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64ー7 賭け金を

 リュウイチを捜索するには、色々と方法がある。


 よく連れ去られるのでみんな少しは慣れてしまっているのだろう。あまり良いことでもないが。


 その中で今回はリュウイチが出ていってから行き先も不明なのだ。聞き込みなどで探すにしても何日も前のことなど覚えている人の方が少ない。


 金属製の杖を持っていって出ていったのが救いだ。あれをカシャカシャいわせながら歩いていくのはそこそこ目立つ。


 だが、目撃証言だけで追えるとも思えないし、警察に協力を要請してもそれなりに時間がかかるだろう。


 だから藤井と風間はある人を訪ねた。


「天宮城君? またいなくなっちゃったの?」


 別に好きでいなくなっているわけでもないのだが、この人に会いに来るときは大抵天宮城の捜索願いである。


 この人はレベル7の能力者の内山 遥だ。


 能力は【占い】という珍しくアバウトな能力だ。


 元々占師をやっていて、その上で能力も発現したのでかなりの有名人である。


 占いに関係することなら全体的に精度に補正がかかるというなんとも占師にとっては便利な能力である。


 今のところ彼女以外の発現例はない。


 場合によってはどんな物よりも高性能に未来を見通すので能力者協会の中ではかなり重要視されている。


 他人に害を与えないレベル7の能力者というのも大きいだろう。


 小林の洗脳なんかは他人に影響を及ぼしてしまう類いのものなので必然的に抑える必要がある。


 なにか事件に巻き込まれたとき、真っ先に疑われるのは能力者だからだ。


 事件とは全く関係ない能力を持っていたとしても、能力者というだけで疑いの目をむけられることは少なくない。


 犯罪に使われる可能性が少しでもあれば制限しなければならないのだ。


 だが、水野や内山のように自分自身で完結する能力であればその必要はない。


 世間で求められる能力者は、実は藤井や小林のような効力の強い能力ではなく、制限されない能力を持った能力者なのだ。


 話がそれたのでもとに戻すと、彼女は毎回天宮城が行方不明になったときにその居場所を探ってくれているのだ。


 藤井はよく知らないのだが、天宮城に恩義を感じているらしく天宮城が関係することなら大抵は手伝ってくれる。


 逆にいえばそれ以外の事には基本的に不干渉を貫いている。


 あまりひとつの組織に肩入れしたくないらしい。


「えっと……こっちね。かなり遠く感じるから、国外……かも」


 国外。一体どこまでつれていかれたんだとため息をつくしかない。


 流石天宮城(末の弟)だと嘆きたい。


「それと、かなり危ないかもしれない。天宮城君の力、かなり弱々しい。何とかして探ってみるけど、あんまり期待しないで」


 天宮城のことについては内山が嘘をついているとは考えにくい。


 今までも天宮城が危険な場面は何度かあったが、内山があまり期待しないでとまで言うことはなかった。


 事態は予想以上に深刻なのかもしれない。


「………違う、これじゃない」


 カードを捲って小さく頭を振り、もう一度最初からやり直す。


 彼女の占い方法は独特で、リュウイチも真似できない。


 あらゆる道具を駆使してひとつの結果を導き出す。


 そのぶん時間がかかってしまうかわりに、精度は他の占いの比ではない。


「多分。見つけた。ここ」


 スッと指差したところはヨーロッパのど真中だった。


「離れすぎだろ……。ここまで遠いとなると確実にレベル6以上だな」

「うん。最低でもりゅうを連れて飛んでいるわけだからレベル5より下だったら事故る」


 勿論、能力じゃなく飛行機とかで運ばれたという可能性も、まぁ、無いわけではないが。


 その方法ならこの短期間では不可能なのだ。


 日本にいる能力者は海外に出る際に色々と申請を取らなければならない。


 空港でも顔認証とかで能力者でないかなどを確認するので飛行機では国外に出られない。


 個人の飛行機とかなら可能かもしれないが、今時どの飛行機にも製作段階で能力者がいるかどうか確認する装置がついている。


 これを提案したのは天宮城だ。国外に能力者が出ていって犯罪を起こしたりしないようにする狙いがある。


 能力者であるかないかは波長を調べるだけで直ぐにわかるのでそんなにコストもかからない。


 その次に可能性があるのは船だが、船ならまだ海の上だ。


 陸を使っても同程度時間がかかる。


「厄介だな……」


 相手の名前、人数、能力も不明。藤井たち力の強い能力者が下手に他国で喧嘩したら国際問題に発展する恐れがある。


 思ったように動けない。


 それに内山がまだ頑張って場所を絞ってくれているが、普通に拉致は犯罪なので直ぐに見つけられるとも思えない。地下にでも隠されている可能性が高いだろう。


「とりあえず、政府に連絡してみるか………」


 本日何度目かもわからないが、大きくため息をつきながら携帯を取り出した。

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