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67ー1 でーと?

 前回お伝えしましたが、今回から番外編になります!


 このキャラもっと読みたいなどのリクエストありましたら、コメントにでもツイッターにでもお書きください!

 久しぶりにある人物からメッセージが入った。


 ほぼ仕事用のそれと化しているリュウイチの携帯の画面には、高校時代の同級生である柏木の名前が表示されている。


 メッセージアプリを開いて中を見ると、


『頼む、みゆりんに会わせてくれ!』


 という文面の下に土下座をしたクマの絵文字がくっついている。


 みゆりんとは、魅了の能力者小林の芸名である。


 知り合いとはいえ、それ以上の域を出ない付き合いをしているリュウイチとしては、あまり小林に迷惑をかけたくない。


『なんで?』


 とりあえずそう返信すると、すぐに返信が返ってきた。


『今度俺留学するんだよ!』

『ああ、そういやそうだっけ。イギリス?』

『いや、カリフォルニア』


 大学生の柏木は、語学を専攻している。そのうち留学するかも、とは聞いていたので特に驚きもない。


 今時、気軽に他国にもリアルタイムでテレビ通話できる上に半日あれば大きな空港のある国であればどこでも辿り着く。


 他国に渡るために何日も何十日も費やす必要などなく、割と安価で他国に渡ることができる。


 リュウイチたちは立場上他国には密入国以外にさっと渡ることのできる手段はない。


 それだけ各国の能力者への関心は高いのだ。


『で、みゆりんの次のライブ抽選落ちたんだよ』


 間髪いれずに、もう一つ文章が追加される。


『頼む! アメリカ行く前にみゆりんに会いたいんだ!』


 そこでリュウイチのコネを使おうとする強かな感じは、幼馴染に通ずるところがある。


「小林さんか……」


 最近のゴタゴタの関係で、近頃会えていない。どうやら死にかけた時に見舞いに来てくれていたそうだが、正直全く覚えていない。


 おそらく人のいい彼女のことだ、頼めば断ることは基本ないと思っていいだろう。


 だが、小林も暇じゃない。風の噂でどこかのドームでワンマンライブをするとか、どこかのフェスに出るだとか、そんな話が聞こえてきている。


 意外と協会内にファンが相当数いたのである。


 ちなみに、リュウイチの所属する第二部隊には二人ほどいた。


 テレビ全く見ないのでリュウイチが知らなかっただけで、どうやらかなり人気だったらしい。いまだによくわからない。


『でも、迷惑かけるのもな』

『わかってる。けど、頼むよ。一生のお願い!』


 とりあえず、五度目くらいの一生のお願いに軽くため息をつきつつ小林の連絡先を開く。


 電話では時間帯的にも迷惑かと思ったので、メッセージアプリで今回の件を伝える。


 数分後、小林から電話がかかってきた。


「あ、小林さん。なんかすみません」

『気にしないで。今日オフだし。それより、柏木君だっけ? その子のことなんだけど』

「あいつの我儘なんで無理なら無理って言ってくださって大丈夫ですよ」

『ううん。予定が合えば、でいいなら引き受けるよ』


 やはり引き受けてくれる気らしい。


 予想通りだが、せっかくの休みを消費させている気分になる。


「本当にいいんですか?」

『うん。その子多分ずっとライブに来てくれてた子だよね。前握手会のとき一緒にいた』

「はい」

『私多分覚えてるよ。そんなにも応援してくれるファンにお礼が言いたいのは私も同じだから』


 柏木の小林への愛は半端なものではなかった。おそらく。


 ということで。


 三日後、各人の予定が空いた(リュウイチは空けた)ので早速会うことになった。


 正直リュウイチが行く必要は全くと言っていいほどないのだが、柏木が迷惑をかけでもしたら紹介したリュウイチにも責任が生じる。


 見張りとして参加した。邪魔をするつもりはない。


「お、おい」

「なに」

「この格好変じゃないよな?」

「俺その質問に何十回答えればいいわけ?」


 早めに柏木と待ち合わせし、小林を待つことにした。小林は何かの撮影があるとかで少し遅れてくるらしい。普通に忙しかった。


 だが、緊張しまくっている柏木はかなり面倒くさかった。


 誰かに選んでもらったのか、シンプルながらもスタイリッシュな服装である。だが、普段とは違う格好をしているからだろうか。


 落ち着かないと何度も携帯を見て時間と自分の髪型を確認しては、おかしくないかと聞いてくる。


 最初は「ああ、こいつも緊張してるんだな」くらいにしか思っていなくて、適当に相槌を打っていたのだがそれも面倒になってきた。


 ガッチガチになっていて手元しか見えていないのか、いまだにリュウイチがメガネなことに気づいていない。


「いい加減落ち着きなよ」

「む、無理、無理がある!」


 もうこいつ何言ってもダメだ。リュウイチが大きくため息をついた頃、見覚えのある人物が柏木の方から歩いてきていた。柏木は背中を向けているので気づいていない。


「だ、だってあのみゆりんだぞ。緊張しないほうがおかしいだろ!」


 地味にリュウイチを異常者扱いしながら再び携帯の画面を内カメラモードにして髪の毛の確認をする。


 そこに、小林が写っていた。


「!?!?!?」


 飛び上がるほど驚いたらしく、大きく跳びのきながら携帯を落とした。リュウイチが即座に落下中の携帯を掴んで画面割れを防ぐ。


「お待たせ、ごめんね。撮影長引いて」

「いえ。こちらこそ急な申し出を受けてくださってありがとうございます」

「そんな堅苦しいの止めてよ。全然いいって」


 柏木は小林の急な登場に心臓がとまりかけたのか、ゼェゼェ言いながら胸のあたりをぎゅっと掴んでいる。


「こんにちは。柏木君、だったかな? いつもライブに来てくれてありがとう」

「へ? あ、いえ、その、お、俺も、会えて嬉しいです」


 あまりにもガチガチである。


「あー……とりあえずクールダウンさせたいんで、どこか落ち着くところに行きませんか?」

「いいね。行こう行こう!」


 このままではオーバーヒートして倒れそうなので、リュウイチは一旦場所を変えることを提案する。


 とりあえず周辺にどんなカフェがあるのかを落とされかけたままの柏木の携帯で検索した。


 自分の携帯を出すのは面倒だったのである。

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