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65ー4 助けるために

 リュウイチが再び眠ってしまってから三十分後。藤井は能力を抑える手錠を嵌められた。


 正直敵陣と言っても間違いないこの場所で能力が使えないことになるのは避けたいところだったのだが、計画上仕方がない。


 リュウイチを信じるしかないのだ。


「それで、これからお前は中にはいるんだろ」

「ああ。警報が鳴ったらなるべく早く助けに来てくれると嬉しい」

「なんでお前の身を守らなきゃならんのだ……」


 上田が大きくため息をついて自分で自分に手錠をかける。


 遠藤の護衛役に不満があるらしい。


 だが、能力の性質上風間と川瀬では大勢で囲まれたら不利になる可能性が高く、藤井はリュウイチのアシストに回る必要がある。


 必然的に護衛役を出来るのは上田しかいないわけで、しょうがないとわかってはいるのだが。


「それじゃあ、行くよ。喋らないでね」


 全員が頷いたのを見てからドアを開ける。ドアに挟まれた黒水晶がパキパキと軽い音をたてて割れていった。


 等間隔でライトが配置された殺風景な廊下を進む。


 どうやら黒水晶はドアよりこちら側には生えていない様子で、気を付ければ足音も極限まで小さくできる。


 なるべく物音を立てずに進んでいき、アルファベットでなにかが書かれた白いプレートのかかっているドアを開ける。


 中には高級そうなベッドが二つと、椅子や机が幾つか置かれていた。


 清潔感があり、ベッドメイクなんかも完璧にされていることから高級ホテルを思わせる。


 内装も凝っているのか、アンティーク調のお洒落な家具やライトで部屋全体的に統一感を持たせている。


「随分といい部屋だな」

「固いベッドだと寝られないからね」


 実験動物みたいな扱いをされていたリュウイチとは大違いだ、と半分皮肉を込めて言ったのだが通じなかった。


 金持ちだからなのだろうか。この手の嫌みは嫌みとして認識されないのかもしれない。


「これからは別行動だけど、大丈夫かい?」


 遠藤の確認の言葉に、風間が胸を張る。


「勿論。日本中に転移するためにありとあらゆる地図を丸暗記できる、この結城ちゃんに任せなさい」


 川瀬が苦笑いを浮かべながら、


「結城が調子に乗ると良いことないけど、地形に関してはとてつもない暗記力あるからね。頼りにしてるよ」


 と言った。頼りにしているのかしていないのか微妙にわからない。


 リュウイチをベッドに横たえてから各々が各々の仕事にとりかかる。


 遠藤と上田が別行動している間に、藤井は自分から牢として使われている部屋に入る。


「はぁ……囮役とか、ツイてないなぁ……」


 藤井はとりあえず、ここで待機である。


 結城と川瀬は資料室の前に来た。当然ながら虹彩認証やら声紋認証やらで厳重にロックされているので簡単には入れない。


 川瀬の空間作成は『視認できる範囲に現実とは異なる別の空間を作り出す』ものである。


 この空間には基本的にいれるものに制限はない。


 容量というものは無いわけではないが、余程とんでもない大きさの物をいれさえしなければ大抵の物は入る。


「やっぱりこの壁転移できない素材だ」


 壁を確認してから風間が情報通りであることを認める。


「じゃあ入って」


 川瀬が目の前に新しい空間を作り、風間が入ったと同時に入り口を閉じる。


 そして予め用意してあった超小型カメラを天井付近の小窓に投げ込み、中に人が居た時のために一旦その場を離れる。扉の向こうからカメラの落ちるカツンという軽い音がした。


 ある程度時間がたっても中から物音がしないところをみると中は誰もいないのだろう。


 とりあえず第一段階成功したので若干ホッとしつつも、直ぐに手元の携帯に目を落とす。


 そこには資料室の映像が流れていた。


 中に誰もいない証拠に、部屋は明りがついておらず真っ暗だ。


 ぼんやりと画面越しに映し出される資料室は、おもったより電子機器が少ない。


 ファイルが棚に大量に並んでいるところをみるとこのインターネットが主流の時代に、未だアナログで対応しているらしい。


 勿論、データの流出や重要な情報の消去を免れるために協会でもある程度までは紙で対処している。


 だが通常業務の殆どはデジタルだ。パソコン1台で仕事できる。


 デジタル化は危険も多いがそのぶん便利である。頼りきってしまうのもよくないので使い分けも大事だとは思うが、ここまで徹底的にアナログな方法を取っているのは驚いた。


「ま、こっちからすれば龍一にハッキングしてもらわなくていいから楽だけどね」


 川瀬は画面をじっと凝視してから、扉の方に手をかざす。


 すると画面中央に空間の入り口が出現し、そこから風間が出てきた。


 川瀬は『視界に入りさえすれば』空間の入り口を開け締めできる。画面越しであっても見えてさえすれば能力は発動する。


 ただし能力の発動する距離に制限があるので、無闇矢鱈にできる物でもないのだが。


 なかに入った風間が静かに資料室の中に人がいないか見まわり、明かりをつけてから扉を開けた。


 この扉、外から入るには何重にもかかっている厳重な鍵を開けなければならないのだが中からなら簡単に開く。


 川瀬と風間が資料室に潜入完了した。


「さて、どんな悪どいことをやってるのかなぁ?」


 手始めにと目の前の棚にあったファイルをつかんだ。

 彼らの現在地


 上田・遠藤  廊下(移動中)


 藤井     監禁部屋


 風間・川瀬  資料室


 リュウイチ  ベッド(遠藤の部屋)

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