黒き騎士の守るもの
私は戦い続ける。
何故、と問われれば今を守る為と断言するだろう。私と彼女の今を守るためと。最も、今の関係を他人がどう思うかは判らない、未来だって判らない。断言できることは私の戦う理由は彼女でしかないと言う事。彼女の為に己れの体を軋ませ、傷つけ、剱で天を衝く。それが今の私だ。
だから、目の前に居る無愛想で非情な怪物の前に倒れるわけにはいかないのだ。決して。
左手は約半分が削ぎ落とされ、痛みを通り越し感覚と言う感覚が感じられない。出血は多量、目は眩み、足元は覚束無い。所謂、体調不良ある。
怪物は容赦なく前足を振り上げ、私に止めを刺そうとしている。こんな状態でも体は反応してくれた、寧ろこんな状態だから文字通り必殺の一撃を交わせたのかも知れないが現状を考えてる暇はなく、 私は交差方気味に剣をがむしゃらに振るう。
「━━━━!」
どうやら、怪物の濁った瞳を傷つけた様で
世にも恐ろしい叫びを挙げ踞っている。私が幼子で在ればきっとこの叫びだけで失神していることだろう。しかしは私は幼子でも怪物が怯んだ隙を見逃す阿呆でもない。素早く懐に潜り込み、先程切り裂いた瞳だったモノに勢いよく拳を叩き込む。嫌な生暖かさと、紅い体液が私を包み込んだ。この現状に嫌悪感はない。もう慣れてしまった。
そして、拳を抜き、剣を持ち変え力強く怪物の脳天に向け振りかざす。
「━━!」
断末魔をあらげる暇もなく怪物は生命活動を停止した。きっと一瞬で痛みも無くなったことだろう。
息絶えたのを確認し私は真っ赤な床に倒れる。はあはあと息を切らし、鮮血に染め上がった我が体はどうやら此処までの様だ。
少し寝よう。
死にはしない。私には信念が在るから。私には守るべき今が在るから。