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11ー1 異文化交流

 やっとタイトル回収ですよ!

「ふぁ………」

『やっと起きたか、寝坊助』


 ぐぐっと天宮城が伸びをする。花の蜜の香りが漂い、甘ったるい風が若干の暖かさを運んで吹き抜ける。


 真横に巨大な竜の顔が寝そべっているのに一瞬ビビりながら欠伸をしてその場に座り込む。


『あれで良かったのか?』

「何が?」

『組織の手先の可能性もまだ十分にあるだろう』

「ヨイチのこと? んー。まぁ、そうなんだけど」


 いつの間にか手の上に現れた紅茶のカップを傾けながら思い出したようにフッと笑う。


「俺と、似てるから。かな」

『よくわからん』

「なんとなく、ね。それにヨイチには変な親近感があってね。………どっかであったことあるのかな?」

『知るか』


 ふいっと顔を背ける琥珀に苦笑しながら、そっと琥珀の頭を撫でる。


『なんなんだ急に。気持ち悪い』

「酷くね? なんとなくだよなんとなく」

『やはり気持ち悪い』

「おい。気持ち悪い言うなし」


 撫でるといったって顔だけで天宮城全身を越えるのだ。鱗もあるし、ほとんど感覚はないだろう。


「そう言えばお前どこにいたんだ? 見えなかったかちょっと心配したぞ?」

『ああ、ここにいたからな』

「へぇ、珍しい」

『少しやることがあっただけだ。それにただ寝ているだけのお前と一緒にいるのもつまらなかったからな』


 天宮城は琥珀に凭れ掛かりながら小さくため息をついて空を見上げる。


 天宮城の機嫌一つで変わる空は薄い雲で埋め尽くされているが、その隙間からは太陽の暖かく柔らかい光が降り注いでいる。


「………琥珀」

『どうした?』

「俺………これのことを話しちゃったみたいでさ………」

『恐いのか』

「ああ、そうだよ。恐いよ。気持ち悪いくらい恐くて仕方ない」


 虚勢を張るような口振りで冗談めかして言うが、紅茶のカップを持ったその手はカタカタと震えて水面が波打っている。


「これがなんとかなればいいのにって、昔からそれしか考えてないけど。今は余計にそう思う。これがもしあいつら(・・・・)の手に渡ったら………」

『まぁ、普通に敵が強くなるだけだな』

「言葉では簡単だけどな。その異常さが半端じゃないんだよ」


 最高レベルの7か6以外のレベルは全て1レベル上げることが出来てしまう。


 5と6のたった一つのレベル差は特に極端で、出来ることのレベルが段違いになる。


 勝機が完全に無くなるのは間違いない。


 じゃあそれを協会の人にすれば良いと思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。


 この石、使いすぎると恐らく天宮城の寿命そのものを縮めることになるようなのだ。


 他人のレベルを上げることで、その人も天宮城自身でさえも体に激痛が走る仕様になっているのもまた厄介である。


「………皆の足枷にはなりたくない………」


 譫言のように呟かれたそれは悲痛な響きをもって、紅茶の中には透明な水がポタリと落ちた。


「そ、そんなことはないです!」

「…………?」


 どこからか声が聞こえたような気がして天宮城は顔を上げるが人影など見当たらない。


 そもそもここは夢の中で、天宮城が招き入れない限り人は入れないのだ。


 一緒に寝たりすると波長があってしまう人だと入り込んでしまうことがあるが、その時も天宮城はここに人がいると認識できるのだ。


「………幻聴まで聞こえるようになったか」


 いよいよヤバイな、俺。等と呟きつつ琥珀を再び撫で始める。


『おい』

「なんだよ」

『今の、幻聴ではない』

「え? …………お前も聞こえたの?」


 無言である場所に視線を向ける琥珀の視線を追うと見たこともない女性が立っていた。


 真っ白でかなり薄い浴衣のような物を着ていて、見るからに寒そうである。


 若干怯えたような目をして、天宮城を見つめている。


「…………………………俺、あまりにも寂しすぎて理想の女子作っちゃったのか」

『その発想はないだろう』


 天宮城は混乱しつつ、とりあえず頭に浮かんだ説を口に出してみたが琥珀に一刀両断された。


「……………貴方は!」

「………?」

「貴方は、神様ですか⁉」

「…………は?」


 なに言ってるんだこの人は? と琥珀すら固まる。天宮城の一部のようなものなので感情の抱き方もほぼほぼ一緒なのだ。


「え? え? ? 神様? は?」

「だ、だって伝承通りだし………」

「? ? ?」


 なに言ってるのか余計に意味不明である。


『龍一。とりあえず落ち着かせたらどうだ。後お前も落ち着け』

「お前に言われるとは思わなかった………。お前の体も威圧の材料になってんじゃない?」

『成る程。それは一理ある』


 ぽひゅん、と少し間抜けな音を出しながら琥珀が肩乗りサイズにまで小さくなった。


「え? え?」

「あー……立ち話もなんですし、少し座って話をしましょうか」


 あのでかいのはどこにいった、と視線をあらゆる方向に泳がせる女性に苦笑しながら天宮城は地面からテーブルと椅子、お菓子やお茶が出てくるのを強くイメージする。


 数瞬の間の後、イメージ通りのものが出てきた。


「え⁉」

「どうぞ。即席で申し訳ないですが」


 手前の椅子を引いてから奥の席に座る天宮城。女性は最初躊躇って動かなかったが、オドオドしながらもゆっくりと近付いてきて椅子に浅く腰かける。


「………やっぱり、神様ですよね」

「あの、違いますよ?」

「へっ? でも、白いドラゴン連れてるし、目は赤いし、なにもないところから物を出せるし………」

「白いドラゴン連れてて目が赤くて物が出せるのが神様?」

「教会の絵はそうです」


 どうやら教会には色々と特徴の被った神様の絵があるらしい。


「あ、でも顔が違うかな………」

「いや、さっきから言ってますけど違いますからね?」

「じゃ、じゃあ証拠!」

「え」

「神様じゃない証拠見せて!」


 そんなこと言われても神様の定義すら理解していない天宮城はそれを証明する手段など知らない。


「例えば?」

「ステータスストーン見せて」

「すてーたす? ストーン? 石?」

「ステータスよ?」

「は?」

「「?」」


 ここに来て何度目かわからない回数、首を捻っている天宮城である。


『はぁ………。龍一。お前の世界だろう』

「いや、そういうとなんか語弊がある気がするんだけど」

『そんなことはどうでもいい。願え。ここはそういう場所なのだろう?』


 ここは、そういう場所。そう天宮城が琥珀に語ったのはどれくらい昔のことだろうか。


 天宮城はわからぬまま、言われた通りに願う。


(ステータスストーンって何?)


 なんだか願い事というより質問になっているが、それにハッキリとした返答があった。


 ―――実物が落ちてくるという、返答だった。


「いってぇ⁉」


 ガツン、と天宮城の脳天に直撃したステータスストーンと呼ばれる石が机の上に転がる。


 結構な痛みに悶絶する天宮城もまた、机に両肘をのせて頭を押さえている。


「えっと、大丈夫?」

「い、一応平気…………」


 見事に直撃したそれを掴んで見てみると、その石は子供の掌でもすっぽりと収まりそうな大きさの小石だった。


 だが、その色は半透明な黄金色で、中にオレンジとも赤とも言えないような色合いの鉱石が入っているように見える。


「………琥珀みたいだ」

『それは、洒落か? 面白くないぞ』

「なわけあるか。………素直に口に出さなきゃ良かった」


 樹液の化石、琥珀。肩に乗っているチビドラも琥珀。少しややこしい。


「で、これがなに?」

「本当になにも知らないの?」

「? 知らない」


 いつの間にか敬語が無くなっている。それを互いに気付くこともなかった。気付けるほどほんわかした雰囲気でもないのも確かなのだが。


「それを握って、ステータスオープンって言うの。別に握らなくてもステータスオープンって言えば見れるんだけど、この石があれば他人にもステータスを見せれるのよ」

「ゲームかよ」

「え?」

「いや、なんでもない………。ステータスオープン?」


 握って半信半疑で呟く天宮城。


 普段の天宮城なら警戒してこんな風にさらっとやらないだろうが、夢の中に人が居るということと、ここは夢の中である、ということをハッキリと理解しているのでどうにでもなるか、と思ったからである。


 どうにでもなるから、素直に従ってみるのだ。


「うわっ⁉ マジで⁉」


 一瞬の間があり、これ遊ばれてたらやだなぁ、などと天宮城が思った瞬間に目の前に青い画面が現れる。


「ゲームかよ」


 その内容をみて、もう一度そう呟いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 【名前】  ???????


 【種族】  人族ヒューム  絶滅種・希少種レア


 【職業(ジョブ)】  服飾師(コーディネーター)


 【レベル】 1


 HP  10/10

 MP  0/0

 SP  20/20


 攻撃力   12

 敏捷    32

 魔力    0

 魔耐    3

 防御力   10

 知能    678

 器用さ   732

 体力    15

 回復力   4


 【スキル】   服飾師(コーディネーター) 鑑定(レベル1)


 【加護】    なし


 【レイド】   0


 【専属武器】  なし


 【装備】    なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



 出てきたステータスは、色々とおかしかった。

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