっとこう………子供っぽい感じかと思っていた。アインや琥珀に見せたらどんな反応をするだろうか。


「お前は自分の性格と名前があってないの気にしてないの?」

【ご主人様にいただいた名前で御座います。反論などもっての他、拙者も気に入っております故】

「マジか」

【マジで御座います】


 スラ太郎がキリッとした表情で敬礼をする。見た目が可愛らしすぎるので全然威圧感などはないのだが。


「で、お前字書けたっけ?」

【ご主人様のノートを見て、勝手ながら】

「凄いなお前」

【お褒めに預かり光栄の極みで御座います】

「……………」


 スラ太郎のイメージがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じながら未だ手を繋いだままのドライアドに目を向ける。


「木から動けないのか?」

『ん。だからニールもナールも契約した。私も会いに行く』

「ああ、ここに来たことあるんだ?」

『先月も来た』

「割りと頻繁だな、神精霊⁉」


 余程の暇人………暇精霊なのだろうか。他の世界樹があるところからここまで来るだけで空を飛んでも数日は掛かる。相当時間があり余っているようだ。


『だから、私も外に出る』

「そんな引き籠もりの小学生みたいな……」


 外の話を聞いていて羨ましくなったのだそうだ。ことあるごとに自慢してくるらしく、そろそろ誰かと契約したいなと思っていた頃らしい。


「そんな適当でいいのか」

【ドライアド様が決めたことで御座いますので問題はないでしょう。ドライアド様が付いてくるとは言っても文体をお作りになられるだけで本体はここに残ります故、心配もないかと】

「便利だな。っていうかスラ太郎はなんでそんなこと知ってるんだ?」

【ドライアド様からお聞きいたしました】


 どうもドライアドはすべて理解はしているものの説明が下手で時間が掛かるらしいのだ。それを根性ですべて聞いて全部まとめて話してくれているらしい。


 スラ太郎が有能すぎて恐い。


「えっと、それで魔力的な繋がりが、とかこの辺はどういうこと?」


 スラ太郎が書いた文章を指差し、聞くと、


【世界樹から離れられない理由は魔力が薄い地域では生命力そのものが弱まってしまうからなのです。世界樹は魔力を空気中に発散しております故、この辺りなら問題はないので御座いますが、砂漠などの魔力が充満しにくい場所では弱ってしまわれるのです】


 次のページに木の絵とドライアドの絵を描く。しかも上手い。


【このように、木から直接魔力を吸い上げて生きておられるので御座います】


 木の下から線を伸ばしドライアドにくっつける。そしてそのとなりに天宮城の絵を描く。恐ろしいくらいに顔が整っている。これ誰だよ、といったレベルだ。


「俺美化され過ぎじゃないか」

【そんなことは御座いませぬ。ドライアド様は今魔力を繋がれたのでご主人様にこの魔力が直接流れ込んでいる状態で御座います。つまりご主人様はルペンドラスの分身のような存在になられたので御座います】

「………はい?」

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