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14ー4 戦いへの下準備

「わっ⁉」


 ビビりながらも引き金を引くと少しだけ狙ったところから外れたがちゃんとゴキブリに命中、ゴキブリが即死する。


「アレク。何で毎回あれなの」

「いや、罪悪感があんまないから………」


 最近、ゴキブリと戦って経験値を稼ぐ毎日である。


「ゴブリンとかは? 出せないの?」

「イメージが出来ないんだよ。スラ太郎みたいになるんじゃないかな」

「キュピ?」


 雫型のまるっこい生物(?)が可愛らしく声をあげる。


「可愛いゴブリンって想像できないわね……」

「俺は元が判らんからな……」


 なぜか倒すために動物を出すと大抵巨大である。ゴキブリ以外にも試してみたが、蛾だったり芋虫だったりするそれらは全部でかかった。


 特に芋虫など5メートルはあったように見えた。


 現れた瞬間、あまりにも気持ち悪くて速攻で引き金を引いたが。


「なんで虫ばっかりなのよ」

「いや、うん………哺乳類撃ち殺すとか無理だ………」

「生きてけないわよ」


 もういいじゃん、虫でもレベル上がるし………と現実逃避を始めた天宮城に大きなため息を返すアイン。


 この世界ではそれが普通なのだ。


「まぁ、別にいいけど。そのぶんコハク様が倒してくれるんでしょ?」

『任せろ』

「なんで琥珀に様付けしてんの」

「ドラゴン………それも白竜はかなり神聖な生き物なの。話したでしょ? 第二次ラグナロク」

「ああ、うん………」


 琥珀が胸を張って勝ち誇ったような笑みを浮かべてきたのでいらっとした天宮城はわざとそれを無視する。


「俺はいいんだ………どうせ服飾師だし? 戦うの好きじゃないし?」

「また始まった………」


 あまりにも偏りすぎたステータスやスキルにもうなにも期待していない天宮城。たまに一人で落ち込んでいるのだ。


「ピキュ」

「スラたろぉ………俺お前よりも弱いんだってさ………」

「きゅ?」


 もうこうなったら誰にも止められない。元からネガティブ思考な天宮城は一回塞ぎ込むとなかなか回復しないのだ。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「りゅう!」

「ぐぇっ⁉」


 ズシン、と強烈な痛みが走り、強制的に目が醒まされる。


 傷む腹を押さえて悶絶する天宮城などお構い無しにかなり強引に風間が天宮城を揺する。


「りゅーうー」

「ゆ、ゆうき………なにすん、だ………」


 どうやら風間が天宮城が寝ているところに突撃し、膝が腹部に直撃したようである。


「ごーはーん!」

「う、うるせぇ………眠いんだ、寝かせてくれ」

「お弁当も! ねぇ!」

「ーーーっ! 自分で作る努力をしろよ⁉」

「やだ! 無理‼」


 ギャーギャー言い争っていると部屋の扉が開く。


「なんなんだお前ら朝っぱらから………今日俺休みなんだ。静かにしてくれ」

「それ俺が今一番言いたいんだけど⁉」


 風間を指差して喚く天宮城。寝ているところを強引に起こされたら誰だって怒るだろう。


「俺も疲れてんの! ゴキブ―――じゃない、仕事で疲れてんの! 結城の10倍は働いてる自信があるね!」

「10倍は言い過ぎだよ! せめて5倍だよ」

「お前らなんの言い争いしてんだ。結城。俺たちのなかで一番働いてんのは龍一だ。休みの日くらい休ませてやれ」

「むー」


 頬を膨らませて怒っているアピールをする風間。


「いいもん! 経費でス○バ行ってやる! 秋兄とりゅうのバーカ!」


 そう言い捨てて転移を使って逃げた。


「「………なんで俺らさりげなくディスられてるんだ………」」


 呆然とそう言う二人の頭のなかでは、女ってズルい、という言葉が回っていた。


 色々あったので久しぶりの休みである。


 誘拐事件からほぼ休みなく働いていたので余計に気が休まらなかった。


「あー、暇って素晴らしい」


 部屋でごろごろと寝転がりながら本を読む。休日を満喫しているようでできていないような天宮城。すると突然机の上の携帯が着信を告げた。


「? 知らない番号だな………」


 表示される番号は天宮城の携帯に登録されていない番号だった。念のために録音のボタンを押してから電話をとる。


「はい、もしもし」

「……………」

「……………?」


 一向に喋り出さないのを不思議に思い、眉を顰める。すると、たっぷりと間をとって、


「…………能力者協会の、人ですか? …………思い出を、消せる人と知り合いの」


 天宮城は直ぐにああこの人か、と納得した。あの自販機の人がどう彼女に話したのかわからないが、どうやら天宮城がその能力者だとは思っていないようだ。


「………ええ、そうです。お話は伺っております。なんでも、幼馴染みの事を忘れたいとか」

「…………はい。できますか…………?」

「判りません。正直、話が通じる相手ではないので」

「どういう、ことですか…………?」

「そうですね………もし、本当に忘れたいのなら。それなりの代償が必要なのです。こちらも、あなたも」


 ローリスクハイリターンはそうそうない。どちらかが低ければ両方低いのだ。


 リスクを冒す、覚悟はあるのか。そう天宮城は聞いているのだ。


「………大丈夫、です………。私、できることなら、なんでもします………お金も、払います」

「金銭の問題ではないのですが………いいでしょう。こちらに来ることは可能ですか?」

「能力者協会ですか………?」

「はい」

「………わかりました…………今から行きます………」


 電話を切り、こめかみを軽く揉む天宮城。


「これは結構重症だな………。声が完全に沈んでいるだけじゃない……………俺と一緒だ」


 グッと伸びをして真剣な目を携帯に向ける。


「なんとかしてあげれればいいんだけど、これは記憶云々では終わらない気がするなぁ……」


 パタパタと近くを飛んでいる琥珀に目で合図して肩に乗るように言い、乗ったのを確認すると直ぐに部屋を出た。


「俺ができてないこと、人に押し付けるようでなんか嫌だなぁ」


 いつものように、鏡で笑みを作れているのを確認してから靴を履いた。そう、いつものように(・・・・・・・)

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