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14ー1 戦いへの下準備

「6氏族目ね。人狼族よ」

「人狼族? あれ? アインって」

「その通り! 私だって立派な10氏族のひとつなんだから!」

「おおー」


 大きく胸を張って自慢するアイン。よほど誇らしいことなのだろう。天宮城は欠片も理解できていないが。


「人狼族はワーウルフって呼ばれることもあるけど、私は人狼って響きが好きね。10氏族の中で瞬発力と敏捷に優れていることで有名なのよ!」

「へー」

「因みに、人狼族には毛色があって濃い色ほど珍しい種族なの」

「じゃあアインって相当珍しい種族なのか」

「ふふん!」


 得意気に鼻をならすアインを見て、天宮城は人狼族、アインにこの話をすると喜ぶ、と書いた。アインが読めないからって好き放題やりすぎである。


「次、小人族ドワーフね。鍛冶で有名なのよ。それでもって力の強さは10氏族の中でも群を抜いているわ」

「やっぱり力は強いんだな」


 ドワーフといえば酒の瓶を持って身の丈と同じくらいの大きさの槌を振り回すイメージが根強いが、こちらでも実際そんな感じなのだそうだ。


「8氏族目、人魚族マーメイド。この人魚族マーメイドはすこし私たちとは違って殆ど姿を見せないの。だから人族ヒュームみたいに半分お伽噺の存在ね」

「へー」


 相槌を打ちつつ話しを促す。


「次、翼人族。言葉のまんまだけど背中から羽が生えてるの。魔力が羽の数に比例してて、6枚ある翼人族はほぼ無尽蔵に魔法を放てるらしいわよ」

「羽が六枚…………動くのに邪魔そうだな。どんな服着てるんだろ」

「アレク……気になるところが違う気がするのだけれど」

「?」


 呆れたようすのアインだが、気を取り直して次の説明にはいる。


「最後、鬼族」

「きぞく?」

「そう。昔は鬼族きぞくって呼んでたらしいんだけど、今は貴族と混同されるからおにぞくって呼ぶわね。吸血鬼とかが有名ね」

「吸血鬼? ヴァンパイアか?」

「ヴァンパイアはアンデッドじゃない。吸血鬼は吸血鬼よ」


 どうやらヴァンパイアと吸血鬼は別物らしい。


「鬼族はちょっと気性が荒いことで有名で、魔法が不得意なのだけれどその他のステータスは平均して高いのよ」

「オールマイティってことか」

「そうね。そういう認識でいいわ」


 ここで、天宮城があることに気付く。


「全部人ってつくんだな」

「まぁ、それは、ね。魔物と分ける為にも呼び方は大事だし」

「へー」


 納得したように頷いて、


「ステータスって結局なんなんだ? 俺が赤ん坊レベルってことは俺、生まれたての赤子に組み敷かれることとかあり得るってこと?」

「そんなわけないじゃない。首が座ってないのにどうやって戦うって言うのよ」


 アインから説明されたことを纏めると、ステータスとはその人の力量を映すものではなく、その人にどれだけ力が上乗せされているか、という分なのだそうだ。


 つまり、天宮城のステータスが例え10だとしてもステータスで100を越えた子供に勝つことも可能なのだ。


「成る程。じゃあステータスと強さって必ずしも比例するものではない、ってことか」

「そうね。でも、やっぱりステータスは目に見えるものだしそっちが増えれば体鍛えるより強くなれるから」

「…………そうか」


 現在知能と器用さしかまともじゃないステータスである。なんとしてでもレベルを上げなければ、と意気込む天宮城。


「レベルってどうやったら上がるんだ?」

「なにもしなくても上がるわよ? 生活さえしてれば。でも、手っ取り早くあげるなら魔物を倒さないといけないわね」

「…………それ以外の手っ取り早い方法ある?」

「勝てば上がるわ」

「戦いが必要なのか」

「ええ」

「……………」


 天宮城は暴力が得意ではない。やむを得ず戦うこともあるがそこまで強くない。どちらかといえば能力のゴリ押しである。


 なんとか戦わない以外にレベルをあげる方法はないのかと考えるも、やはりそれしか方法はないらしく、後は気楽に構えてレベルが上がるのを待つ必要があるそうだ。


「でも、アレクのステータスって激弱だからさっさと戦った方がいいと思うわよ」

「今凄い傷ついた」


 この世界ではそれが普通らしく、アインもそうやってレベルを上げたらしい。


「まずもってどうやって戦うんだよ。殴るのか? 殴って倒せるのか?」


 殴ったとしてもあまりダメージは通らない気がする。


「そうね………ねぇ、賭けてみない?」

「え?」









「本当にこんなので大丈夫なのか?」

「村に出張するときとかこんな感じだし大丈夫よ。神官である私もいるしね」

「なんか凄い不安だ…………」


 天宮城は紙の上に立たされてその周りに幾つか置かれている小さな石を不安そうに見詰める。


「それじゃあいくわよ。テイッ!」

「その掛け声要る⁉」


 バチッと音がして石がひとつずつ砕けていく。


 石は砕けた後、塵のようにサラサラと空気に溶けて消えていく。


 錫杖フィリアを持ったアインがぶつぶつと何かを唱えながら天宮城の足元の紙の上に錫杖の尖端を置き、びりっと破る。


「これ、なんの意味があるんだ…………」


 がっくりと肩を落とす天宮城を横目にアインは石が砕けた場所に一際大きな拳大の赤く光る球体を置き、気の抜けるような声を出しながら錫杖で叩き割った。


「テイッ!」

「え、っ⁉」


 天宮城はその瞬間、目の前が真っ白になった。


 貧血か? と一瞬疑ったが、直ぐに視界は元に戻った。


「出来たけど………これ、なに?」


 天宮城の目の前に置かれていたのは、日の光を銀色に反射する巨大なバズーカ砲だった。


「え…………バズーカ?」

「ばずーかっていうの? なにこれ? 杖?」

「いや、杖じゃなくて………え、こういうのありなの? 文明的にアウトじゃない?」


 持ち上げてみたら、思いの外、というか滅茶苦茶軽かった。


 プラスチックの玩具かよ、と一瞬思ったほどである。だが、匂いや手触りは完全に金属のそれだ。


「めっちゃ軽いけど」

「専属武器はその人の魂を直接形にしたような物だからね。その人からすれば重さなんてあってないものだよ。昔は魂具現化魔術って呼ばれてたようなものだし」


 天宮城はそれを肩に担いでみた。恐ろしいほど軽いが、触ったこともない筈なのに数年使い続けたペンのように手に馴染む。


 使い方も、なんとなく理解できた。


「ちょっと使ってみていい?」

「いいけど、どうやるの?」

「多分ここを………」


 誰もいない方向に石を出現させ、照準を合わせる。夢の中なので好き勝手できるのが楽でいい。


 そしてそのまま引き金をひいた。


 ドッガァアアアン!!!!!!


「「………………え?」」


 粉砕どころか爆散した。


「え、ちょっとまって。理解が追い付かない」

「どうなってんの⁉ 何その武器⁉」


 パニックになる二人。天宮城は自分がやったことに唖然とし、アインは武器の性能にビビっている。


「………あ、これ威力変えれるみたいだ」

「あ、そう…………」


 こんなのおいそれと使えない。あまりにも危険すぎる。


『おい、凄い音がしたのだが』

「ああ、琥珀………俺、ここでやってける気がしない」

『突然どうした』


 横に降り立った巨大なドラゴンに茫然自失とした様子で状況を説明する。


 完全にパニックになっていてもちゃんと説明するところは天宮城らしい。


『? ならば使わないときは別形態にすればいいだろう』

「え? 出来んの?」

『お前なら出来る筈だ。バクの力を魂が引き継いでいないとは考えにくい』


 つまり、琥珀が変身できるなら魂の形も変えれる筈だ、と言っているのだ。


「えっと、どうやんの」

『なに、いつものように、だ』


 言われた通り、強く念じる。


(別の形に…………出来ればあんまり近くで戦わなくてすむやつ)


 ちゃっかりなにか別のことを祈っている天宮城だが、祈りが届いたかのようにバズーカが変形を始める。


「おお‼」


 巨大なブーメランだった。


「「……………………」」


 これ、武器? と二人揃って同じことを考えた。


「これ、どうやって戦うんだ?」

「私に聞かれても」


 内側に取っ手がついていてそこを握る仕組みのようだ。


 なんとなく使い方がわかったのでやってみる。


「よっ!」


 ブォン、と空を切りながら高速でブーメランが飛来し、的として出した岩を滑らかに分断、返ってきた。


 それをとるタイミングもなんとなくわかったので空中に飛び上がって取っ手の部分をつかんで地面に降りる。


「……………これは、これで危ないな」

「うん。正直ここまで凄いとは思ってなかったよ」

『龍い―――アレクの魂だ。物が良いからな』


 とんでもない武器を手にいれてしまったようだ。


 因みにこの後、他にも変形できるかと試したところ、巨大な鉄扇と普通の大きさの手芸針になった。


 天宮城は手芸針をみて、武器ですらないのにまともなものがやっと出たと涙を流した。


 それを見たアインと琥珀がドン引きしていたのだが、泣きまくっている天宮城は最後まで気が付かなかった。

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