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64ー9 賭け金を

 海外に能力者は行けない。行くためにはかなり面倒な手続きが必要になってしまう。


 実際はテレポートできる能力者なら簡単に行けはするのだが、それで犯罪が起こっても困るので各国に能力者を関知する道具を渡している。


 その道具を作ったのは天宮城ではなく、実は秘書の近藤である。


 勿論、能力者の波長を捉える方法は天宮城にしかわからなかったのでその部分は協力したが、細かい設定や製作は全て近藤だ。


 体つきがガッチリしていて凶悪そうな雰囲気を漂わせている近藤、意外だがかなり手先が器用なのである。


 天宮城もわりとなんでもオールマイティーにこなすが、近藤も見かけによらず事務作業が得意なのだ。


 そして近藤は根は素直な天宮城とは違い、人の後ろ暗いところまで確り知っている人である。


 だからなのか、天宮城では絶対にやらないセキュリティーの抜け道をわざと作った。


 勿論バレたら責任問題。協会が潰されても十分おかしくない。


 それでも近藤はわざと感知器に誤作動をおこさせるシステムを作った。


「これ使えば、機械は関知しなくなるんだよね?」

「そうだ。だが、流石にこれを使っているときに能力を使ったりすればバレる」


 関知するセンサーは強い波長を認識すると能力者の存在を報せる仕組みになっている。


 だが、能力の持たない一般人でもある程度波長はある。


 天宮城はその波長の動きや光り方でその人の寿命を知ることができてしまうが、流石に機械はそこまで察知してくれない。


 機械ではなんの能力かも判別できない。


 ただ波長が強いと反応する仕組みだ。


 だったらその波長を一般人並みに抑えてやればいい。なにせこの世で能力の波長を完璧に感じ取れる人間など天宮城以外に存在しないのだから。


 近藤が機器を作るときに一緒に開発した小型の能力相殺装置を使えば機会が認識できない程度まで波長を抑えられる。


 天宮城には見破られるだろうが、一般人を騙す程度なら造作もない。


 金属製でもないのでこれの存在を知っていなければ見つかることも多分ないだろう。


 服を全て脱げといわれても問題ないように口のなかに取り付ける構造になっている。


 あまりにも小さいのでライトで照らされでもしない限り発見されない。


「盗まれでもすれば大事だ。龍一が居なければ複製も作れない筈だが、絶対に渡すな」


 これ一個が敵対勢力に見つかりでもすれば犯罪行為だなんだと言われて協会は潰され、そうでなくとも確実に苦しい立場になる。


 もっと悪いのは、能力を私利私欲の為に使う者達の手に渡ること。日本国外に逃げられた時に感知器が反応しなければ見つけようがない。


「組織、か」

「また厄介な奴等だね……多分りゅうもそこに居るだろうし」

「これほど大掛かりな事をしているんだ。間違いないだろうな」


 組織。


 それ以上の名称はない。いや、わからない。


 名前がわからないから天宮城が暫定的に『組織』と呼んでいたのが全員に浸透しただけで、正式名称は不明だ。


 最初に天宮城達に接触してきたのは、天宮城が山を中腹から消してしまった時。あの時に天宮城を暴走させた者達だ。


 誰も天宮城のせいではないと思っているのだが、あの事件から天宮城は人から距離をとるようになった。藤井の足の怪我も、少しだけ残ったままである。


 それから、ことあるごとに組織の者達は天宮城や能力者を付け狙ってきた。


 ネットの書き込みだけで住所まで特定してきた天才的ストーカーの近藤でも情報収集ができないほど巧妙に自分達の存在を隠しつつ、こちらに損害を与えてくる。


 一体誰がどういう目的で組織を作り、運営しているのかは謎でしかない。


 ただ一つ言えることは、協会の敵であるということ。


「なんにせよ、絶対に誰にも渡しちゃいけないし知らせちゃいけないんだよね。わかった」


 風間が頷きながらそう言う。


 普段からちょっと人をからかって遊ぶお調子者の風間だが、根は意外と真面目だ。


 正確に言うと、人間不信の天宮城を笑顔にするためにわざとお調子者を演じていたらそれが抜けなくなったのである。


「今回密入国するメンバーは、俺、結城、みいな、弘人だ」

「ちょっと待って! 私も行く‼」


 葉山が身を乗り出して机を叩く。


 藤井は小さく首を振る。


「ダメだ。これ以上増やせば協会が手薄になる。最強の能力者のお前は連れていけない」

「でも」


 葉山の能力は天候操作。その言葉だけを聞くとただ天気を変えられるだけに聞こえるが、実は最強の能力と言っても過言ではない。


 意思一つで雷やあられを降らせたり、その気になれば巨大台風や竜巻すら起こせる。


 台風や竜巻はあまり大きいものを作ると制御が効かなくなりはするが、それでもめちゃくちゃな力であることに違いはない。


 ただ、広範囲に無差別攻撃をするのなら彼女の右に出るものはいないが、どうしても無関係な人が居ると使いづらい力であることは間違いないだろう。


 それでも、天宮城と並ぶ切り札であることは言うまでもない。その切り札二人が不在なのはどうしても防衛面に不安が残る。


 藤井が選んだのは、直接戦闘能力の高い藤井自身と重力操作の能力を持つ上田 弘人。


 移動系能力の中でも最高クラスの正確性とスピードのある転移能力者の風間 結城。


 それと、もし天宮城が動けない状態になっていたり、暴走して止められなくなったときのために空間を隔離できる亜空間作成能力者の川瀬 みいなだ。


 最低限の人数で現状最も救出可能なメンバーだ。


 それに感知器を誤魔化す道具もあまり数がない。


 これが最良だ、と言われては葉山も頷くしかなかった。

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