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12ー1 覚醒の段階

 もうすぐテストが始まるので、暫く更新できない、又は超遅くなるかもしれません……。


 なるべく早めに書くようにしますのでテストが終わるまでお待ちいただけると嬉しいです。

「っ、クソッ! 龍一が居るから下手に能力かけれないぞ!」

「弘人は踏ん張れ! 昌平‼ もっと出力上げろ‼」

「これ以上は無理だ! 秋兄も俺も持たない‼」


 両手を藤井と上田に向けながら坂本が能力解放をかけ続ける。


 藤井が右手を振りかぶって思いっきり突き出すが、見えないガラスのようなものに弾かれる。


 それに大きく亀裂が入るが、一瞬腕をひいただけで元に戻ってしまった。


「最悪だ………」


 目に入りそうになった汗を乱暴に袖で拭いながら藤井は低い声で悪態をついた。









 事が起こったのは数十分前。天宮城が通信を切って少し経ってからである。


「こっちはもう終わったよー」

「オッケー。後五部屋あるからそこも頼む」

「ラジャー」


 敵の本陣にいるとは思えないほど能天気な声を響かせる風間が何度も転移を繰り返して荷物を運ぶ。


「手伝っていただいてありがとうございます、水野さん、小林さん」

「いえ。こっちから言い出したことですし」

「龍一君が無事で良かったです」

「仕事全部押し付けられましたけどね………」

「「ははは………」」


 乾いた笑いしか出ない。現在、証拠品になるものを色々と探っている最中なのである。


 ファイルのなかを覗いたりしていると、突然風間が立ち止まって辺りをキョロキョロと見回す。


「結城?」

「しっ! 何か聞こえる」


 そう言われ全員が耳を澄ます。


「うっわ⁉」


 空中に男が突然現れて悲鳴をあげながら盛大に机の上に落下した。肩にはもう一人男が担がれている。


「「「龍一⁉」」」


 全員の思考がシンクロした。


「おい、お前! 龍一を放せ!」

「そこを動くな!」

「いや、別に僕は敵対するつもりはないよ………?」


 肩を竦めて立ち上がる男に警戒心を高めるが、一人の言葉によってその警戒心はいくらか和らいだ。


「大丈夫だと思います………」

「水野さん? なんで?」


 風間が聞き返すと水野がある一点を見つめながら、


「琥珀ちゃんが敵じゃないって」

「コハク………りゅうのバクだっけ?」

「はい。そうみたいです」


 天宮城の背の上で琥珀が【このひとてきちがう】と拙い字で書いたプレートを掲げているのだ。


 事前に天宮城の琥珀が何をできるのか知っていた水野はそれを信じるようである。ペンとボードくらいなら自力で出せるのだ。


「水野さんがそう言うなら………」


 あげていた拳を少し下げる。それでも臨戦態勢には変わりないが。


「彼からこれを預かっているんだ」


 男は軽く自己紹介をしながらポケットに入っていた手紙を取り出す。天宮城のキッチリとした文字でこの人は何なのか、今自分はどういう状態なのかということを事細かに説明があった。


「龍一らしい書き方ね………」


 葉山が苦笑しながら手紙を読む。ほとんど説明文のそれは、天宮城の性格をハッキリと表していた。


「成る程…………貴方はお父さんを裏切ると」

「言い方は悪いですが、そういうことですね」

「…………」


 腕を組んで今後のことを考える藤井だが、その思考は突然止められることになる。


 能力の一つ、第六感が突如発動し、その能力を持っている藤井と足立が全員に後退するよう指示しながらその場から飛び退く。


 それは正しい判断だった。


 先程までいた場所に銃痕が刻み込まれる。遅れて耳に発砲のけたたましい音が届き、五感を強化している藤井や上田がその音に顔をしかめる。


 だが、そううかうかしていられない。上田はすぐ自分の周辺に全員を集め、重力を自分を中心とした輪から外れたところだけに一気にかけていく。


 こうしておけばもう一度発砲されても弾が逸れるのだ。


「っ、誰だ!」


 物質変換の能力者、三田が睨むように周囲を観察しながらそう叫ぶ。


 返事はなかった。その代わりにどこからか発砲音が鳴り響く。


 弾は全て逸らしているが、このままでは上田の体力が持たない。


「キャッ⁉」


 高い悲鳴に振り向いてみると、戦えないからと後ろに下がっていた水野が天宮城の体を必死の形相で引っ張っている。


 見れば、天宮城の体が沼にでも落ちるかのようにゆっくりと、しかし確実に沈んでいっている。それを見た数人が水野に手を貸して引っ張りあげようとするがびくともしないどころかどんどん引きずり込まれている。


 しかも本人は意識がないので外に出ようと踏ん張ることもできないのだ。


 藤井も参加しようかと一瞬迷ったが、下手に強化した今の状態で引っ張って天宮城の体が壊れない保証がないので止めておく。


「焦らなくても大丈夫だ! この系統の能力はそんな遠くに飛ばせない筈だ!」


 代わりにそう言いながら周囲を注意深く観察する。


「あ、ああ………」


 引っ張りあげることができないまま天宮城が完全に地面に飲み込まれる。と、その瞬間、藤井がある一点を見つめて持っていた小石を思いっきり投擲する。


「障壁!」


 そると、聞き覚えのない声が周囲に響き、轟音をあげながら小石が粉砕される。


 否、強引に方向を変えられた小石が空中で粉砕したのだ。なにかに阻まれるようにして。


「危ないところだったな……」


 頭をかきながら暗がりから出てきたのは一人の女性だった。


「…………! リノ先輩…………」

「? ……ああ、坊ちゃんか。最悪なことをしてくれたな。ボスもスッゲェ怒ってるぜ。まぁでも、今なら飯抜き二日間で済ませてやるってさ」

「それが嫌だから僕は抜けると何度も言っていたじゃないか」

「それで抜けれるほど甘くはねぇよ、坊ちゃん。昔からそうだっただろう?」


 寝たきり状態の天宮城をここ数日世話していた東雲だった。


 吉水が顔をしかめる。それはそれは嫌そうに。


「でも僕は戻る気はない」

「それは無理だよ、坊ちゃん」


 パッと電気が一斉に付き、一瞬全員の目が眩む。視界が晴れた頃、少し離れたところに天宮城が倒れているのが見えた。


「龍一‼」


 駆け寄ろうと足を踏み出そうとするが、すぐに思い止まって足を止める。


 行くのをやめた藤井に吉水が声をかけた。


「藤井さん、いい判断だ。確実に罠だからね。龍一君を助けたいなら、先ずはリノ先輩と龍一君の隣にいる賢介を何とかしないと難しいと思う」

「能力は」

「リノ先輩は障壁、賢介は影系の物質転送」

「了解」


 それならなんとか出来るか、と倒す算段を頭のなかで考えながら関節を解す。


「弘人。行けるか」

「任せろ」


 額に青筋を浮かべながら二人が前に出る。相当苛立っている様子だ。


「っ、ぁぁああああああ!」


 突然、天宮城が叫びだした。そのただ事ではない様子に動きが止まってしまう。


「龍一‼ 起きてるのか!」


 声をかけてみるが反応がない。息漏れのような呼吸を浅く早く繰り返し、呻き声をあげながら手は軽く痙攣している。


 天宮城の隣に座っていた吉水に賢介と呼ばれていた男性がスポイトのようなものを口に突っ込む。それはどす黒い液体で満たされていた。


 藤井たちには見覚えのあるそれを一気に煽り、持っていたもう一本を東雲に投げ渡し、東雲もそれを煽る。


「…………?」


 水野、小林、吉水の三人が何をしているのか理解できずに固まっていたが風間の声で何が起こっているのか察する。


「……………あれは、りゅうの力その物だよ…………。りゅうの胸にある石と血を混ぜたものを飲むとレベルが上がるっていうとんでもないもの」

「強くなるのか、あれで…………」


 天宮城の胸にある石は何故か血を使うと垂らすくらいの衝撃でも少しだけ削れる。それをする度激痛が走る上、10分程放置すると効果が消えるので天宮城が他人のレベル上げを嫌がるのもうなずける。


 先程の吉水の呟きに首を振る風間。


「確かに強くはなるけど、一時的なものだし、見てみればわかるけどりゅうの負担も大きいんだ」

「じゃあ、ずっと龍一君からあれをやり続けたら?」

「…………そのままだね。後遺症とかもない、本当に一生効果の続く能力増強剤だよ。………その代償がりゅうの寿命なんて、釣り合わないと思うけどね」


 怒りの籠った目で相手をじっと観察する風間。天宮城を助ける方法を考えているらしい。


「…………ひとつ、いいですか?」

「え?」

「もしかしたら、龍一君を助ける方法あるかもしれないです」

「「「……………は?」」」


 水野の一言に、全員が首をかしげた。

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