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46ー1 大騒動

 昨日でテスト終わりました。更新速度をあげますよ!


 多分! 恐らく!

「身分証明ができるものを……って、ああ。アレクじゃないか」

「お久しぶりです」

「本当にな。評判はよく耳にしている。それにしてもランクは変わらないんだな……」

「申請とか面倒ですしノルマとか気にして仕事したくないので」

「お前らしいな……」


 船着き場で知り合いと軽く話をしてから中に戻って声をかける。


「琥珀ー、船つけるから準備してくれ」

「わかっている」


 身体能力が最も高い琥珀が船内を走り回って店の準備や上陸の準備を整えていく。


「ふわぁ……ここがシュリケかぁ」

「シオン。一応密航してること忘れないでね?」


 江原をなだめながらもアインもどことなく嬉しそうだ。


『ルペンドラス、戻る?』

「ああ。ちょっとだけだけど」

【拙者がお運び致しましょう】

「いや、それはちょっと……」


 最初に凛音とあった日もスラ太郎が連れていってくれたのだが、相当乱暴な運ばれ方だったので未だに少しトラウマである。


 思い出したら気持ち悪くなってきた。


「アレクさーん‼」

「あ、イリスさん!」


 今日中に着くとは連絡していたが細かい時間は伝えていない。それなのに出迎えに来てくれたようだ。


 船をとめて甲板から飛び降りる。


 琥珀には全く敵わないものの、天宮城も相当ポテンシャルは高いのだ。この世界では中々目立たないが。


「いつからここに?」

「さっきです。こっちにそろそろ来るって連絡が入ったときから潮の流れと天候を逆算して丁度これくらいの時間に着くかなと予想していたので」


 流石は世界トップクラスの商人だ。船の進む速度を完璧に把握している。


 金勘定もそうだが、この辺りは勝てる気がしない。というか全体的に勝てそうなものがない。


「そうそう。着いたら王城へいけとの伝言です」

「王城ですか」

「家臣でしょう?」

「あ、そうですね」


 あまりにも前の事で忘れていた。天宮城、実は貴族である。


 本人が全く気にしていないので風格などあったものではないのだが。


「それって全員でむかえと?」

「いや、アレクさんとしか言われていないですね」

「じゃあ僕そっちに行ってきますね。店はこのまま開けます」


 店を開いて船着き場から直接店内に入れるように階段を下ろす。


 すると中からシーナが顔を出した。


「今日はもう始めるのですか?」

「そうするよ。ちょっと用事があるから任せるけど大丈夫?」

「はい。いってらっしゃいませ」


 後ろではスラ太郎がぴょんぴょん跳び跳ねて見送る。


 船の中から天宮城を追って現れたのはアクア達だ。どうやらついてくるらしい。


 精霊なら城内でも引き連れている人を見たことがあるので連れていっても大丈夫だろう。そう判断し同行の許可をする天宮城。


 帽子の上に陣取る精霊達。


 地味に光っているのでイルミネーションを帽子にくっつけた変な人みたいになっている。


「アレクさん……精霊、使役しているんですか? そんなに?」

「? おかしいんですか?」

「いや、おかしくはないんですけど……いえ、なんでもないです」


 もうイリスは追求するのをやめた。


 普通の人なら精々多くて2、3匹程度しか引き連れていないものである。


 ちょっと数が多いくらい、問題ないだろう。ちょっとどころではないが。








「頼む」

「その申し出を受けること自体は構いませんが……」

「存在自体が不確定だと?」

「あ、えっと……はい。どうしてもお伽噺の類いだと考えてしまって……」


 城に呼び出されてすぐ、とあることを頼まれた。


 天宮城としては普通に一般人からでも受けるような仕事で、それをやることは特に難しいわけではない。


 のだが、少々問題があった。


(まさか……こっちに来てる人族がシオンさんの他にもいたなんて……)


 今回の仕事は『こちらに来た人族のパーティードレスを作ってくれ』というものだったのだ。


 話を聞けば4、5人いるらしい。


「緊張するのもわかるがこちらとしては世界一の商人のお墨付きである『首狩りのアレク』に仕事を頼みたいのだが」

「その名前ちょっと恥ずかしいのですが……。勿論、やらせていただきます。人族(ヒューム)様の滞在期間はどれくらいでしょうか?」


 どうやら上手い具合に緊張していると勘違いしてくれているようなのでその設定にあわせようとする天宮城。


 演技は超一流である。早々バレるものではない。


(俺がボロを出さないかってことだけ心配だな……)


 自分が人間だと言うことが世間に知れたらきっと自由に商売をすることなど不可能になるだろう。


 商売することそのものは問題ないかもしれないが、人間が無駄なまでに崇められているこの世界でそれは不味い。


 多数の同業者から厳しい目を浴びることは間違いないだろう。今でさえ大分目の敵にされているのに。


 人間がやっている店、というただそれだけの理由で人は集まってしまう。それに崇められるのは好きではない。自分は神ではないのだから。


「金ならば国庫から出す。存分に豪奢で美しいものを作ってくれ」

「足りない力ではありますが、精一杯やらせていただきます」


 天宮城からしてみれば、ハードルをあげないで欲しいというのが本音である。


 軽く打ち合わせをして船に戻るとアイン達によって店仕舞いが始まっていた。


「ごめん、遅くなった」

「いいよ別に。仕事の話だったんでしょ?」

「まぁ、そんなところ」


 看板を片付けたりしていると江原が店の奥から出てきた。


 なにやら真剣な表情を浮かべている。


「あの、アレクさん」

「はい?」

「この店で、働かせてください‼」

「……」


 予想はしていた展開だ。もとから彼女には行く宛がない。アインとも仲が良くなったようだし、ここにいたいと思うのは仕方がないことなのだろう。


「アレク。私からも、お願い。今日一緒に働いてもらったけど、凄い手際が良かったよ? コーディネートのアドバイスとかも出来てたし」


 アインも当然のようにそう言ってくる。


 それに、天宮城も気にはなっているのだ。ただ、立場上さらっと許すわけにもいかない。


「……そうですね。ですが今僕が一人で決めてしまうのは出来かねます。夕食の席でその話をすることにしましょう」


 超がつくほどのお人好しである天宮城が一時的にとはいえ断ったことに、少なからずアインと江原が驚く。


 だが、天宮城の言うことももっともなので二人ともそれ以上はなにも言わなかった。


 ただただ静かに、商品を棚に戻す音だけで時間が過ぎていった。

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