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10ー3 絶対に屈しない

 更新速度遅いなと感じたのでこれから字数をいつもの半分の3000字にして更新頻度あげます。

 片山と藤井の二人がコーヒーを手に持ちながら揃って溜め息をついた。


「……なぁ、梨華」

「わかってるわ。敢えてあそこでは言わなかったけど……今回の相手、相当強いわね。本当に全快で龍一が相手している筈なのに死んでないところが特に」


 かなり物騒な言い方だがこれが一番簡潔だ。


「そうなんだよな………龍一が赤髪状態で戦って死んでないところが凄いもんな………。それにこの感じだと龍一もほぼ戦えないような状況になってるだろうから………」

「実質、龍一抜きで赤髪状態の龍一を凌げる相手と戦わなきゃいけないわね」

「無理だろ、それは………」


 天宮城は普段ならともかく、能力を全て解放した赤髪状態ならほぼ無敵である。藤井でさえ抑えるのが精一杯なのだ。


 その全力の天宮城がやられているということは少なくとも藤井よりは強い。今まで、天宮城を元に戻すときは全員でなんとかしていたがそれができる相手なのかも不明だ。


「三日で能力封じを使って能力溜めしたところでそう効果なさそうだし」

「確かにね。私みたいに戦えない人もいるしね」

「あー………もう。どうすりゃいいんだよ」


 天宮城がいればなんとかなるかもしれないがこちらになんのコンタクトもない時点で無力化されているというのが正しいだろう。


 実際にこの時天宮城は未だにベッドの上である。


「俺達、大丈夫だよな………?」


 片山はその言葉に返す言葉が見つからずただ黙ってカップに口をつけた。









「皆、準備は?」

「オッケー」

「何時でも大丈夫だよ」


 藤井の声に何人かが答え、何人かが無言で首を縦に振る。ここはかなりの高さのあるビルで協会とも繋がりのある大きな企業が入っている。


 だが、ビルにはいっているのはその企業だけではない。


 他企業だが知り合いの所と場所が同じだったというそれだけでなかなか気付けなかったのだ。


 今回のことに最も責任を感じている水野と小林は藤井に何度も頼み込みに行き、同行の許可をもらった。


「乗り込むのは隊長以上と自己責任で水野さんと小林さん。副隊長及びその補佐は周辺の警戒と人払いを頼む。正直どうなるか全くわからない。何が起こっても不思議じゃないからしっかりと自分の仕事を果たせ!」

「「「はい!」」」


 色の違う戦闘服を着た男女が声を揃えてその場から去っていく。


「………俺達も行くぞ。龍一を助けに!」

「おう‼」

「うん!」

「おっしゃ!」

「了解‼」


 各々が返事を返しながらしっかりと頷きあい、中へと入っていった。


「なんか暗いね」


 微妙に薄暗い廊下を歩きながら風間がそう言葉をこぼす。絨毯の廊下なので足音は気にしなくて良いのだがその代わりに相手の足音も聞こえない。


 だが、そこで活躍するのが藤井である。


 藤井の能力は身体強化だが、その他にも派生した能力がある。その一つが感覚増幅。


 これは強化する五感が多ければ多いほど各々の威力は弱まってしまうが逆に一つや二つに絞ることによって劇的な効果を得られる。


 今藤井が強化しているのは目と耳の二つ。味覚や嗅覚は遮断しているのでその辺りは何があっても気づけないのが難点だが入ってくる情報量は多い方がいい。


 使い続ければ疲れてしまうのであまり使えないのだがさっさと終わらせたい藤井はそんなこと考えていないのである。


「? ここだよな?」

「ああ。双葉はそう言ってたけど」

「人の気配がやけに多いんだが」

「でもここに龍一居るんでしょ?」

「わからん。ここは能力は使えないようになってるみたいだし……」

「じゃあ入っちゃえばいいじゃん」


 楽観的に思える言葉だが別にそういうわけではない。


 ここで止まっていても無駄だ、と藤井も考え、意を決して扉を開ける。


「ここは…………」


 端にベッドと医療器具が大量に置かれただだっ広い部屋だった。


 どこも綺麗にされていてベッドのシーツにはシワも見当たらない。


「初めまして、能力者協会の皆さん」


 奥から本のようなものを持った男が出てきた。その後ろにはまた大勢の人がいる。


「色々と聞かせてもらいたいことがある」

「これですか?」


 本を藤井達に見せるように広げる男。


「「「なっ………⁉」」」


 天宮城が見えた。ただの写真や絵ではない。そこにいる全員がハッキリとあれは天宮城だと何故か理解できた。


 天宮城ほどではないが能力者たちは互いになんとなく相手が能力を持っているかどうか分かる。


 本当になんとなくなので当たることも外れることもあるが、今回の場合全員がそう理解したのできっとそうなのだろう。


 本の中で上半身だけを起こして秋人の名を呼ぶ天宮城。


 顔色は真っ青で足などおかしな方向に折れ曲がっている。本から聞こえてくる声もいつになく弱々しく、荒い呼吸音が混じっている。


 いつもの天宮城なら同調の能力をうまく使ってすぐに出てくるのだろうが、余程難解な能力なのかそれともそれすらできないほど弱りきっているのかは判らないが、それができていない時点であの本を損傷のない状態で奪わなければならない。


「今助けるからなんとか踏ん張れ!」


 それを言っている最中に本が閉じられる。天宮城の声が聞こえなくなった。


「龍一を返せ!」

「彼は物ではないでしょう? 返せと言われてもね、そうもいかないんですよ」


 周りに現れた“敵”の人数は17人。藤井はその人達の戦力を冷静に分析し、厄介そうな者から順に殴り飛ばしていく。


 しかも、それとほぼ同時に言葉も交わさず上田も動き始めた。


 近くにいる者に手当たり次第重力をかけていく。


「交渉もしないんですか⁉」

「水野さん。こういう人は交渉なんてしても無駄なんだよ」


 風間が真剣な目をして小林と水野の間に入り、少しずつ後退していく。


「私たちは戦えないからね。邪魔にならないとこに行かないと皆本気出せないから」


 ズガン、と音がして小林の真横に大柄な男が落下する。


「ひっ⁉」

「あ、大丈夫?」

「ええ……………あの、スッゴいやりたくないんだけど………」


 小林が迷いに迷いながら提案したことに風間は目を丸くする。


「いいの? やってくれるなら凄い助かるけど」

「その為に来たもの。天宮城君が捕まっちゃったのは私のせいでもあるんだから」


 藤井に投げ飛ばされて気絶している男の手に軽くキスをする。すると男が突然目を開けて小林を凝視し始めた。


「…………」

「あの………お願い。あの人達の助けをして?」

「…………(こくり)」


 無言で頷いてその場から去っていく。


「……………あれ、大丈夫?」

「………多分」


 不安気にそれを見ていた風間は数秒後、自分の言葉を即座に撤回した。


 あの男が味方である筈の相手を攻撃し始めたのだ。


 最初の方に藤井に投げ飛ばされた男なので相当あの中でも強い男だったのだろう。あっという間に敵は全滅した。


「……………洗脳系能力って怖いね」

「私も自分の力が怖いです………」


 ただただ、そう呟くしかなかった。


「……これなんだけど、どうしたらいいんだろう」


 一冊の本を前にして全員が首を捻っていた。


 ここに天宮城がいるのは解っているのだが開いてみてもページは全て白紙で使い方が判らないのだ。


 パラパラと捲りながら全員がハッキリしない声をあげる。


「んー。ねぇ、思ったんだけど」

「どうした?」


 安立が突然ある話を切り出した。


「…………なんかあっさりいきすぎじゃない?」

「え?」

「なんていうか………ここに来るまで殆ど戦ってないし、ここを守ってた人たちもたいして強くなかったし」


 確かに、そこら辺の警備員なんかよりかはよっぽど強いだろうが、警戒するほどのレベルでもない。


 全員がそこまで考えて口を閉ざす。


「いや、そんなことは………ないよな?」

「そんなフラグみたいなー…………ないよな?」


 言っていて不安になってきた。

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