14ー3 戦いへの下準備
「アイン。なんか言った?」
「え? なにを?」
首を捻る天宮城を不思議そうな目で見つめるアイン。天宮城は虚空からステータスストーンを取り出して握った。
ーーーーーーーーーーーーー
【名前】 アレキサンダー・ロードライト
【種族】 人族 絶滅種・希少種
【職業】 服飾師
【レベル】 5(↑4up)
HP 30/30(↑20up)
MP 0/0
SP 72/72(↑52up)
攻撃力 17(↑5up)
敏捷 54(↑24up)
魔力 0
魔耐 7(↑4up)
防御力 14(↑4up)
知能 692(↑14up)
器用さ 761(↑29up)
体力 23(↑8up)
回復力 10(↑6up)
【スキル】 服飾師 鑑定(レベル1)・裁縫(レベル2)・デザイン(レベル3)・最適化(レベル5)
【加護】 なし
【レイド】 0
【専属武器】 バズーカ砲〔神解け〕
【装備】 なし
ーーーーーーーーーーーーー
「このバズーカ神解けって言うんだ………。雷の事だったっけ」
「突然どうしたの? あ、レベル上がったね、おめでとー」
「うん、スッゴい残念なステータスに変わりはないよ」
「もうそこは気にしない方がいいんじゃないかな……?」
そう言われても、結果的に残念なのはなにも変わらない。
「そういえば………このレイドって何?」
「レイドはね、物を買ったりするときに使うんだよ」
「金?」
「金の代わりになるものって言えばいいかな? お金と交換できるんだよ」
「へぇー」
便利な世の中だな、と感心する。
「それにしてもこのSPってのがなんなのか気になるよなー」
「それ私もわかんない」
不可解なのがこのSPという表示。今回のレベルアップで最も上がったものなのに未だに謎である。たまに見るといつの間にか消費されていることがあるのだが感覚がわからないのでいつ使っているのかも不明だ。
本人も一切自覚がない。
「で、俺に魔力が無いのはなんでだ」
「たまにいるのよ、魔力が生れつきない人は。………まぁ、大抵が奴隷に落とされるんだけどね」
「恐い」
天宮城はなるべく他人に見せないようにしなければと改めて思う。
「あ、そういえば………あーつ、って何?」
「技術のこと? …………ああ‼ 教えてなかったね」
アインはそっかそっかと頷きながら腕を組む。
「んー、でもあれがないからなぁ………ねぇ、アレク。このステータスストーンが黄色になって中の部分が真っ赤の石って出せる?」
「えっと、こうか?」
少し考えて半透明の黄色い石を出す。
「それ握って」
「?」
グッと握り込むと石が光ってステータスとよく似たものが出てきた。ただ、書いてある内容が違う。
「それは技術ストーン。技術っていうのはスキルとちょっと似てるんだけどその人の技能を表示してくれるものなんだよ。十段階でレベル分けがされてて、1~2が初心者、3~5が中級者、6~8が上級者、9~10にまでなるとそれだけで生きていけるよ」
見てみれば早いんじゃない? と急かされ、天宮城も目の前のそれに目を移す。
ーーーーーーーーーーーーー
【技術】 裁縫(レベル7)・料理(レベル9)・掃除(レベル4)・投擲(レベル1)・算術(レベル6)
【希少技術】 鑑定(レベル?)
【固有技術】 デザイン(レベル?)・物質創造(レベル?)・物体破壊(レベル?)
所持技術ポイント 100
ーーーーーーーーーーーーー
「最後の方全部レベルわかんないし何これ。なぁ、アイン。スキルと技術って何が違うんだ?」
「簡単な話よ。格が違うわ。スキルはその職業につかないと取れないし、レベル上げも難しいからね」
アイン先生によると、スキルは技術の上位互換らしい。
ただ、スキルは技術に反映するので天宮城の技術のほうにも鑑定やデザインが載っていたのだ。
技術はスキルよりも圧倒的に弱いが、その代わりに誰でも努力さえすれば所得出来る。天宮城は家事能力が半端ではないのでとんでもないレベルがついているのだが、本来ならばあり得ない。
そこらの料理人でも技術のレベルは7だろう。しかも技術はレベルが5を過ぎた瞬間にとてつもなくレベルが上がりにくくなる。
それをあっさりとクリアしているところが地味に凄いところだ。
ちなみに効力が強い順に上から並べていくと、
・技術(レベル9、10)
・スキル・技術(レベル8)
・技術(レベル7、6)
・技術(レベル5~1)
である。
レベルが9を超えれば同じ名前のスキルを持っている人に勝つことはできるが、そこまでレベルを上げることをしようとするほどの人などほぼいない。
レベル5からの壁がとてつもなく高いのだ。
「それにしてもアレクの料理、レベル凄いわね」
「俺もここまでだとは思ってなかった」
「料理人に転職したら?」
「まだ服飾師として働いてもいないのにか」
「まぁ、それもそうね」
天宮城は自分が物を作るときに使っているのは固有技術の物質創造と物体破壊だったのかと初めて気づく。
物質創造で物を作り、物体破壊でそれを消す。
ほぼ無意識にやっていたことなので技術のひとつだとは思っていなかった。
「技術ポイントって?」
「それを使うと技術のレベルが上がるの。レベルが増えれば増えるほどポイントは必要なんだけど、それは人それぞれみたいね」
鑑定を掛けたらなんの技術がとれるかわかるんじゃない? とアインに言われたのでその言葉の通りに鑑定を掛けてみた。
すると、新しい画面にズラッと取れる技術が並ぶ。
「へー、結構あるのな」
「そうなんだ」
「見えないのか?」
「見せようとしなければ基本ステータスとかでも見えないよ」
「あ、そうなんだ」
とりあえずスマートフォンを弄るようにスクロールしてみた。かなりの数の技術と所得ポイントが載っている。
アイン曰くレベルをあげるのは大変なので新しい技術を所得したほうがお得なのだそうだ。
天宮城はその中から今のところ必要そうな【射撃】【命中】【HP自動回復】を各々レベル1ずつ獲得、残りのポイントが半分の50になった。
射撃はバズーカを取り合えず撃っていれば獲得できそうな気もするのだが、バズーカの方を沢山使ったのにブーメランの投擲の方が技術を獲得していたのでそれをとったのだ。
命中とHP自動回復は言うまでもない。
「アイン。ここから先が灰色なんだが」
「なにが?」
アインに見えるように鑑定を表示し、灰色になっている部分を見せる。
ポイントが足りないのかとも思ったが、その場合だとここに表示されないらしいのでそういうわけでもなさそうだ。
灰色で書かれたものは、字も殆ど見えない上に鑑定を掛けても反応しない。何だか不気味である。
「バグ? そんなことあるのか?」
「わかんない。私もこれの専門家じゃないし」
得体の知れない技術は放っておくことにした。むしろ、それ以外に方法がない。
この灰色の表示の技術はもっと先に、天宮城を大いに助けるのだが、それをまだ天宮城は知らない。