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40ー7 夢の可能性

 テスト終わったのでちびちび書き始めます。


 一週間以上も音沙汰なくてごめんなさい……

 気づいたら朝だったという経験はここ数年はない。何故なら寝てしまえばあちらの世界に自動的に飛ぶからだ。


 ただ、気絶しただけだったり睡眠時間が極端に短かったりするとたまに普通に寝ることもある。


 天宮城が拒否すれば普通に寝られるのだが特に拒否する理由もないのでほぼ全自動で異世界移動している。


「……普通に寝た……」


 何故か異世界に行かなかった。それもそのはず、途中何度も起きているからである。


 数十分おきに目を覚ましては気絶するように眠るのを何度も繰り返したせいで眠ったという実感がない。


 部屋にある洗面所で顔を洗って大きなため息をつく天宮城。寝不足のせいか肩の上の琥珀もぐったりしている。


 ボケッと無意味に鏡を眺めていると入り口の方からなにかが壊れたようなとてつもない音が響いた。


 それがなんなのかわかっている天宮城は特に気もせずに荷物のおいてある部屋に入った。


「どう、よく眠れた?」

「………」

「無視は悲しいなぁ」

「あんたに悲しいっていう感情があるのが驚きだよ」

「ははは! 僕は人間じゃないとでも?」

「少なくとも人間性は死んでるね」

「言えてる!」


 何が楽しいのか、天宮城の言葉にケラケラと笑い転げる。


「それで? 来てくれる気にはなった?」

「誰がなるか」

「いっつもそう言うよねー、でもあんまり遅いと君の周りから狙っちゃうかもよ? 例えば……神眼の彼女とか」


 その言葉を聞いた瞬間に天宮城の動きが止まった。


「……水野さんに手を出せばどうなるのかわかってるんだろうな?」

「勿論わかってるつもりだよ。でも君も酷いねぇ。本当の能力を教えてあげないんだから」

「どこまで知って……」

「なんにも? ただ、彼女は純粋(天然)だから気づいてないみたいで良かったね」


 手を広げて、嫌らしく微笑む。


「君みたいに『他人の残り時間』なんてものが見えないと思い込んでいられるんだから」

「黙れ―――っ!」


 天宮城が持っていたペンを右手で握りつぶした。バキバキとヒビが入り、プラスチックの破片が手に突き刺さる。


「いやー、そこまで怒ることじゃないでしょ?」

「黙れって言ってんだろうが‼」

「……黙らないよ。まぁでも彼女は君ほど良い()をしていないみたいだから流石にそこまでは見えないだろうけど、数秒先の未来くらいは見えるようになるんじゃない?」


 声を荒らげる天宮城を横目で見ながら、フッと笑う。


 それはどういう感情から来る笑いだったのだろうか。


「落ち着いたら、僕の部屋に来て。それじゃ」


 直ぐに出ていったがそれで天宮城の激情が収まる筈もない。


 無言で手のなかで大きく変形したペンを見つめる。破片で切れた掌はもう殆ど治りきっていた。








「やぁ、来たね」

「…………」


 相変わらず数人の男女を周りに侍らせてどっかりと座り込んでいる男に鋭い視線を向ける。


 男はその視線を柳に風と受け流して天宮城に自分の目の前の椅子を勧めた。


 天宮城も渋々とその椅子に腰を下ろす。


「さて、では始めようか」


 近くに立っている女性に目をやると、女性が目を瞑り手を叩く。すると周囲の景色が反転するように歪み、全く別の空間に変貌する。正確には別の部屋に転移したというのが正しいが。


「ではいつものように。僕は絶対に嘘は言わない。死神に誓おう」

「……嘘はつかない。死神に誓う」


 耳元で鎖がなるような音がした。天宮城は見てわかるくらいに苛立った表情になる。


「まぁまぁそんな怒らないでよ。それにしても清香(さやか)の能力はいつも正確だね。柚月(ゆづき)の契約も―――」

「さっさと始めろ、遠藤(えんどう)


 女性達に声をかけ始めた男―――遠藤に苛立ちの存分に籠った声をぶつける。


「怒りっぽくなったんじゃない? まぁいいや。それじゃ取引を始めよう」


 天宮城がここまで嫌っている相手にわざわざ会いに来たのはいくつか理由がある。


 まずひとつは能力者コレクターである遠藤の目を少しでも長く自分に留めておくため。こうでもしないと誰に手を出すかわかったものではない。


 二つ目はこんな性格でもとある業界では知らないものがいないほど有名な資産家で、あらゆる機関にパイプが繋がっているからだ。本人に商才があるので余計にたちが悪い。


 そして三つ目は、絶対に嘘をつかないからだ。


 今この空間の中だけは嘘をつけば寿命が縮まる。そういう契約を行うことのできる能力者がいるのだ。それが遠藤の横に立っている女性、柚月である。


 ちなみに全員をこの場所に飛ばしたのは柚月の後ろに立っている女性、清香である。彼女の能力は空間転移。天宮城の幼馴染の一人で転移能力者の風間ほど自由に転移ができるわけではない。


 それに転移が可能なのは一日に二回限りだ。それほど遠い場所には転移できない。


 だが、部屋まるごとを転移させることのできる利点はかなりる。例えば引っ越しするときなどは荷物ごと移動可能でどれだけ重いものでも重さに関係なく運べるのだ。風間のような普通の転移だと両手で触れているものしか一緒に飛ばせない。


 そう考えると時と場合によってはこちらの方が便利である。


「君が世間に知れ渡って色々あったよね。お母さんのことも驚いたけど……お父さんは?」

「知らん。話したこともなければ会った覚えもない」

「そっかそっか」


 机に頬杖をついて紅茶を口に含み、うんうんと頷く。


「君のお母さんは能力者?」

「違う。兆候もない」

「そりゃ残念だ。君みたいに面白い能力でもあれば良い話の材料になったのに」

「お前にとっては面白いかも知れないが俺からすれば迷惑だ」

「だろうね。でも良かったじゃないか。その能力のお陰で僕に会えてるんだし」


 ふふんと得意気に鼻をならす遠藤を見て、絶対零度の視線でもって最高に軽蔑したような表情になる天宮城。


「それは全く嬉しくない」


 しかも言葉にする始末である。


「相変わらず手厳しいね……それでどう? 仕事で警察や他支部に行ってみた感想は?」

「警察は……感想とかは特にないな。普通のオフィスだったし。ただ、支部は少し足りていないように感じたな。もう少し増やしたいところだが……場所がな」


 超能力で起こる犯罪の取り締まりは勿論、覚醒者の保護や管理も各々の地区にある支部で行っている。


 すべての能力者の情報は本部の方に届きはするが、管理自体は天宮城と近藤、それと藤井くらいしか見ないデータに入れっぱなしなので基本的には支部が管理をしている。


 データが全て本部に集まるのだからコンピューターウィルスにでも狙われたら終わりなのだが、働いている人の中にはそういったことに詳しい人もいる。


 というわけで今のところはなにか問題があったわけではない。


 ただ、兎に角人手が足りていないのが現状なのである。


 他企業でも能力者を呼び込むところも多く、こちらに回ってこないのだ。


 天宮城からすれば能力者が社会に浸透していくのは喜ばしいことなのだが仕事となればそうも言っていられないのが現状である。

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